鳥と親しむトリノート vol.6
奄美・沖縄が世界遺産登録へ
生物多様性を未来に引き継ぐということ
2021年7月更新
日本政府が世界自然遺産に推薦してきた
「奄美大島、徳之島(鹿児島県)、沖縄島北部、西表島(沖縄県)」が、
7月に開催された世界遺産委員会において、
世界自然遺産へ正式登録されることに決定しました。
世界自然遺産とは
世界遺産条約は1972年にユネスコ総会で採択され、日本は1992年にこの条約に締結しました。世界遺産には、(1)文化遺産 (2)自然遺産 (3)複合資産(文化遺産と自然遺産両方の価値を備えるもの)があり、それぞれ、人類全体のための遺産として損傷、破壊等の脅威から守り、次の世代へと引き継いでいこうという目的で、国際的な協力・援助体制が組まれています。これまで登録された日本の自然遺産は、屋久島(1993年)、白神山地(1993年)、知床(2005年)、小笠原諸島(2011年)があり、今回の奄美・沖縄は、自然遺産としては5件目。文化遺産も含めると、日本にとって24件目の世界遺産登録となります。
選ばれた理由は「生物多様性」
世界自然遺産として登録されるためには、以下の3つの基準を満たす必要があります。奄美・沖縄の島々は、世界的に希少な固有種(特定の地域にしか生息・生育していない生物)の生態系が保たれていること、つまり、生物多様性が評価されました。
1. 4つの「評価基準(クライテリア)」(表参照)のうち一つ以上に適合すること。
2.「完全性の条件(顕著な普遍的価値を示すための要素がそろい、適切な面積を有し、開発等の影響を受けず、自然の本来の姿が維持されていること)」を満たすこと。
3. 顕著な普遍的価値を長期的に維持できるように、十分な「保護管理」が行われていること。
(表や基準については環境省サイト「 日本の世界自然遺産 」より引用)
奄美・沖縄における「生物多様性」が育まれた背景
なぜこれらの島々がこれほどまでに「生物多様性」に富んだ地域となったのか、これには、この地域ならではの温暖・多湿な亜熱帯気候という条件だけではなく、琉球列島の成り立ちが深く関係していると言われています。もともとこれらの島々は、ユーラシア大陸の一部であり、大陸と同じ生き物が生息していました。それが大規模な地殻変動により大陸から分離され、生き物は島に隔離された状態となりました。さらに、そこから長い年月をかけて気候変動による分離結合を繰り返す間に、大陸から渡ってきて住みついた生き物が固有の進化を重ね、島のさらなる分離とともに種類が増えたと考えられています。例えば奄美大島と徳之島のみに分布する「アマミノクロウサギ」、西表島のみに分布する「イリオモテヤマネコ」、沖縄島北部のみに分布する「ヤンバルクイナ」などは有名で、いずれも絶滅危惧種です。
4地域の陸域面積は約4万ヘクタールであり、これは日本の国土の0.5%に満たないのですが、そこでは非常に多くの種類の生き物が確認されています。鳥類に関していえば、約400種が生息・生育していると言われていますが、これは、日本全国に生息する鳥類の種数の約60%にあたります。
(環境省サイト「
奄美大島、徳之島、沖縄県北部及び西表島世界自然遺産候補地-推薦地の特徴-
」を参照)
この地域だけに見られる貴重な鳥たちを紹介します
バードブランチプロジェクトではこの地域に住む珍しい鳥たちにも注目してみたいと思います。
この価値を守り、未来に引き継ぐということ
このように、さまざまな条件により貴重な固有種の宝庫となっている奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島は、世界自然遺産に登録されることで、人類共通の財産となります。私たち一人ひとりがその価値を深く理解し、生物多様性保全、固有種の保護のためにどのように行動すべきかを考えていかなければなりません。特に、現地を訪れた際には、貴重な生き物の暮らしを壊さないために以下のことに気を付ける必要があります。今後、もし機会があれば、貴重な生き物を間近で観察し、保護する活動に触れてみるのもいいかもしれませんね!
自然を守るための基本的なマナー
- 動物や植物を採らない、持ち帰らない。
- 野生動物にエサを与えない。
- 外来生物を持ち込まない(靴の裏やタイヤに種がついていることがあります)。
- ごみは持ち帰る。
- 許可された場所や道以外には立ち入らない。
- 自動車やバイクでは、生き物に優しい運転を心がける(道路に出てくることがあります)。
キヤノンの生物多様性保全活動
キヤノンは「 生物多様性保全 」を環境への取り組みの一つとして掲げ、世界各地の拠点で自然保護活動を行っています。その柱のひとつとなっているバードブランチプロジェクトは「鳥は植物、虫、小動物など、地域の生態系ピラミッドの上位に位置する生命の循環のシンボルである」という考えに基づき、野鳥の観察や保護、啓発活動などを通じて、豊かな生態系を保護していくことを目的としてはじまりました。本サイトやTwitterによる情報発信の他、国内外あわせて約50拠点(2020年現在)で社員を中心とした野鳥保護活動を展開しています。より多くの人が、身近な鳥や生き物への関心を寄せ、それをきっかけに、広く「生物多様性保全」への意識を高め、一緒に学び、行動していけるよう、今後も活動を広げていきたいと考えています。
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