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微細化の限界を超える微細化の限界を超える

ナノインプリントリソグラフィ

半導体チップの回路パターンを転写する半導体露光装置。キヤノンは半導体デバイスの微細化をさらなる低コストで実現するナノインプリントリソグラフィ技術を用いた半導体露光装置で半導体業界に革命を起こそうとしています。

2018/12/27技術紹介

#オープンイノベーション#産業機器#特許#機械工学#電気工学#情報工学#物理学#化学#半導体

究極の微細加工技術ナノインプリントリソグラフィ

半導体チップの進化は回路パターンの微細化の歴史でもあります。微細化のカギを握ってきたのが「露光で使用される光源の短波長化」と「微細化に対応した露光技術」の開発。1990年代前半、波長365nm(nm:ナノメートル=10億分の1メートル)のi線露光装置が登場し、350nmパターンという微細化を実現。以後、新たな短波長光源が開発され、2000年代後半のArF液浸露光装置による38nmパターンにおいて技術的限界に達したといわれていました。
EUV光源など、各社が技術のブレークスルーを模索するなか、キヤノンは、短波長化に代わり、低コストで微細化を実現する新たな技術で、微細化の道を切り拓こうとしています。それが、ナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprint Lithography:NIL)で、15nm以下のパターンをシンプルなプロセスで安価に製造できるため、半導体業界に革命を起こす技術として期待されています。

半導体の微細化の歴史

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5年ごとに約半分に細くなった線幅が2000年代後半から停滞気味

キヤノンが進めるナノインプリントリソグラフィ技術の仕組み

露光技術は半導体チップの低コスト化に貢献してきましたが、微細化にはさまざまな工夫が必要で、装置も大型かつ巨額になってきています。一方、ナノインプリントリソグラフィ技術は、回路パターンを刻み込んだマスクを樹脂に押し当てるというシンプルな原理でパターンを形成します。製造工程の簡略化による大幅なコストダウンが見込め、非常にシャープな回路パターンを形成できることから、チップの不良率の低減も期待されています。既存の露光装置のように「光学による結像」を必要としないため、フレアや収差といった光学固有の像性能悪化要因を持ちません。その結果、10数nmレベルの微細なパターンでも、非常に高解像度かつ鮮明に形成できるのが特徴です(図)。

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インプリント用樹脂(レジスト)の吐出制御技術

独自アルゴリズムの開発により、目に見えない現象を可視化

ウエハー上への樹脂塗布工程における吐出制御技術は、樹脂(レジスト)を塗布する際の「最適な塗布分布を算出」する技術と、算出された塗布分布に従って「正確にレジストを塗布」する2つの技術から構成されます。
マスクに刻まれた凹パターンによって、最適なレジスト塗布分布が異なるため、さまざまなケースを想定した独自のアルゴリズムを開発しました。例えば、マスクをレジストに押し付けた際、パターンの凹部にレジストが入り込む際の挙動や、高速に入り込むために必要な条件などを算出。レジストが移動しやすい凹部の隙間方向ではレジストの配置間隔を広げる、凹部が多い部分はより多くのレジストを配置する。このようにパターンの凹部の向きや、密度に応じたレジストの塗布分布が生成されます(図)。さらに、最適な塗布分布に従って正確にレジストを塗布するために、レジストを吐出する複数のノズルの状態・挙動を個別に管理し、制御・調整します。キヤノンがインクジェット技術で培った計測や制御技術等を応用し、正確な塗布を実現しています。

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図:回路パターンのCAD情報と、生成したレジストの配置パターン

液滴の精密なコントロールが必要な「塗布」(10秒)

NILに最適なレジスト材料の技術

NIL装置の性能向上に貢献

従来の投影型露光装置とは異なり、NIL装置はレジストがマスクに直接触れ、マスクとレジストが相互作用するという特徴があります。このため、レジスト材料はインプリント性能に強く影響を与える最も重要な要素の1つです。
マスクに刻まれた凹パターンへの充填速度、UV光照射時の硬化速度、マスクを引き離す際に発生する離型力に対する形状保持力、耐久性など、レジスト材料に要求される性能は多種多彩で、開発には非常に時間がかかります。
一般的には、ある性能を向上させるために材料の組成を変更すると、他の性能も影響を受けます。組成設計にあたっては、一般的には多くの性能をバランスよく満たす最適設計を行いますが、新しい発想で一挙に課題を解決することもあります。キヤノンにおいて、レジストのウエハーに対する濡れ性を向上させることで、離型力に影響を与えずに充填速度の大幅な向上を実現しました。

