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高速道路の安全を支える技術 高速道路の安全を支える技術

AIによる画像ベースインフラ構造物点検

高速道路の安全を支える技術

社会インフラとして重要で不可欠な高速道路。橋梁やトンネルなど、多くのコンクリート構造物を持つ日本の高速道路で、AIを活用したキヤノンの画像ベースインフラ構造物点検サービスの活用が始まっています。

高速道路網は日々、人やモノを運ぶインフラとして、経済、産業を支える要のひとつ。安全・安心・快適に保つためには点検が欠かせません。
この高速道路の橋梁やトンネルなど、コンクリート構造物の点検での活躍が期待されているのが、キヤノンの画像ベースインフラ構造物点検サービスです。

2021/12/23

コンクリート製インフラの保守・点検で安全を確保

四方を海に囲まれ、山や河川が多い日本の高速道路は、海外に比べ橋梁やトンネルが多いことが特徴です。約9600kmの高速道路に約1万6,700橋のコンクリート製橋梁、約1,680本のトンネルがあります。高度経済成長期に建設されたものも多く、約5割が運用開始から30年を超え、今後、安全確保のために点検と補修をしっかり進めていくことが非常に重要となっています。

コンクリート構造物の健全性を診断する基準のひとつに、ひび割れがあります。コンクリート構造物は古くてもひび割れが少なければ健全性は高く、新しくてもひび割れが多ければ健全性が低くなることがあります。また、単にひび割れがあるというだけではなく、その長さや幅のほか発生場所によっても構造物に与える影響は異なるため、点検技術者による総合的な判断が必要です。

日本の高速道路網は新規建設や拡幅が続けられ、点検対象のインフラは今も増え続けています。現在は点検技術者も十分に確保できていて安全の維持を行えていますが、特に日本では今後、少子高齢化による将来の点検技術者不足が課題です。また点検技術者の能力や判定には個人差もあり、適切に構造物の健全性を診断するために、変状の程度を定量化し診断の高度化や効率化を図るデジタル技術を利用する必要性も高まっています。

  • ※東日本高速道路株式会社(NEXCO 東日本)、中日本高速道路株式会社(NEXCO 中日本)、西日本高速道路株式会社(NEXCO 西日本)のNEXCO3社が管理運営する高速道路総延長

株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研) 基盤整備推進部 管理基盤推進室 本多正和室長

株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)
基盤整備推進部 管理基盤推進室 本多正和室長

NEXCO総研

NEXCO総研

点検技術者の判断に近い、高精度な変状検知

日本の高速道路網を建設、管理、運営するNEXCO3社へ、高水準で効率的な調査・研究、技術開発、技術支援を行っているのが株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)です。

従来、点検業務は点検技術者が目視で確認し変状をスケッチするという方法が主流でしたが、近年、現場で撮影した写真を利用する「画像ベース点検」が増えています。画像の高解像度化が進み細かなひび割れも確認できるようになった一方、点検技術者がデスクで画像を確認する時間も大幅に増えてしまいました。そのようななか、点検業務のさらなる高度化と効率化のための調査、研究を行っていたNEXCO総研の目に留まったのが、ディープラーニング(AI)を活用したキヤノンの画像ベースインフラ構造物点検サービス「インスペクションEYE for インフラ」です。NEXCO総研 基盤整備推進部 管理基盤推進室 本多正和室長は、キヤノンのAIについてこう語ります。

「検知精度がとても高いですね。例えばひび割れの連続性。1本のひび割れを細切れに検知するAIもありますが、キヤノンのAIは連続しているひび割れを1本として検知するなど、点検技術者による目視点検に近い精度になっています。加えて剥落、エフロレッセンス、鉄筋露出なども検知できる可能性があります」

「インスペクションEYE for インフラ」の変状検知AIは、日本のインフラ構造物画像ベース点検のパイオニアである株式会社東設土木コンサルタントとの共同研究を通じて実現されました。東設土木コンサルタントの技術者が変状をトレースした画像を、教師画像に使用したディープラーニングによるAIで、熟練の点検技術者と遜色ないひび割れ検知ができるようになりました。その高い精度が評価され、今後の本格運用をめざし、全国での試験運用がスタートしています。

  • ※エフロレッセンスとは、コンクリートなどの表面に白い生成物(白華)が現れること

点検用の画像撮影には、高解像度のデジタル一眼レフカメラ「EOS」を使用。パノラマ撮影用の自動雲台を使って自動的に撮影位置をずらしながら検査対象範囲を複数の画像で記録します。それらを撮影後の画像処理でつなぎ合わせることで、1枚の高解像度画像を作成し、AIによる変状検知を行います。

技術者が目視点検しチョークで印をつけた撮影画像

技術者が目視点検しチョークで印をつけた撮影画像

AIによるひび割れ自動検知結果

「インスペクション EYE for インフラ」のAIによる変状検知では、技術者のチェックと同じひび割れが正確にトレースされています。検知対象構造物によって「橋梁用」「トンネル用」など最適なAIモデルを用意することで精度を高めています。

点検業務の高度化が、安全性の向上と技術者の育成につながる

「AIにより変状検知を自動化しても、それで点検完了ではないのです。AIによる変状検知は点検作業の一部分であり、最終的な判断は技術者です。点検技術者が確認し、AIの判断が間違っている場合は修正も行わなければならず、修正が多ければ作業時間の短縮は望めません」と本多室長は言います。インフラの状態や点検基準はお客さまごとに異なる部分もあるため、「インスペクションEYE for インフラ」では、お客さまの点検画像の画質に合わせて、AIの性能をチューニングしています。高速道路インフラ点検用には、NEXCO3社での実際の点検結果を踏まえたチューニングを行い、高い精度を実現しています。

「インスペクションEYE for インフラ」は画像チェックの時間を短縮することで、技術者が現場に行く時間を増やす効果もあるといえます。技術者の育成にも貢献できる可能性を持っているのです。本多室長は「私たちも現場で先輩から『この損傷はなぜ発生したと思うか』と言われながら多くを教わりました。実際に現場で見て、なぜかと考える経験がないと技術者は育ちません。便利になっても現場を観察しながら判断力を養うことは大事です」と現場経験の重要さを強調しています。

お客さまとともに技術を磨き、AI技術で安全・安心に貢献

キヤノンの画像ベースインフラ構造物点検サービスを活用した高速道路インフラ点検への取り組みは、まだ始まったばかりです。実際には、すべての点検業務のなかで、画像ベースで行っているものは2割程度。AIによる変状検知を活用した点検は、まだまだごく一部です。

キヤノンは、これからもお客さまごとの状況を十分に考慮し、ともに開発を進めながら、さらなる精度向上を図ることで、安全・安心に貢献していきます。

インスペクション EYE for インフラ

「インスペクション EYE for インフラ」は、撮影、画像処理、変状検知の3つのサービスで構成。実際の点検画像を学習させたAIによる変状検知は、幅の異なるひび割れ同士が連続したひとつのひび割れなのか、別のひび割れなのかなど、熟練点検技術者の判断と遜色ない変状検知が可能です。

画像処理サービスや変状検知サービスを個別に利用することもできます。

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