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しくみと技術放送用レンズ

画面のすみずみまで、
ハイコントラストでシャープな解像力を実現

世界中のテレビ局や映像制作の撮影現場で活躍する放送用レンズ。プロの高い要求に応えるため、放送用レンズはハイビジョン(HDTV)から超高精細度テレビジョン(UHDTV)の4K、8Kへと進化を続け、質感までも忠実に再現し臨場感あふれる映像制作に貢献します。

2022/04/11

放送用レンズのしくみ

放送用レンズとは、テレビ番組をはじめとした映像制作で使用する放送用カメラに取り付けるレンズです。ドラマ制作や報道の現場において、小型・軽量で肩担ぎ撮影ができる機動性の高いポータブルズームレンズから、三脚などに固定し、ゴルフや野球などの屋外スポーツの際に使用する大型の箱型フィールドズームレンズにいたるまで、用途に応じてさまざまなレンズが使用されています。
放送用レンズのほとんどはズームレンズで、14倍の超広角レンズから120倍以上の超高倍率レンズまで、こちらも用途によってさまざまな画角と倍率のレンズになっています。レンズの鏡筒の内部は、高画質映像を実現する多様な種類・形状のレンズで構成され、さらにはフレーミングを安定させる光学防振機構など、プロフェッショナルの高い要望に応える機能も搭載されています。

4K放送用フィールドズームレンズ

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キヤノンの放送用レンズ技術

キヤノンは1958年、TVカメラ用フィールドズームレンズを発売。以来、世界中の放送事業者や制作者とのコミュニケーションを深めながら、プロフェッショナル映像制作に要求される高画質と操作性を実現する放送用レンズを提供し続けています。
近年は映像の高精細化も進み、2018年から日本でも放送が開始された超高精細度テレビジョン(UHDTV)は、4Kが3840×2160画素、8Kが7680×4320画素で、それぞれ従来のハイビジョン放送(HDTV)の4倍、16倍の画素数となる高精細映像です。キヤノンの放送用レンズは、4K・8Kに対応した高い光学性能で高精細映像を支えています。

UHDTVの解像度比較
HDTVに対し、4Kは4倍、8Kは16倍の画素数があります




8K対応ズームレンズテクノロジー

ダイナミックな映像を生み出すキヤノンのズームレンズの評価は特に高く、8K対応の放送用レンズをはじめとした8Kソリューションの開発も早くから進められています。



8K対応51倍ズームレンズ

キヤノンは、蛍石やUDレンズの最適な組み合わせなど、独自の光学設計技術や高精度製造技術の進化により8Kシステム初の51倍を誇るズームレンズの開発に成功。広角端から望遠端までの全域にわたって諸収差を極限まで補正し、自然で高品位な描画性能を実現しています。また、実用性の面から4K対応ズームレンズ同等の小型化・軽量化ならびに操作性を実現しています。

8K対応の51倍ズームレンズ




4K対応ズームレンズテクノロジー

キヤノン独自の光学設計技術により、従来のハイビジョン用ズームレンズ同等の操作性と小型化と同時に4K対応の収差補正を追求。一つひとつの部品加工や組立調整において超高精度を求め続け、ズーム全域で画面の中心から周辺まで高い光学性能を達成することにより、4K映像にふさわしい高品位な解像力とコントラストを実現しています。


■収差補正技術

多群ズーム方式、フローティングフォーカス方式の採用により、ズームやフォーカスにともなう収差変動を抑制しています。さらに蛍石やUDガラスの使用と最適配置により、軸上色収差・倍率色収差を良好に補正することで4Kに相応しい高レベルの収差補正を実現。輪郭に色づきの少ない自然で美しい描写性能と、画面のすみずみまで優れた解像力を達成しています。


■HDR対応

HDR(ハイダイナミックレンジ)の映像制作では、従来白トビ・黒ツブレしていた明暗部分の映像表現が可能となるため、ゴースト・フレアーがこれまで以上に目立つようになります。キヤノンの4Kレンズは、レンズ鏡筒内面の遮光設計やゴースト回避設計、コーティングの最適化により、ゴーストやフレアを徹底的に抑制し、HDRの特徴を最大限発揮するヌケの良い高諧調な映像表現に貢献しています。


■4K対応のフォーカス分解能

4Kでは、画素サイズがハイビジョンの半分となるため、フォーカス合わせの精度がよりシビアになります。キヤノンの4K放送用ズームレンズは、高分解能のエンコーダーを搭載し4K撮影で求められる高精度なフォーカス合わせを実現しています。



