ものづくりとは

世の中に必要とされる高度な製品をつくりあげ、お客さまのもとに届け、さらにリサイクルに至る「ものづくり」。製品開発やデザインに始まり、調達、加工・生産、輸送、リサイクルに至る工程には、熟練の技能、知識、ノウハウが詰め込まれています。
開発・設計やデザインのみを自社で行い、生産は外部に委託する会社も多い中、キヤノンはものづくりにこだわり、ものづくりを追求しているからこその高い性能・品質の製品を世の中に送り出しています。
さらに、自動化をすすめるにあたっても、何年もの経験から得られたノウハウ、改善の知恵を入れ込み、ものづくりの進化をリードしています。

製品開発

製品開発には、工程として製品(商品)企画、設計、試作、品質検証などがあります。お客さまが何を求めているのかを調査・分析しながら、自社の得意技術を使って、どのような機能の製品にするかの「企画」、製品に求められる機能や性能を実現するために必要な構造や部品1つ1つの図面を作る「設計」、さらに、図面通りに実際に部品を作って組み立て、思った通りに動くか試す「試作」、試作品をテストし、不具合や耐久性を調べる「品質保証」を経て、工程は製品開発から生産段階へと移っていきます。もちろん全く新しい機能や性能を製品に入れ込みたい場合、それを実現するしくみや構造といった「要素技術」の開発、部品1つ1つにふさわしい性質を持つ材料の開発が必要になることも少なくありません。

3D-CADを使ったレンズの光学設計

CMOSセンサーの開発

キヤノンは技術によって社会を便利に、豊かに、快適にするという「技術優先」の考え方を元に製品開発を行っています。設計はすべてデジタル化し、コンピューターを使う3D-CAD(Computer-aided design)で行います。シミュレーション技術を独自に開発し、例えばプリンターのインクの飛び方や紙の送られる様子なども試作することなく確かめることを可能にしています。他にも、製品が動く時に発生する熱の伝わり方や落下時の強度確認などもシミュレーションで検証します。コンピューター上であらゆる角度から開発の検証を行い、試作の回数の削減を推進して、開発スピードの向上と品質の確保を両立させています。さらに設計段階から自動化装置で生産しやすいような設計を行う一方、技術のキーとなる部品である、キーパーツの多くを独自開発しています。また、設計した部品1つ1つが地球環境に与える影響などもわかるようになっています。
研究開発で生み出した技術を特許として守る「知的財産活動」にも力を入れ、その結果として米国特許登録件数は35年連続で世界5位以内を獲得しています。

プリンターの落下衝撃シミュレーション(20秒)

デザイン

製品の形や色、操作画面のレイアウト、使いやすさなど、デザインは製品やブランドの印象を左右する大切な要素です。デザイナーは製品開発部門と力を合わせながら、性能が発揮しやすく、使いやすいデザインを決めていきます。また、使う人だけでなく、作り手にとって作りやすいことも求められるため、生産部門との連携も大切です。

カメラのデザイン試作

眼科機器のデザイン検証

キヤノンは、カメラやプリンター、あるいは医療機器や産業機器など幅広い製品をもち、デザインに求められる役割もさまざまですが、一貫して大切にしていることは「使う人のためのデザインを追求すること」です。お客さまへのインタビューや行動観察から使い勝手などの課題を見つけることから始まり、多くのアイデアをスケッチや試作などの「カタチ」にしてそのアイデアが課題を解決するかどうかの検証を繰り返し理想の「カタチ」へと近づけていきます。さらに、完成したデザインは、生産部門と連携して質感の表現や効率的な生産方法などにも工夫をこらすことで、製品として完成していきます。

工程設計

製品の設計が完成したら、実際に製品ができあがるまでのプロセス工程を設計します。どのような方法や順番でつくるのか、生産に必要なリソース(設備や人)は何かなどを決めながら、準備にどれほどお金がかかるのか(投資額)、いくらで作れるか(原価率)、何日で作るのか(納期)なども計算します。

綿密に工程設計された複合機のセル生産

機械を使う工程においても安全性を考慮して設計

キヤノンでは、EQCD(環境負荷:Environment、品質:Quality、コスト:Cost、納期:Delivery)を重視した工程設計を行っています。さらに作る人の安全や効率を考慮して、機械でつくったほうが良いのか、人が作ったほうが良いのかなどのバランスを考えながら、生産に必要な手順、設備、時間、人数を割り出して工数設計書を作っています。工程設計は、経験や技術などメーカーのノウハウが集まる工程で、ものづくりを追求してきたキヤノンの得意分野となっています。

