スパッタリング装置のメインヴィジュアル

半導体の製造に欠かせない真空薄膜形成装置

スパッタリング装置

生成AIの発展に伴い、データセンター向けの半導体を中心に需要が高まっています。スパッタリング装置は、高度な真空技術を使い、高品質・高精度な成膜を実現し、半導体製造を支えています。

目次

スパッタリング装置のしくみ

スパッタリング装置とは

スパッタリング装置とは、半導体デバイスの回路をつくるために、ウエハー上に薄い膜を形成する装置です。特に、生成AIや自動車業界などでの需要が増加している半導体の製造に使われています。
半導体チップの製造工程は、電子回路パターンをウエハー上に形成する前工程と、電子回路が描かれたウエハーを一つひとつのチップに切り出して、電子機器の中できちんと動くように組み立てる後工程に分けられます。
半導体製造装置の1つであるスパッタリング装置は、主に前工程において、ウエハー上に配線などをつくるために必要な薄膜を形成(成膜)するために使われます。1つの半導体チップの上に、多いもので30層以上の膜が積み上げられ、1層の厚さは薄いもので1nm以下という高精度な成膜技術が求められます。

  • ※1nm (ナノメートル)は、10億分の1メートル
前工程説明図 後工程説明図

スパッタリング現象とは

スパッタリング現象とは、電気を帯びた原子(以下、イオン)を材料の表面に高速で衝突させることで、原子や分子がはじき出される現象です。スパッタリング装置の中では、成膜材料と薄膜を形成したいウエハーを配置した真空内に、不活性ガスを入れて成膜材料に電圧をかけると、マイナスの電気を帯びた電子とプラスの電気を帯びたイオンに分離します。そして、プラスの電気を帯びたイオンが、成膜材料に高速で衝突して、成膜材料の原子をはじき出すスパッタリング現象がおきます。はじき出された成膜材料の原子がウエハー上に付着・積み重なって、回路をつくるための薄膜が形成されます。

装置の中で起こるスパッタリング現象説明図
装置の中で起こるスパッタリング現象
成膜材料の原子がウエハーの表面に付着し、薄膜が形成される(動画・24秒) ※音声なし

薄膜は、構成する材料やその形状、厚みによりさまざまな電気特性をもちます。この特性がデータを記録するメモリーやコンピューターの頭脳であるロジック、照明器具などに用いられるLED、各種センサーなどの半導体デバイスに活用されています。

  • ※ 化学反応を起こしにくい気体のこと。アルゴン(元素記号はAr)などがあり、他の物質と反応しにくい性質をもつため、半導体製造工程で用いられている

超高真空とは

スパッタリングは、「超高真空」の環境下で行われます。超高真空とは、国際宇宙ステーションなどの衛星が周回している高度400kmに匹敵する地表の100億万分の1以下の気圧のことをいいます。

超高真空イメージ図

膜を形成する時、大気中にある無数の気体分子が障害物や不純物として妨げになります。超高真空のような気体分子数の少ない希薄な環境をつくることで、原子や分子を狙い通りに飛ばせるようになり、半導体に必要な不純物の少ない薄膜をつくることができます。

大気と超高真空の違い

キヤノンのスパッタリング技術

1nm以下の極薄膜を均一に形成できる 「斜め入射回転成膜技術」

斜め入射回転成膜技術は、プラズマを発生させる「カソード」といわれる電極をウエハー面に対して斜めに配置して、ウエハーステージを回転させながら成膜を行う技術です。均一に成膜でき、膜の厚さのコントロールもしやすいため、とても薄い膜を精密に制御してつくることができます。さらに複数の成膜材料を配置でき、異なる種類の材料を積み重ねていく多層成膜も可能にし、30層以上を成膜することができます。
この技術により、半導体デバイスの省電力化に貢献する不揮発性メモリーをはじめとした多様な半導体デバイスの製造に貢献しています。

斜め入射回転成膜技術説明図
  • ※ 電源をオフにしても記憶内容が保存されるメモリー。USBメモリーやSSD、交通系ICカードなどが代表例

原子拡散接合技術への応用

半導体デバイスの製造では、ウエハーとウエハーを貼り合わせることで、高性能化する技術が進化しています。その技術を実現するのが、原子拡散接合装置です。スパッタリング技術を活用し、貼り合わせたいウエハーの接合面に接着剤としての薄膜(接着膜)を形成することで、材料同士を接合します。この際に、接合面で接触した原子が相手の原子の並び方に従って配列を変える原子拡散現象を活用することで、キヤノンの原子拡散接合装置は接合後の境目がほとんど判別できないほどに強固に接合できます。

原子拡散接合技術への応用説明図
左:ウエハー同士が強く・安定して結合できるように、化学的に反応しやすい清浄な接合面を作る
右:原子拡散現象による強固な接合
(コラム)2024年度グッドデザイン金賞を受賞したスパッタリング装置「Adastra」

Adastraは、製造する半導体デバイスに合わせて装置構成を自由に選択できるため、多様なニーズに柔軟に対応できるスパッタリング装置です。生産性と環境配慮の両立が求められる半導体業界において、省スペース・省エネルギーでナノレベルの薄膜が成膜できるようになりました。この装置は、デザイン性やユーザビリティ向上が評価され、国内では、2024年度グッドデザイン金賞、第55回 機械工業デザイン賞IDEAで最優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞。さらに、国際的なデザイン賞であるドイツの2025年度iFデザインアワードでも金賞を受賞し、技術力とデザイン性で高い評価を得ています。

Adastra製品画像