クラス最高レベル 122倍4K対応ズームレンズ

キヤノンの世界初122倍ズームレンズは、放送用レンズの最上位モデルとして優れた光学性能と高い信頼性で、放送・映像業界から高い支持を得ています。独自の光学設計技術により、新開発のガラス材料や異常分散ガラス、蛍石、大口径非球面レンズなどの光学素子を最適配置することで、4Kを生かす光学性能を実現。撮影状況に応じて防振特性の切り替えを可能にしたシフト式光学防振機構は、従来のHDTVのフィールドレンズから大幅に性能を高めると同時にパンチルトにともなう揺り戻しを大幅に低減し、意図通りのフレーミングを行う技術も進化させています。

※ 2018年9月現在。2/3型センサー搭載の4K放送用カメラ対応フィールドズームレンズにおいて




独自の光学技術



蛍石レンズ

クリアでシャープな画質を実現するためには、被写体の輪郭に色の付いた縁取りのように写り画質を低下させる「色収差」の効果的な補正が欠かせません。色収差は、光がガラスの面を通過する際、波長の違いによって異なる角度で屈折し、色ごとに焦点位置がずれるために発生します。通常は、互いに逆方向に屈折する凸レンズと凹レンズを組み合わせることで、色収差を打ち消します。しかし、通常のガラスは性質上の限界から、全ての波長の収差を打ち消すことはできませんでした。蛍石は通常のガラスと屈折率特性に大きな違いがあるため、ガラスレンズと組み合わせることで、より効果的な色収差補正を実現します。

蛍石

キヤノンは、早くから光学ガラスにはない異常分散性を備える蛍石の有効性に着目し、蛍石鉱石を原料に高純度で大型の人工蛍石結晶を合成する技術を独自に開発。1969年には、世界で初めて一般消費者向けに蛍石レンズを採用した望遠レンズ「FL-F300mm F5.6」を発売し、その後、大口径化にも対応できる人工結晶化を実用化しました。

現在多くのキヤノン製レンズに使われる蛍石は、主にズームレンズの前玉部に使用され、望遠側で発生する色収差の補正に有効です。UD※1ガラス・Hi-UDガラス※2も蛍石のように異常分散性を備え色収差補正に使われ、特にHi-UDガラスは蛍石と同様に色収差の補正効果を持ちながら屈折力が高いため、球面収差※3などの補正効果を併せ持っています。ズームレンズの前玉部や変倍部に使用され、望遠側で発生する色収差のほかにフォーカシングやズーミングによる収差変動の制御に有効です。


※1 UD:Ultra Low Dispersion
※2 Hi-UD:High Index Ultra Low Dispersion
※3レンズのふちを通る光が中心部を通り光よりもレンズに近いところに集まり像がぼけてしまう収差

ガラス凸レンズとガラス凹レンズを利用した色収差補正


大口径非球面レンズ

レンズの収差には、色収差のほかに「球面収差」「コマ収差」「非点収差」「像面湾曲」「歪曲収差」の5つの収差(ザイデルの5収差といいます)が知られています。例えば球面収差は、レンズのふちを通る光がレンズの中心部を通る光よりも、レンズに近いところに集まって像がボケてしまう現象です。単体の球面レンズでは、どうしても球面収差が出てしまうため、開発されたのが「非球面(アスフェリカル)レンズ」です。レンズの面を円球面ではなく、径方向に微妙に曲率を変えていく曲面とすることで収差をおさえたレンズで、以前ならばレンズの球面収差を補正するために何枚ものレンズを組み合わせていた光学機器も、非球面レンズの登場によってレンズ枚数を大幅に減らすことができるようになりました。レンズは大口径になるほど収差が大きくなる傾向があり、非球面レンズの大口径化によりその効果も大きくなるため、大口径化は光学性能の向上とレンズの小型・軽量化を両立する最適な手段のひとつとなっています。しかし、厳しい精度が要求される放送用レンズに搭載するためには、加工精度を飛躍的に向上させる必要があります。キヤノンはフィールド用高倍率ズームレンズの開発において、光学性能の向上とレンズ製品の小型・軽量化の両立を実現するために、大口径非球面とそれに関連する新光学設計技術と大口径加工技術を開発。その結果、「XJ86x9.3B(2000年発売)」以降に発売したフィールド用高倍率ズームレンズは、ズーム比に関係なくレンズ全長がほぼ一定のサイズとなっています。

球面レンズで発生する球面収差

非球面によって焦点位置を合致




インナーフォーカス

キヤノンは放送用レンズの光学性能・操作性を向上させるため、インナーフォーカス方式をいち早く採用しました。これにより、スタジオ/フィールドレンズにおけるM.O.D. の短縮化、広角化の実現、フォーカシングによる色収差変動の軽減、ディストーションの減少などの効果が得られています。またフォーカスレンズ群の軽量化により低消費電力・高速駆動も可能にしています。一方、ポータブルレンズでは角型フードの装着を可能にし、ゴースト・フレアーの低減を図るほか、フィルターの回転をなくし効果的なフィルターワークを実現しました。