生産

部品の原材料の調達・生産に始まり、部品の加工・生産、製品を作り上げる「組み立て」、品質検査といった、ものづくりのメインとなる工程です。
高度の技術が積み込まれた製品の生産には、装置や人の熟練した技術が必要です。例えば、生産装置には、原材料をつくるプラント(いくつかの機械や装置を組み合わせた設備)、溶かした金属や樹脂を金型の中に流し込んで部品をつくる成形機、加工や組み立てを行う自動機、不良品を見つける検査機などがあります。そして、高い精度で製品や部品をつくる人の技能、高い組み立て能力をもった人や生産装置を自在に操る人のノウハウなどが発揮され、優れた製品が生み出されます。

キヤノンでは、チーム単位で製品の組み立てを完成させる、「セル生産」方式で生産を行っています。セル生産方式はロボットが担当する工程と組み合わせた「マンマシンセル」へと進化する一方、1人で数百ページにも及ぶ作業マニュアルをマスターした「マイスター」を生み出し、ものづくりの進化に貢献しています。また、生産の現場で働く人自らが創意工夫で低コストの道具や工具を作る「知恵テク」が、生産の効率の向上に大きな役割を果たしています。さらに、レンズの研磨や金型の制作などノウハウが欠かせない分野では、熟練した技能をもつ「名匠」が活躍。名匠は若手を育成し、ものづくり技術の継承を図っています。
製品の中で重要な役割をこなす部品「キーパーツ」の内製化を行っていることもキヤノンの特徴の1つです。材料の加工の仕方や生産装置も独自に開発するとともに、内製化する部品や装置をさらに増やしています。また一方で注力しているのは、「生産の完全自動化」です。ノンストップで稼働する自動化生産ラインの取り組みをすすめ、加工や梱包、搬送、検査など自動化の範囲を拡げ、自動組立機も内製化して推進。世界的なトレンドになっている自動工場の試みに先駆け、信頼性の高い製品を安定的に生産することをめざしています。

キヤノンプラチンブリタイランドにおけるセル生産

人とロボットが協調して生産を行う「マンマシンセル」

重いユニットを簡単に運搬できるようにした知恵テク

輸送

完成した製品は、品質に影響を与えないように安全第一で輸送されます。納期やコスト、環境負荷などを検討し、船便や航空便、鉄道便やトラック便などあらゆる輸送手段の中から、最適な手段・経路を選定し、製品は工場から販売会社の倉庫を通じて販売店、そしてお客さまに届けられます。また、完成した製品のほかにも、原材料や部品を工場へと運ぶ輸送も、ものづくりにとって大事な工程になります。

船便での輸送

鉄道便での輸送

キヤノンにはカメラのような小さなものから、半導体露光装置のような巨大なものまで、多種多様な製品があります。ロジスティクス担当部門は、製品のサイズや特徴、販売の方法に合わせた最適な輸送方法を追求し、日々刻々と変わる物流状況を見極めながら、必要な時に必要な数を、安全に確実に世界中の届け先へと輸送しています。
輸送では環境面への配慮を考えることも大切なポイントになります。キヤノンは、トラック輸送を鉄道や船舶に変える「モーダルシフト」やほかの企業との共同配送も推進しています。また、キヤノンの工場で使用される部品の輸送についても、部品の調達先がそれぞれ納品に来るのではなく調達先を回って部品を集めるミルクランと呼ばれる方式を採用するなど、環境への配慮と効率を考えた輸送を行っています。

販売・サービス・回収・リサイクル

製品の販売やその後のサービスにいたるまで、お客さまへ製品を確実にお届けし、快適に使用いただき、メーカーとしてのものづくりが完了します。使い終わった製品は、回収リサイクルができるものは回収ルートへと送られ、製品は一生(ライフサイクル)を終えていきます。

キヤノンUSAにおけるカスタマーサービス

リマニュファクチュアリングのために集められた使用済みオフィス向け複合機

お客さまから回収されたトナーカートリッジ

キヤノンは、世界各地に販売拠点をもち、小売店やECサイト、代理店などを通じて製品を販売。そして、それぞれの地域の事情に合わせて、お客さまに寄り添ったサービスやサポートを行っています。また、医療機器や産業機器など、製品によってはキヤノンが直接販売・サービスを行っています。
一方、使用後の製品については、トナーカートリッジやインクカートリッジなどの消耗品の回収ルートを自ら整備して回収・リサイクルを実施しているほか、オフィス向け複合機を回収、部品レベルに分解し、部品を洗浄・清掃して再使用し、必要な部品は取り替えて再生するリマニュファクチュアリングと呼ばれるものづくりも行っています。