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記録用のインク技術 記録用のインク技術

ナノレベルで分子をコントロールし、明るく鮮やかな発色を実現

記録用のインク技術

多様化する印刷ニーズに対応するために進化し続けるデジタル印刷技術。キヤノンは、画質を左右する重要な要素である”インク”を自社で開発し、鮮やかな色彩や広域な色表現を可能にするなど、お客さまに新しい価値を提供しています。

2023/9/6

高画質化により、用途が広がる顔料インク

インクジェット技術は、家庭用や小規模オフィス用のプリンターから、出版物やダイレクトメール、カタログなどを印刷する商業印刷といわれる分野、さらにはラベルやパッケージなどさまざまな媒体に印刷する産業印刷の分野まで用途が拡大しています。インクジェットプリンターに使われる水性インクの色材には「染料」と「顔料」があります。家庭でのプリントは普通紙やインクジェット用紙など、吸水性のある用紙が使われることが多いため、色素が染み込んで着色する染料インクが主流を占めています。商業印刷では従来の用紙に加えて、水を吸収しにくいコーティング用紙にも、また産業印刷ではフィルムやガラス、金属など水を吸水しない素材にまで印刷するため、色素が表面に定着して着色する顔料インクが主流となっています。

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染料インクと顔料インクの違い


また、光沢感や発色性に優れている染料インクは「高画質」、耐光性や耐水性に優れている顔料インクは「堅牢性」と得意分野が異なり、用途に応じて役割分担をしてきました。しかし昨今、顔料の微粒子化や分散技術の向上により、染料に匹敵する高画質化を実現。顔料インクは、ポスターなど写真が使われる用途にも対応できるまで進化しました。
高速印刷では、インクが紙面に素早く定着して乾燥することが必要です。キヤノンでは、高速印刷された用紙が重なったときに紙同士がこすれて、文字や画像がかすれないようにインク材料を見直し、擦過性を強化。さらにインクジェットヘッドの目詰まりを防いだり、長期保存してもインクの品質が劣化しないようにインクの機能性を高めることで、お客さまの利便性向上に取り組んでいます。

ナノレベルでインクをコントロールし、鮮やかな発色を実現

水に溶けない顔料は、水中で均一に分散させることでインクになります。顔料が水中でうまく分散していない状態だと、顔料の粒子が寄り集まって塊になり沈んでしまいます。粒子が塊になると発色が悪くなるなど画質に影響するほか、インクジェットヘッドのノズルが目詰まりして印刷できなくなることもあります。 また一般的には、顔料の粒が小さいほど少ない量でも十分に発色し、より広い色域まで再現できるといわれています。高画質を達成するためには、顔料同士がくっつきにくいように、顔料の分散を手助けする役割を担う分散剤を用いて顔料一つひとつの分散状態をコントロールすること、さらには分散剤を最適な配置で作用させつつ顔料の粒のサイズを非常に小さい100nm*サイズ程度につくりこむことが求められます。
*nm:ナノメートル。10億分の1メートル。100nmは、髪の毛の太さの1,000分の1程度。

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顔料の分散を手助けする分散剤を使って分散状態をコントロール


キヤノンでは、発色や分散に有利な材料の分子構造を導き出す際には、高度なシミュレーション技術を活用しています。インクの設計はもちろん、設計した通りに材料やインクをつくりこむための生産技術の開発、さらには工場での量産まで一貫して社内で行うことで、高機能な顔料インクを生み出しています。これにより、設計から量産までの工数を従来の約3分の1に短縮するとともに、お客さまに高品質なインクを迅速に提供する体制が整っています。


高品質なインクをいち早く提供するために、シミュレーション技術を活用

シミュレーションで算出した顔料結晶の構造

シミュレーションで算出した顔料結晶の構造

実際の顔料結晶

実際の顔料結晶

新開発のインクにより、表現できる色域が拡大

時代の流れとともに印刷物に対するニーズは変化しています。新しいインクを開発するときは、「いま求められている色は何か」を調査します。たとえば、ポスターでは、インパクトのある印刷が求められます。大判プリンターに蛍光ピンクを搭載し、ポジティブで軽やかなイメージに加えて、オレンジ領域の明るくやわらかい発光感も表現できるようになりました。さらに最近では、ディスプレイ上での鮮やかな色表現を、印刷物で再現するニーズが高まっています。キヤノンでは新開発のレッド、オレンジ、グリーン、バイオレットを加えることで高明度、高彩度方向の色域を拡大。人目を引く発色のよさが好評を得ています。

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新開発のインクより、発色がよく、インパクトのある印刷を実現


さらなる高画質のために、これからも進化を続けるインク技術

文書や写真を印刷する家庭用プリンター、書籍や高品位なカタログなどの印刷に用いられる連帳プリンター、ポスターや図面などの印刷に適した大判プリンター、さまざまな質感のラベルやパッケージに印刷可能なラベルプリンターなど、多彩なプリンターをラインアップし、多様化するデジタル印刷のニーズに応えるキヤノン。少人数や不慣れな人でも操作できるデジタル印刷の特長を生かして、印刷現場での人手不足や後継者不足などの社会的課題の解決にも貢献していきます。

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