※ M.O.D.:レンズの最短撮影距離(Minimum Object Distance)の略




光学防振機構技術



イメージスタビライザー(IS)

2000年、キヤノンはレンズシフト方式の防振機構を搭載した放送用フィールドズームレンズを世界に先駆けて発売しました。VAP方式と合わせ、長焦点でのフィールド撮影時に障害となっていた風や撮影台の振動に起因する像ブレを大幅に抑制し、シャープな映像を提供しています。

※ DIGISUPER 86 XS(MJ86×9.3B)に採用。放送用フィールドズームレンズとして世界初。キヤノン調べ

■レンズシフト方式(Shift-IS)
キヤノンのカメラ「EOS」のEFレンズで評価を確立したレンズ内手ブレ補正機構を高精度・高性能に発展させたのが、放送用レンズの光学防振機構です。レンズ内のセンサーで揺れを検知し、レンズ群の一部(補正光学系)を光軸に対して垂直方向に移動、光線を屈折させることにより像ブレを打ち消します。補正光学系をレンズ内に配置できるため、光学系全体の小型化が可能なうえ、長焦点でも効果が得られ、高倍率ズームレンズに適しています。

■VAP方式(VAP-IS)
VAP※1は高屈折液体を封入した蛇腹構造のユニットで、光線を3次元的に制御可能です。肩担ぎ時に見られる低周波の揺れから、車載時などで問題となる高周波の揺れまで広く対応し、かつ大きな補正角を確保できる特徴があります。キヤノンは防振機構を内蔵した世界初のHDTV用ポータブルズームレンズや4K対応ポータブルズームレンズでもVAP方式を採用しています※2※3



※1 VAP:Vari-Angle Prism(頂角可変プリズム)
※2 HJ15×8.5B KRS-Vに採用(2010年発売)。業務用ポータブルズームレンズとして。キヤノン調べ
※3 CJ15ex8.5B KRS-Vに採用(2019年発売)。業務用ポータブルズームレンズとして。キヤノン調べ



デジタルテクノロジー



デジタルサーボシステム/デジタルドライブユニット

キヤノンはデジタルテクノロジーによるレンズ制御を先駆的に開始し、スタジオ/フィールドズームレンズにとどまらず、ポータブルズームレンズにも応用。撮影を効率化する豊富な機能を提供しています。キヤノンのポータブルズームレンズには、放送用・業務用とも、すべてに高速ズーム・フォーカス・絞りの設定など、快適な操作性を実現するデジタルドライブユニットが搭載されています。



フォーカスブリージングを抑制するCAFS

CAFSはフォーカシングにともなう画角変動(ブリージング)をゼロレベルに抑える技術です。例えば、奥から手前にピント送りをした際、画角が望遠側に変化するといった現象を解消し、フレーミングを安定させます。原理は、フォーカス部の移動にともなう変倍作用と逆方向にズーミングを機能させることにより、画角への影響を打ち消すというものです。キヤノンのDIGISUPERシリーズは、 32bitCPUを搭載したデジタルサーボ技術と独自の補正ノウハウを駆使することで、フォーカス・ズーム操作の違和感や遅延の少ない高速・高精度な制御を実現しています。

※ CAFS:Constant Angle Focus System



バーチャルスタジオシステム連携

キヤノンの放送用レンズは16bitエンコーダーを採用することにより、アナログ位置センサー(10bit相当)に対してはるかに高い分解能で位置情報を検知・出力。高精度で自然な合成を可能にしています。



クラッチレスズーム機構

ズーミングの際、クラッチレバーを切り換えることなく自動で被写体を追うサーボ制御とマニュアル操作が可能です。サーボ制御時でも瞬時に手動でフレーミングを変更できるほか、マニュアル操作から連続してサーボによるスローズームを行うなど、柔軟なズーミングを実現します。

※ 放送用ポータブルズームレンズの一部モデルに採用(オプション)



エルゴノミックデザイン



小型・軽量ドライブユニット

優れた操作性を実現するポータブルレンズのドライブユニットは、小型・軽量設計で手のひらとレンズ光軸が接近し、取り回し時に違和感が少ないほか、肩担ぎ時も脇がしまり疲労感を軽減します。さらに、手の形状に合わせた自由曲面の採用とゴム製の指がかりの配置により、良好なホールド感を実現しています。また、フォーカスリング部分のスペースを広く確保することで、マニュアルフォーカス時の操作も容易にしています。

ドライブユニット



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