コハクチョウ
カモ目カモ科 全長約132cm
本州の湖沼や広い川で冬を越す。本州では冬鳥であるが、北海道では冬を越すものは少なく、南下する秋と北上する春に見られる旅鳥であることが多い。オオハクチョウはよく似ているが首の形状やくちばしの模様、分布に違いがある。声はコハクチョウのほうが低く、オオハクチョウはより甲高い。
※鳴き声が再生されます。
よく似たオオハクチョウとどこが違う?
北のものほど南に渡る?
お堀で飼われていることが多いコブハクチョウは、額にコブがあることで見分けやすいのですが、ロシアから飛来するコハクチョウとオオハクチョウはよく似ています。全長約140cmとされるオオハクチョウは並べば大きいことがわかりますが、2種が一緒に見られるとは限りません。ここでは、2種の分布の違いに注目してみましょう。
コハクチョウは北極圏で繁殖しますが、オオハクチョウはそれより南で、カムチャツカやサハリンでも繁殖しています。ところが、越冬地は逆のようで、コハクチョウは西日本まで渡るのに対して、オオハクチョウは関東以北、主に北日本で冬を越します。このように、より北で繁殖するものほど南に渡る傾向は、カモメの仲間でも見られます。ロシアで繁殖するセグロカモメの多くは、北日本で繁殖するオオセグロカモメよりも南西の地域で冬を越します。
日本初の衛星追跡
野鳥の多くはペアも親子も繁殖期だけの関係で、春に生まれ、夏までに独立して、一冬生きのびれば翌年春から繁殖できるようになります。ところが、ハクチョウやガン、ツルの仲間では親子関係が冬まで続き、ペアはパートナーが生きている限り続くようです。これらの鳥は比較的、生存率が高いことが考えられ、成長が遅い(繁殖できるようになるまで2年以上かかる)ことも共通しています。
ところで、オオジシギで紹介した発信機による渡り鳥の研究は、実は、コハクチョウが最初の例です。1990年4月10日、日本野鳥の会研究センターによって北海道で発信機を装着されたコハクチョウの「のり子」は、その後の衛星追跡によって4月26日にサハリンを経て、5月17日に北緯約161度の北極圏まで到着したことが判明しました。