ヒヨドリ
スズメ目ヒヨドリ科 全長約27cm
日本ではどこでも見られ、一般的なヒヨドリだが、世界的にみると分布は日本周辺に限られている。「ヒヨ、ピーヨ」などと伸ばして鳴き、繁殖期のオスに限った「さえずり」はないとされている。大きさは、スズメとハトの中間サイズで、よく間違えられるムクドリよりも尾が長め。
※鳴き声が再生されます。
日本中で見られても、世界的には珍しい鳥
鳥は吸えない
キジバトの解説で、「鳥の多くは吸うことができないが、ハトは例外」と書きました。スズメでもカラスでも、鳥が水を飲むときは、必ず上を向いて流し込んでいるはずです。私たち哺乳類が吸えるのは、乳を吸うことが必要だったためでしょう。アメリカ大陸にいるハチドリは花の蜜が主食で、日本でもメジロやヒヨドリが蜜を求めて花にやってきますが、彼らは吸っているわけではありません。舌を使って、蜜をのどの奥まで運んでいるのです。
くちばしを花粉で黄色に染めているヒヨドリを見ればわかるように、蜜を求めるものは受粉に貢献します。虫が花粉を媒介する花を虫媒花、鳥が媒介する花を鳥媒花と呼び、日本の鳥媒花では、ツバキが代表的です。
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海上を低空で渡るわけは?
日本周辺にしかいないはずのヒヨドリですが、9月下旬頃から10月にかけて、西や南に渡る群れが全国的に見られます。ヒヨドリがどのような移動をしているのかはよくわかっていませんが、朝に飛び立つことが多いので、長距離は渡っていないものと思われます。多くの鳥で、長距離移動は夜に行われているからです。夜のほうが、天敵が少なく、日光を背に浴びることで体力を消耗しないですみます。また、明るい時間帯を食料補給に費やせることでも、理にかなっていると言えるでしょう。
ヒヨドリが海を越えて渡るときには、しばしばハヤブサに狙われます。そこで、ヒヨドリたちは海面に飛び出すや否や、落ちるように高度を下げ、海面すれすれの低空をキープして飛び続けます。ハヤブサの狩りは、時速300kmにも及ぶ急降下をするので、海面近くを飛ばれると、自分自身が海に突っ込んでしまうリスクが高まり、狩りが難しくなるのです。
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