知で攻める・知で守る

「戦う知財」

キヤノン株式会社
執行役員
知的財産法務本部長

(2023年4月1日現在)

キヤノンの知財は、常に戦うことによって成長し強化されてきました。
1960年代の米国ゼロックス社との複写機の特許を巡る争いに始まり、競合他社との係争や論争の経験を経て、今日の強大な特許ポートフォリオを形成するにいたりました。キヤノンが業界をリードする企業となっているのも、強い製品やサービスと併せて、強い特許網があることが大きな要因の一つです。

1980年代、キヤノンは、ほかの日本企業同様、米国で数多くの訴訟を受けました。個人発明家による訴訟や、カメラのオートフォーカス技術に関する訴訟が提起されました。キヤノンの強みは、エンジニアと知財メンバーが緊密な信頼関係で結ばれているところにあります。エンジニアと知財メンバーが一致団結して、知恵を出し合うことにより、これら訴訟に対しても非常に有利な条件で和解を引き出すことができました。この時に得た米国の訴訟手続きの知識と経験は、この後に頻発することになる米国における訴訟に存分に生かされました。

1990年代以降、キヤノンは、キヤノンの特許を侵害しているプリンターや複写機の互換消耗品に対して、訴訟や警告などの権利行使を積極的に行うようになりました。訴訟地は日本、米国(連邦裁判所および国際貿易委員会)、ドイツ、イギリス、ロシア、韓国、中国、ブラジルなど全世界にわたり、その件数は200件近くになります。その全てで勝訴または有利な和解を勝ち取っており、キヤノンの特許の強さが証明されています。とりわけ日本と韓国においては、最上級裁判所において後の司法実務の規範となる判例を確立することにも成功しています。

2000年代以降、自らは事業を行わず専ら特許の権利行使によって収益を得ようとするPAE(Patent Assertion Entity)の活動が米国を中心に活発となりました。PAEは事業や製品を有していないため、キヤノンの保有する膨大な特許も対抗手段として使えません。しかし、そのような訴訟であっても、キヤノンは安易に相手の要求に応じるようなことはせず、エンジニアと知財メンバーの緊密な協力や過去の米国訴訟で得た知識と経験に基づき、あらゆる手段を用いて対抗します。2012年にPAEから提起された訴訟では、ほかの被告が続々と和解していく中、残された一社となったキヤノンは、6年間の訴訟を戦い抜き、最終的にPAEの主張を退けました。

このような活動を支えてきたのは、キヤノン知財メンバーの間に脈々と受け継がれているDNAです。目的を達成するために、メンバー数百名の総力を挙げ、絶対に諦めず、取り得る手段は全て取る。という「戦う知財」を体現する姿がここにあります。

特許侵害品との戦い

キヤノンは、自社で開発した独自技術に関して特許を取得し、強い特許網を構築しています。そして、国・地域によらず、他者による特許侵害を発見した場合には、特許侵害訴訟を提起する、Eコマースプラットフォームを利用した侵害品の取り下げを行うなど、特許侵害に対して権利行使を行ってきました。

今後も優れた製品・サービスの研究開発・市場導入を続けられるように、社内外を問わず、世界各地の協力者とともに、特許侵害への断固たる対応を行っていきます。

最近の特許権利行使活動については、以下の「関連NEWS」をご覧ください。

関連NEWS

模倣品の撲滅

模倣品はブランドを傷つけるものであり、キヤノンブランドを信頼して製品を購入したお客さまに対して、故障や品質不良などの経済的損失をもたらし、さらには身体に危険を及ぼす可能性もあるため、決して見逃すことはできません。

キヤノンでは、商標「Canon」を全世界およそ190の国と地域で登録し、キヤノンを装った模倣品がどこで出現しても商標権を行使して取り締まることができる体制を整備しています。さらに、日本、アメリカ、イギリス、中国、シンガポール、インドおよびオーストラリアの担当チームが各地の法律事務所、調査会社、取り締まり機関、Eコマースプラットフォームなどと密接に連携し、模倣品を市場から排除するための活動をグローバルに展開しています。

模倣品の製造拠点や販売店の摘発、水際での差し止め、インターネット上からの削除、そして消費者への啓発活動まで、製造・販売・使用という模倣品のライフサイクルの全てのステージで対策を講じることで、キヤノンは、模倣品を作らせない、売らせない、買わせない、使わせない環境づくりをめざしています。

