コアジサシ
チドリ目カモメ科 全長約25cm
夏鳥。写真は親から子への給餌。本州以南の砂浜、埋立地、川の中州などで、集団で繁殖する。周辺の水辺を舞い、水面に飛び込んで小魚をとる。「キリッ、キリッ」と鋭い声で鳴く。少し大きなアジサシは春と秋に見られる旅鳥で、キョクアジサシは迷鳥としてまれに見られる。
※鳴き声が再生されます。
減少する裸地で繁殖する絶滅危惧種
緑のない裸地が必要
コアジサシは、環境省によって絶滅危惧Ⅱ類(VU:絶滅の危険が増大している種)に指定されています。各地で繁殖地の減少が心配されていることが一因でしょう。シロチドリやコアジサシは、草木がない開けた地面で繁殖します。そうした繁殖地は、洪水などで新たに生じることもありますが、再び水没したり、草が茂ったりする不安定な環境です。
埋立地が一時的に繁殖地になっても、道路ができたり、やがてビルが建ったりします。緑があったほうが、鳥や環境のためにはよいと考えがちですが、そうとも限りません。コアジサシのように裸地が必要な鳥もいること、人為的に裸地を維持するには、草むしりだけでも大変な作業になることは、生物多様性保全の観点からも知っておきたいものです。
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集団繁殖のわけ
東京には、下水道局施設の屋上にある人工営巣地でコアジサシの保護を続けている「リトルターン・プロジェクト」というNPO法人があります。ただ、コアジサシが繁殖しても、集団繁殖の規模が小さいと、雑食性のカラスや猛禽類のチョウゲンボウなどの天敵によって卵や雛が犠牲になることも少なくないそうです。地上での営巣はネコや犬による捕食も脅威になるはずですが、見晴らしがよい裸地で集団繁殖するコアジサシの習性は、危険度が高くても集団によって襲われにくくなり、また協力して防衛できるということと無関係ではないでしょう。
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