メッセージ

「わが社のイノベーションとともにある知財」

キヤノン株式会社
代表取締役会長兼社長 CEO

御手洗 冨士夫

(2021年12月)

キヤノンは、企業DNAとなっている「進取の気性」を常に発揮し、時代の要請に応えるイノベーションによって、成長を続けてきました。1937年にカメラ事業で創業し、1964年には計算機を電子式にした卓上式電子計算機を開発しました。この卓上式電子計算機は、世界で初めてテンキー配列を搭載して小型化を実現し、テンキー配列はその後のデファクトスタンダードとなりました。また、1965年には、キヤノン独自の電子写真技術であるNP方式を完成させ、1977年にはサーマル方式のインクジェット技術を発明して1985年にプリンターとして製品化を実現することで、オフィスの生産性を高め、一般家庭にプリンターを普及させることに貢献しました。そして、現在もなお、デジタル化やIT技術の進展に合わせ、さまざまな分野でイノベーションを起こし続けています。

これを支えてきたのが、知的財産活動です。キヤノンの研究開発部門ではいまでも、「論文を読むなら特許を読め。レポートよりも特許を書け。」と語り継がれ、独自技術を非常に大事にしています。

私自身も、日本政府の掲げる「知的財産立国」の実現のため、2003年に知的財産戦略本部の初代本部員となり、知的財産高等裁判所、法科大学院/知財専門職大学院の設立に携わるなど、キヤノンのみならず、日本の、ひいては世界の産業全体が知財で強くなる未来の実現に力を注いでいます。

キヤノンの企業理念「共生」は、全ての人類が末永くともに生き、ともに働き、幸せに暮らしていける社会を志しています。キヤノンは、イノベーションとその知的財産により、「新たな価値創造、社会課題の解決」に全力で取り組み、理想の社会の実現をめざしてまいります。

「これからの研究開発に向けて」

キヤノン株式会社
代表取締役副社長 CTO

本間 利夫

(2021年12月)

キヤノンは創業以来、独自技術をもとに独創的な商品を開発し、事業の多角化を実現してきました。これを支えてきたのが、商品を生み出す「コアコンピタンス技術」と、技術蓄積のベースとなる「基盤要素技術」、さらにここに、生産・情報システム・知財・品質・デザインなどの商品開発を支える「価値創造基盤技術」を有機的に組み合わせる「コアコンピタンス・マネージメント」という研究開発の仕組みで、その仕組みがキヤノンの大きな強みになっています。

そして、その研究開発の現場では、知財部門のメンバーが技術者と一体となり技術と商品の開発活動を進めています。その中では、技術者が見逃しがちな新たな技術の芽を、知財の専門家の視点で権利化につなげる活動が日々行われ、技術を、そして事業を守るための知財活動が共同で行われています。

一方で、現状では、ニューノーマル社会の実現に向けて、さまざまな社会課題の解決に、技術が複雑に組み合わされるようになり、保有技術がこれまでとは違った技術分野に活用されることも起こっています。これからの研究開発では未来の予測されるニーズに応える技術開発を進めると同時に、開発する技術の活用による新たな事業の創出も考慮し、必要な知財を創出するとともに、知財を使って技術開発や事業の自由度を確保しておく必要があります。そのために、研究開発部門と知財部門との連携を深化させていきます。そして、社会課題の解決並びに未来のニーズに対応したイノベーションを起こし続け、新たな価値を未来社会に提供することをめざしてまいります。

「キヤノン知財の針路」

キヤノン株式会社
顧問

長澤 健一

(2023年4月1日現在)

『キヤノン特許部隊』という我々にとってバイブル的な知財戦略が書かれた本が発刊されたのは2002年です。この本に書かれている時代から徹底されてきたキヤノン知財の二つの原則は、目の前の戦いで「勝つ」ことと、未来を予測して長期的な高い視点を経営に反映させることです。この、一見、時間軸が異なる二つのことを常に意識し、次々と施策を実行することが我々知財部門の役割を果たす基本的な姿勢です。私も、「勝つ」ことのために夢中で仕事をしてきました。

21世紀に入り、「クラウド」という言葉が生まれ、第4次産業革命と言われる時代に対応すべく、世界の名だたるICT企業、クロスインダストリー化に伴う異業種企業との知財問題の解消に取り組んできました。現在は、SDGsなどの社会的ニーズの顕在化、経済安全保障問題、コロナ禍とニューノーマル時代の到来などによる社会の大きな変化が予想されます。したがって、いま行うべきことは大きな変化が予想されるビジネスの兆しを読み取ることでしょう。そのような変化の兆しをいち早く捉え施策を考えて実行することが、知財戦略上極めて重要であることは言を俟たないと思います。しかし、長期戦略に基づき施策を実行し、成就させることは簡単ではありません。社内で意見が食い違うこともありますし、まして、利害が相反する他社と交渉する場合には、決して思い通りにいきません。

そのような施策の成就のために非常に有益なことは、いま、目の前にある係争に「勝ち続ける」ことです。勝ち続けていれば、ビジネスで競合する可能性のある相手は、キヤノンと知財係争を行うことを避けるようになるでしょう。また、「勝ち続ける」ことにより知財部門の社内発言力が増し、そのことが長期的な会社経営を支えることにもつながります。

また、キヤノン知財は、一企業の枠を超え、日本を代表する知財部門として、わが国の産業全体の振興に寄与していく所存です。そして、わが国の産業の振興がわが国の発言力を強め、現在の難しい情勢をグローバルにより良い方向に導くことになると確信しています。

「戦う知財」

キヤノン株式会社
執行役員
知的財産法務本部長

(2023年4月1日現在)

「世界で戦うグローバル知財体制」

キヤノン株式会社
知的財産法務本部 副本部長

池田 敦

(2023年4月1日現在)