モズ
スズメ目モズ科 全長約20cm
スズメより細長い尾を、ぐるぐると回すように振る。林の中ではなく、少しひらけた環境を好み、低木のある農地や河原などに多い。繁殖期以外は一羽で暮らし、虫も食べるが、小動物や小鳥まで狙う。獲物を枝にさしておく習性があり、「もずのはやにえ(早贄)」と呼ばれる。
オスはアイライン(過眼線)が黒く、背に灰色味、翼には白斑がある。繁殖期に「ギチギチギチ」と鳴くが、この声はメスも発し、警戒の意味があるらしい。
※鳴き声が再生されます。
秋の風物詩、春は鳴き真似上手
秋に高鳴きするわけは?
チョンチョン、キーイキーイなどとけたたましい「もずの高鳴き」は、秋の知らせとして親しまれてきました。高鳴きを聞くと75日目に霜が降りだすとして、農作業の目安にしてきた地域もあるそうです。
ウグイスで解説したように、さえずりはオスのみ、春夏だけの特別な鳴き方。さえずってメスを呼び、その後は繁殖のなわばりを主張する意味があります。小鳥は夏に子育てが終わると夫婦や親子の関係、なわばりやさえずりもなくなって、秋冬は群れることが多くなります。肉食のモズは例外で、秋にオスもメスも高鳴きをし、越冬なわばりを主張します。ハンターは冬を越せるだけの食物を得るために、一羽一羽がなわばりを確保しなくてはなりません。
鳴き真似が上手いとモテる?
小鳥たちがさえずりをはじめる頃、モズのオスはよく鳴き真似をします。漢字で百舌鳥と書いてもずと読ませるほど鳴き真似上手で、ウグイスなど他の小鳥のさえずりだけでなく、ウマのいななきまで真似します。小鳥のメスがさえずりによってオスを選ぶ場合、より複雑なさえずりが好まれるという研究があるので、オスはさまざまな声を発することで、メスに選ばれようとしているのかもしれません。
近年、モズは庭や公園など身近な環境から姿を消しつつあるようで、東京都の区部では絶滅危惧種とされました。虫や小動物が減れば、それらを食べるハンターは暮らしていけないはずですから、モズは身近な自然度を表す目安にもなるでしょう。