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次世代HDR技術 次世代HDR技術

次世代HDR技術

カメラの本領が発揮できる時代が到来

今や一般語として使われるようになったHDR(ハイダイナミックレンジ)。明るい部分が白く飛んでしまったり、暗い部分が黒くつぶれてしまったりすることなく、肉眼で見たように表現する技術です。これまでは連写した3枚の写真のいいところどりをして画像合成し、表示する方法などが一般的でした。キヤノンが実現するのは、これまでのHDRよりも、撮影者が現場で目にした臨場感を表現する「次世代HDR技術」。カメラが本来とりこんでいた光を生かし、限りなくリアルに記録し、表示し、プリントする、いまの「常識」を変える技術です。

2019/12/5技術紹介

#イメージング技術#電気工学#情報工学

まるでその場で見ているようなリアリティを表現

デジタルカメラが一般に使われるようになってから20年以上の月日が経ち、映像入力機器としてのデジタルカメラは、より幅広い光の情報を記録できるよう進化しました。しかし、以前のPCモニターなどのディスプレイやプリンターなどの出力機器には表現力に限界があり、ユーザーが目で見た世界を十分に伝えきれていませんでした。

近年、ディスプレイの進化により、動画においては、輝度差の大きな撮影映像データを表現できるHDRの普及が進んでいます。

映像技術のリーディング企業としてキヤノンでは、ディスプレイやプリントにおいて、カメラで記録されたさまざまな明るさ(輝度情報)、色情報の再現性を向上することで、実物さながらのイメージを写真に記録し、それを表示することができる次世代HDR技術を開発し、これまでになかった新しい表現の可能性を拡げています。

RAWデータ本来の情報をフル活用

現在のカメラは逆光など、被写体のダイナミックレンジ(明るい部分と暗い部分の輝度差の幅)が大きなシーンにおいてもその輝度情報の大部分を一枚の画像データに記録することが可能です。しかし、従来は、画像データを表示する際にSDR(Standard Dynamic Range)と呼ばれる狭いダイナミックレンジしか扱う事のできないフォーマットが使用されてきました。

カメラがどんなに高性能化し、広いダイナミックレンジを記録できるようになっても、SDRフォーマットに変換して表示をしてしまってはカメラの性能をフルに発揮することはできなかったのです。スマートフォンなどでは、撮影時に明るさの設定を変えた複数枚(通常3枚)の写真を撮影し、それを合成するHDR手法が使われてきました。しかし、これはSDRフォーマットで撮った写真の組み合わせを、出力デバイスにあわせて狭いダイナミックレンジの範囲に階調(色の濃淡や光の明るさ)を無理やり押し込むために不自然な仕上がりになりがちで、さらに動く被写体への適用も困難でした。

それに対して、キヤノンの次世代HDR技術では撮影時に得られた広いダイナミックレンジの元データ(RAW)をHDR対応フォーマットで保存。これをHDR対応のディスプレイやHDRプリントで直接表現します。入力から出力までの全工程をHDRでつなげるこの次世代HDRのワークフローではRAWデータが持つ豊富な情報の多くを生かすことで、従来よりも格段に臨場感がある静止画の表現を可能にしました。

従来のSDRのしくみ

次世代HDRが変える常識

いま、ディスプレイの進化などにより映像分野で普及が進んでいるHDRのフォーマットはITU-R BT.2100の「PQ」、「HLG」の2方式があります。キヤノンでも動画映像を扱うカメラやディスプレイは両方の方式に対応しています。一方、静止画におけるキヤノンの次世代HDR技術ではPQ方式を採用することとしました。

PQ方式はピーク輝度を絶対値として定めているため、常に一定の輝度での表示ができます。表示デバイスによってピーク輝度が変動するHLG方式と違い、プロが求める再現性に対応した表現を可能にします。PQ方式の採用により、キヤノンの次世代HDR技術は高い再現性をもった写真編集を実現します。

従来のSDRフォーマットがピーク輝度100nit(cd/m²)と規定されているのに対し、PQ方式の出力レンジはその100倍の10,000nitまで対応できるため、高輝度が表示可能なディスプレイであればデジタルカメラで得たダイナミックレンジを狭めることなく表示が可能です。

  • ※nit(ニット):明るさを表す単位

SDRとHDR-PQの比較

キヤノンの次世代HDRは表示可能な輝度範囲を広げただけでなく、色や階調の再現性も高めることができます。静止画記録のフォーマットは従来の「JPEG」に変わって「HEIF」を採用。JPEGの8bit(256階調)に対しHEIFは10bit(1024階調)以上の画像データを格納でき、色域が非常に大きいrec.2020にも対応します。HEVC(H.265)コーデックも使用可能で、同じ画質のJPEGに比べ、より圧縮効率を高く画像を保管できます。

これにより肉眼で見た情景に限りなく近いリアルな静止画をディスプレイに表示することができるようになりました。

  • ※rec.2020:8Kハイビジョン放送の基準となる色域規格
  • ※HEVC(H.265):国際標準化団体であるITU-Tによって規格化された、最先端の映像圧縮方式
  • ※JPEG:静止画データの圧縮形式の一つ。多少の劣化を伴いながら高い圧縮率で圧縮できる。