インプリントによるnmレベルの位置合わせ技術

キヤノンが培った光学、制御技術をベースに装置性能を大幅に向上

半導体チップは、複数のパターン層を積み重ねて製造するため、下の層のパターンに対して高精度に位置合わせをする必要があります。NIL装置では転写するパターンサイズ10数nm(※)に対して、数nmレベルの位置合わせ精度が要求されます。

  • (※)nm
    ナノメートル、10億分の1メートル

高精度の位置ずれ計測を可能にするため、キヤノンは、マスクとウエハーの位置関係をリアルタイムで計測できる仕組みを開発しました(図1)。位置ずれを計測するために最適な「モアレ像」を用い、これまで培った光学技術やキヤノンナノテクノロジーズ(CNT)と共同で開発した制御技術によって、マスクとウエハーの位置ずれを1nm以下の精度で計測し、補正することができるようになりました。
高精度に位置ずれ情報を計測する技術とともに重要なのは、下層パターンに位置を合わせるマッチング技術です。キヤノンは、レーザー照射でウエハーを熱変形させ位置を合わせる独自のマッチングシステムをNIL装置のために開発しました。(図2)。DMDという微細なミラー群を制御することで入熱パターンを変化させ、ウエハーを自在に熱変形させることに成功しました。ウエハーの熱変形は、外乱となり、位置合わせ精度を悪化させるという常識にとらわれず、逆転の発想で位置合わせに応用しました(図3)。キヤノンが培ってきた光学や制御技術をベースにNIL装置に適した技術を開発することで、インプリントにおいてもnmレベルの位置合わせを実現しています。

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図1:マスクとウエハーの位置関係をリアルタイムで計測できるTTMスコープ

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図2:独自のマッチングシステム

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図3:ウエハー温度と変形後の形状

回路パターンを正確に転写する「重ね合わせ」(33秒)

パーティクル制御技術

クリーンなリソグラフィ装置の実現

パーティクルとは微粒子異物を指しますが、半導体業界では不良デバイス発生の原因の1つとなるため、昔から厄介なものとされていました。NILは、ウエハー上にマスクを接触させてパターンを形成する方式であるため、パーティクルの管理は非常に重要です。ウエハー上にマスクを接触させる際、間にパーティクルが挟まると、不良デバイスとなってしまうのはもちろん、マスク側のパターンを破壊してしまう可能性もあります。
キヤノンでは、NIL装置の開発にあたり初期段階から「パーティクルの撲滅」を最優先のテーマとして長期間検討を進めました。超高性能フィルターを用いたパーティクルの除去、複雑かつ可動部の多い装置内でも淀みなくエアーを流す設計技術を活用した超高性能フィルター(図1)、万が一パーティクルが装置内部に入った場合に備えたパーティクル除去ユニットやクリーン化のレベルをエリア別に分け最重要エリアを局所的に超クリーン環境にするエアーカーテン(図2)などの技術を開発し装置内に実装してきました。
これらの技術開発により、NIL装置は世界最高レベルのクリーン度を実現したリソグラフィ装置です。

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図1:超高性能フィルター

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図2:エアーカーテン

異文化からシナジーを

キヤノンはナノインプリントリソグラフィの分野において、世界最先端でかつ唯一の微細加工デバイス向けの技術を持つ米国キヤノンナノテクノロジーズ(CNT)と協業しています。半導体露光装置の開発で培った露光装置の制御や計測技術に加え、サービスやサポートのノウハウを、CNTが持つ最先端ナノインプリントリソグラフィ技術と融合させることにより、限界を迎えたといわれた微細化の壁を乗り越えようとしています。

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