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8K映像技術 8K映像技術

北海道大学の次世代3Dイメージング技術に8K技術が貢献

情報量1億倍の化石探査が実現

新たな化石探査の手法により、太古の生命をありのままにとらえる北海道大学の3Dイメージング技術に、キヤノンの8K映像技術が重要な役割を果たしています。

2019/12/19

生命進化の研究を加速させる次世代3Dイメージング技術

地球に生命が誕生して40億年といわれ、人類の歴史はその一瞬でしかありません。多くの古生物学研究者が億年スケールの生命進化の謎に挑み、その過程を少しずつ明らかにしてきました。40億年もの長い時間の生命進化の唯一の物的証拠が化石です。地球表面を覆う岩石や地層中の無数の化石は、生命の記録メディアともいえます。

北海道大学 大学院理学研究院の伊庭靖弘准教授の研究チームでは、高性能デジタルカメラを使った撮影に着目。岩石の断面画像を積み重ねることで、従来の手法より格段に効率的かつ高解像な生命化石探査ができる次世代3Dイメージング技術を新たに開発しました。この技術に欠かせない存在となったのが、キヤノンの8K映像技術です。

伊庭靖弘准教授

伊庭靖弘准教授

デジタルカメラを活用したまったく新しい分析技術

「多くの研究者は、化石や岩石の内部調査にX線CTスキャナーを用いています。X線を使った手法は、試料を破壊せずに調査ができますが、得られる画像はモノクロで解像度が低く、過去の生物の姿をとらえることができませんでした。」

伊庭准教授は、これまで常識と考えられてきた非破壊分析とは違う、まったく新しい化石の探査がデジタルカメラを用いることで可能だと考えました。化石や岩石試料を研磨加工し、その加工面をキヤノンの超高解像度デジタル一眼レフカメラ「EOS 5Ds」で撮影。これを1,000回以上くり返すことにより、超高精細の連続断層像データをカラーでつくり出すことに成功しました。この手法で得られる画像データは、従来手法よりも圧倒的に高解像で、3Dモデルにしたときの1ボクセルあたりの情報量は、X線CTスキャナーの約1億倍になりました。

  • ※ボクセル:3次元画像の最小の構成単位

CTで得られる試料断面像

X線CTスキャナーで得られる試料断面画像

新しいトモグラフィー技術を用いて得られる試料断面像

次世代3Dイメージング技術を用いて得られる試料断面画像

太古の生命をありのままにとらえるキヤノンのカメラとレンズ

装置の開発では、デジタルカメラの画像安定性がカギとなりました。1,000回以上もの断面撮影でまったく同じ色や明るさを維持しなければ、正確な3Dモデルを得ることはできません。伊庭准教授の研究チームは、さまざまなデジタルカメラ、マクロレンズで連続耐久撮影テストを行いましたが、ほとんどの組み合わせで撮影結果にバラツキが出てしまいました。

「キヤノンの『EOS 5Ds』とレンズ『MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト』『EF100mm F2.8Lマクロ IS USM』の組み合わせでは、露出に変化がなく、どのレンズよりも優れた安定性が得られたのです。

北海道大学におけるキヤノンの8Kディスプレイによる試料の観察

北海道大学におけるキヤノンの8Kディスプレイによる試料の観察

特に5倍マクロ撮影が可能なレンズ『MPE65mmF2.8 1-5×マクロフォト』との組み合わせでは、実体顕微鏡を上回る分解能が得られました。」と伊庭准教授。

これらのデータを、フルハイビジョンの16倍の情報が表示できるキヤノンの8Kディスプレイで表示することで、試料全体から顕微鏡並みのミクロな構造までを一度に観察できるようになりました。「通常は試料の実物を観察することでひらめきを得ることが多いのですが、キヤノンの8Kディスプレイなら、普通の民生用8Kディスプレイとは違い、実物を見た時と同じ感覚が味わえ、研究のアイデアが湧きます」と語ります。

自然科学分野にとどまらないイノベーションの大きな力に

次世代3Dイメージング技術は、自然科学分野にとどまらず、医療分野などへの活用も考えられています。得られたデータにより、世界中の研究者と分析結果をリアルタイムに共有することが可能になります。さまざまな分野の研究者が、高品質な情報にアクセスできるようになれば、異分野におけるイノベーションが生まれることも大いに期待されます。

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