タンチョウ
ツル目ツル科 全長約140cm
翼を広げると240cmに及び、日本の野鳥では最大級。北海道東部の湿原で繁殖する。手のひらサイズのひなが、成鳥のサイズまで育つには豊かな湿原で小動物などをたくさん食べなくてはならない。秋冬は給餌場に集まるが、まれに本州以南に飛来するものがいる。
ツルの仲間では、ペアの関係が終生続くらしい。2羽でデュエットする際はオスが「コー」と鳴き、メスが「カッカッ」と続ける。
※鳴き声が再生されます。
ツルたちの過去、現在、未来
絶滅の淵から復活した今日の課題
大正時代、一時は絶滅したと思われたタンチョウが釧路地方で見つかり、冬の給餌活動によって北海道で数を増やせたことは世界的に有名です。今日は大陸でも繁殖地と越冬地が見つかり、日本では、繁殖できる湿原の保全が課題になってきました。給餌活動は今も続けられていますが、多くのタンチョウがそこに集中している状態は、好ましいとは言えません。感染症が広まると短期間で絶滅してしまう恐れもあるので、給餌に頼らないタンチョウや自然採食で冬を越せるタンチョウを増やして、生息地を分散させることが課題となっています。
日本野鳥の会では鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ (marimo.jp)を設置し、調査研究、湿原の保全、自然採食地の整備などに取り組んでいます。
渡り鳥にとって大切な非武装地帯
ロシアと中国で繁殖するタンチョウは、冬は南に渡ります。鹿児島県にあるマナヅルとナベヅルの越冬地などに時々タンチョウが飛来するのも、大陸から南下して来ているのかもしれません。
衛星追跡などの研究によって、マナヅル・ナベヅルが大陸から渡って来る途中の中継地と、大陸で繁殖したタンチョウの越冬地として重要な場所が明らかになっています。そこは南北朝鮮を隔てる非武装地帯です。
研究の核となった樋口広芳さんは「…人間による不幸な歴史がもたらした非武装地帯の自然を保全していくことができれば、そうした不幸なできごとを2度と生じさせないための象徴として歴史的にも意義あることだ…」と語っています。