鳥のヒミツをときあかせ vol.6

鳥の羽はなぜあんなにきれいなの?

鳥の羽の色のヒミツ

青や緑や黄色やオレンジ……
野鳥のなかには、とてもキレイな色の羽をもつ仲間がいる。
理由は発色の仕組みにあった!
鳥の羽の色のヒミツをみてみよう!

チャレンジ1

キレイな鳥の色をみてみよう!

みなさんはキレイな鳥というとどんな鳥を思いうかべますか?たぶん真っ先に頭にうかぶのは、クジャクやオシドリではないでしょうか。クジャクもオシドリも青や黄色や緑といったたくさんの色のついた羽を持っています。夏になると南の国から日本へやってくるオオルリの青色やキビタキの黒と黄色の配色もとてもキレイです。これらキレイな鳥の色は、赤や黄色のキレイな色を発色する色素、そしてもう一つは、羽の構造によって、青や緑など光の一部だけを反射する仕組みによるものです。

オオルリ(オス) 
キビタキ(オス)

チャレンジ2

発色の仕組みを知ろう!

赤や黄色を発色する色素はカロテノイドといって、ニンジンにふくまれている赤い色素の仲間です。もう一つカラスの黒い色はメラニンと言って、茶色や黒を発色する色素です。メラニンは鳥の体の中で作られますが、カロテノイドは食物から栄養素えいようそとして取り入れなければなりません。動物園で飼育しいくされているフラミンゴはピンクから紅色をしたとても美しい鳥ですが、フラミンゴの赤い色彩はカロテノイド色素によって発色しています。カロテノイドの少ないえさをあたえられると、フラミンゴは白っぽくなってしまうので、動物園ではニンジンやカボチャなど、カロテノイドをたくさんふくんでいるえさをあたえて、あの赤い色を維持いじしようとしています。

鳥たちにはこの2つの仕組みがあるので、いろいろな色を出すことができます。たとえばオーストラリアにすんでいるセキセイインコは、野生では緑や黄緑の混じった色をしていますが、ペットショップで売られているセキセイインコには青や黄色のものもいます。これは色を出す仕組みの一方だけが働いた結果です。黄色のセキセイインコは青い色を出す羽の構造に突然変異とつぜんへんいが生じて、青い光を反射できなくなった品種。青色のセキセイインコはカロテノイドによる黄色を発色できなくなった品種です。野生種ではどちらの色素も発色しているので、組み合わさって緑色になるわけです。

フラミンゴの仲間

チャレンジ3

結婚のための美しさ

スズメやカラスのようにオス・メスの区別がまったくつかない鳥もありますが、クジャクやオシドリはオスだけがきらびやかな美しい羽をもっています。クジャクの属するキジの仲間やオシドリが属するカモの仲間では、オスだけが美しい種類が圧倒的あっとうてきです。なぜオスだけが美しいのでしょうか。じつはクジャクやオシドリのオスの美しさは、結婚けっこんするときにメスが美しいオスを選んできたので、進化したと言われています。
きれいなオスもはじめから美しかったわけではありません。はじめはわずかに目立つ突然変異(羽のスポットなど)があらわれたときに、メスがそれに気づいてそのオスと結婚し、子孫を残します。すると息子たちもお父さんのその突然変異を受けついで、スポットを持ったオスに成長します。
一方、このように少しでも違ったオスを選ぼうとするメスの傾向けいこう遺伝的いでんてきなものだとしたら、彼女の娘もまた母親の傾向を受けついで、目立ったオスと結婚しようとするわけです。この傾向が孫の代、ひ孫の代……と続いていくことによって、オスのかざりはどんどん派手はでになって、それを選ぼうとするメスの傾向も集団しゅうだんの中で広まっていったわけです。

オシドリ(オス)
オシドリ(オスとメス)

チャレンジ4

キレイな色は天敵てんてきへの警告けいこく

自然界では、派手な色彩しきさいをもつことによって、てきにねらわれないようにしている生物がたくさんいます。どくチョウや毒ヘビの毒々しくて目立つ色彩は、敵に対して「オレはマズイぞ」とか「つかまえにくいぞ」とか「毒を持っているぞ」といった警告を発しているのです。これを警告色といいます。では、鳥にはそういう色彩はあるのでしょうか。
毒のある鳥の存在そんざいは最近まで知られていませんでした。ところが1992年に、世界で初めて毒のある鳥が発見されました。毒のあることがわかったのはニューギニアにすんでいる頭が黒くて全身オレンジのズグロモリモズという鳥です。モズと名前がついていますが、モズの仲間ではなく、サンショウクイに近い鳥です。オレンジ(赤また黄色)と黒という色彩は、毒のあるイモリやヤドクガエルなど自然界では「食べると危険だぞ!」と天敵に警告するためのメッセージになっています。オレンジと黒の色彩は自然界では 「毒々しい」色彩なのです。
では、キビタキのオスの黄色と黒の色彩もそうなのでしょうか?クジャクやオシドリを見ていると美しさはメスに対するアピールと思ってしまいますが、もしかすると天敵に対する警告なのかもしれません。と考えると、オオルリやコルリの青も「警告色」なのかもしれません。 

まとめ

いろいろな鳥の羽にはこんな仕組みがあったんだね。世界のキレイな羽の鳥を調べて、なぜその色になったのか考えてみよう!ワークシートに書き込めば、オリジナルの野鳥図鑑ができるよ。

解説者紹介

上田 恵介

1950年大阪府生まれ。
動物生態学者。元立教大学理学部生命理学科教授。元日本鳥学会会長。
鳥類を中心に動植物全般の進化生態学のほか、環境問題の研究にも取り組む。
日本野鳥の会評議員で、会長。会員による鳥類学論文集「Strix」の編集長も務める。

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