HDR方式:ITU-R BT.2100(PQ)
色深度:10bit
カラーサンプリング:4:2:2
色域:BT2020対応
ファイルフォーマット:HEIF
圧縮フォーマット:HEVC(H.265)

次世代HDRの仕様

記憶やレタッチに頼らない本当のリアリティ

キヤノンの次世代HDRワークフローで作られたHDRフォーマットの静止画はまるで肉眼で見たようなリアリティを持つ表現が可能です。これまで、SDRフォーマット画像でも、記憶を頼りに高いレベルのレタッチ(画像修正)技術を駆使して輝度差の大きな表現を作り出すことで、ある程度リアリティを再現することはできましたが、次世代HDRでは記憶やレタッチ技術に頼ることなく誰もが見た目に近い描写をすることができるようになります。

SDR

SDR

SDR

HDR

HDR

HDR

  • ※SDR上で、HDRを模擬しています。

4K HDRリファレンスディスプレイが実力を発揮

次世代HDR技術の開発にあたっては高性能な4K HDRリファレンスディスプレイをキヤノン自ら開発していたことも大きなポイントです。キヤノンが製品化した4K HDRリファレンスディスプレイはHDR規格(ITU-R BT.2100)の基準表示輝度である最大輝度1,000cd/m²以上、最小輝度0.005cd/m²以下をクリア。2019年11月発売のDP-V3120は画面内の「最大/全白輝度」は2000cd/m²、「最小輝度」は0.001cd/m²で、高コントラスト200万:1を実現し、DolbyVision ver.1.3の推奨スペックを全ての項目で達成しています。技術を進化させていく意味でも、カメラの画像を正確に表現できるディスプレイを製品化できていることは、キヤノンのトータルの画作りにとって非常に重要なことです。

キヤノンの4K HDRリファレンスディスプレイ

プリントでもHDR効果を再現

HDR画像をディスプレイに表示する場合はバックライトにより高輝度を表現することが可能になりますが、反射する光で色を表現する「プリント」で輝度の差を再現することは非常に困難です。キヤノンは輝度レンジが狭いプリントにおいてもHDR画像のメリットを生かせるように、従来の単一的なガンマ変換(画像の階調を調節する)方式に変わる新規ダイナミックレンジ圧縮アルゴリズムの開発に取り組みました。

HDRプリントのしくみ

新規ダイナミックレンジ圧縮技術では人間の視覚特性をアルゴリズム化し、撮影画像ごとのダイナミックレンジとプリント用紙ごとのプリントダイナミックレンジの双方の情報を利用。さらに、画像解析技術を取り入れることで画像ごとに最適なガンマ変換カーブ(人間の視覚特性に合った階調)を自動で生成することに成功しました。長年にわたって培ってきた入力、出力機器双方のノウハウをもっているキヤノンならではの技術といえます。

発光により色を表現できるディスプレイと違い、反射する光で色を表現するプリントにおいて、プリントだけで太陽の光のような極めて明るい色から洞窟の中のような極めて暗い色までを表現することは困難でした。しかし、人間の視覚特性を取り入れた階調表現を実現することによって、通常の照明下においても、プリントデータに特別なレタッチをしなくても、実際に目で見ている世界の色味に近いプリントができるようになりました。

HDRプリントにはプロフォトグラファーにも評判の高い「imagePROGRAF PROシリーズ」を使用します。従来のインクは、高輝度な照明下では黒が薄く見えることがあり、ダイナミックレンジの広さを感じることができません。一方、「LUCIA PROインク」は黒の再現性に優れ、高輝度照明下においても黒が薄く見えることなく広いダイナミックレンジを発揮することができます。さらに、HDRプリントは展示場所の照明輝度に適した出力をすることができ(展示照明最適化機能を利用)、展示場所での鑑賞時にHDR画像の高いリアリティを再現するプリントを可能にしています。

展示照明最適化

展示照明最適化

次世代HDRのワークフローに製品が続々と対応

「EOS R」など次世代HDRに対応したカメラであればカメラ内でRAWデータをHDR現像し、HDMIケーブル1本で対応ディスプレイにHDR表示させることができます。また、RAW現像ソフト「Digital Photo Professional(DPP)」を使うことでパソコンでもHDR現像、HDR出力が可能です。さらにカメラとプリンターの連携を高めたプリントソフトウエア「Professional Print & Layout」によりimagePROGRAF PROシリーズプリンターでのHDRプリントもできます。

次世代HDRのワークフロー

次世代HDRのワークフロー

次世代HDRのワークフロー

写真表現の新たな扉を開く次世代HDR

EOSで撮影されたRAWデータには以前のディスプレイやプリントでは表現できなかった膨大な光の情報が入っています。次世代HDR、そしてディスプレイの進化によってようやくカメラの真価が発揮できる環境が整いつつあります。撮影時に目にしたもの、そのままのリアリティを再現し、その場にいなくてもその場にいるような臨場感を写真で表現することができるようになるでしょう。キヤノンでは今後、次世代HDR技術に対応する製品を拡充するとともに、さらに新しい写真表現手法を実現する環境を提案し続けていきます。

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