関連NEWS

純正品と模倣品

キヤノン製品を装う模倣品の種類は多岐にわたりますが、その中でも特に被害が大きいのがデジタルカメラ用のバッテリーとバッテリーチャージャー、そして複写機やプリンター用の消耗品(トナーとインク)です。純正品と模倣品を比較すると、見た目ではなかなか区別がつきません。しかし多くの場合、模倣品は純正品に比べ品質が大きく劣り、またキヤノンが定める安全基準を満たしていません。

  • バッテリー
    純正品|模倣品
  • インクボトル
    純正品|模倣品
  • トナーカートリッジ
    純正品|模倣品
  • レンズ
    純正品|模倣品
  • フラッシュ
    純正品|模倣品

キヤノンでは、純正品と模倣品を識別するためのツールとして、被害の大きいバッテリー、トナーカートリッジ、インクボトルなどの製品個装箱にセキュリティラベルを貼付して、お客さまに注意喚起をしています。

セキュリティラベルの例純正品に貼付されたセキュリティラベルには顕著な色の変化が見られます。

模倣品対策

  • 市場対策
  • 水際対策
  • Eコマース対策
市場で摘発および押収を行った国と地域

キヤノンは、製造者から卸売業者、小売業者、倉庫業者まで、模倣品流通網をくまなく調査し、通報することで、警察や行政当局による模倣品業者の摘発に協力し、模倣品を市場から排除しています。対策は一つの市場だけではなく、複数にまたがることもあります。キヤノンは、ある国における調査・摘発を通じて他国の製造元や供給元の情報が得られた場合には、その国においても調査・摘発を実施し、模倣品の流通を上流で止めるクロスボーダー対策にも注力しています。これまでに市場対策を行った国や地域は、約60に上ります。

  • トナーカートリッジ
  • トナーボトル
  • バッテリー
  • インクボトル
税関に商標登録および研修を行った国と地域

キヤノンは水際対策にも注力しており、各国/地域の制度にしたがって税関に協力し、模倣品の輸出と輸入を未然に防いでいます。水際で模倣品を差し止めるために、約60の国と地域の税関に商標「Canon」を登録し、世界中の税関職員に対し純正品と模倣品の識別方法を習得していただくための真贋判定の研修を実施しています。これまで、約90の国と地域で税関登録や真贋判定研修を実施し、税関との連携を図っています。

  • 税関差し止めの事例

  • 税関研修の事例

出品削除の申し立てを行った国と地域

キヤノンは、世界中の約80のEコマースサイトをモニタリングし、模倣品の出品が確認されれば、出品削除や出店取消の申し立てをサイトに対し行っています。調査によりEコマース販売者の活動拠点を特定できた場合には、摘発をすることもあります。さらに、Eコマースサイトと連携し、知的財産保護プログラムの強化や模倣品の発見・削除の効率化にも積極的に取り組んでいます。

  • モニタリング
  • Amazonとの意見交換
  • AACA*会合

* Alibaba Anti-Counterfeiting Alliance

啓発活動

模倣品を撲滅するためには、市場での摘発や税関での差し止めなどの取り締まりだけではなく、模倣品問題について、お客さまに関心をもっていただき理解を深めていただくことも大切と考えています。そのためキヤノンでは、模倣品の使用による故障などの経済的損失、事故による身体への危険性、そして知的財産保護の重要性について、お客さまに積極的に周知しています。

  • パンフレット
  • 学校教育
  • ビデオ
  • ショールーム

団体活動とロビーイング

キヤノングループでは、官民合同プロジェクト、業界団体、知的財産関連団体などの活動を通じて、模倣品問題の改善に向けた政府機関、国際機関、Eコマースサイトなどとの協力関係構築を推進するとともに、積極的に権利者としての意見を発信しています。
模倣品がボーダーレスに流通し、その手口もますます巧妙化している状況下では、どんなに対策を講じても一企業の力だけで模倣品を防ぎ切ることは不可能です。
企業が集結し、関係機関やEコマースサイトと協力して模倣品の流通を食い止めることこそが、その排除への大きな力になるとキヤノンは考えています。

  • CIPIC 知的財産情報センター
  • ICE 20YEARS
  • IiPF
  • ISC COALITION
  • QBPC
  • React
  • TAC
  • TIPA

各地における模倣品対策活動

模倣品対策に関するキヤノングループ各社の関連リンクを紹介します。