キヤノンでは、ものづくりにおける秀でたスペシャリストを「名匠」「マイスター」という称号で呼び、ものづくりをリードする人材として育成しています。熟練の必要な技能を磨き、他に真似できない優れたものづくりができるレベルに達した人を「キヤノンの名匠」、数多くの工程をこなす技量と知識をもつ人を「マイスター」として認定。生産の自動化を推進する中でも、将来のものづくりを支える人材が、キヤノンのものづくりの追求を支えています。
キヤノンでは、ものづくりにおける秀でたスペシャリストを「名匠」「マイスター」という称号で呼び、ものづくりをリードする人材として育成しています。熟練の必要な技能を磨き、他に真似できない優れたものづくりができるレベルに達した人を「キヤノンの名匠」、数多くの工程をこなす技量と知識をもつ人を「マイスター」として認定。生産の自動化を推進する中でも、将来のものづくりを支える人材が、キヤノンのものづくりの追求を支えています。
レンズ研磨の名匠(宇都宮光機工場)
「キヤノンの名匠」認定制度は、キヤノンのものづくりに必要な、高度な技能を次の世代に伝えるとともに、技能レベルを向上させるための制度です。
フライス盤、旋盤、研削盤、レンズ研磨、塗装、溶接など熟練した技能が不可欠な分野において、他の人には代わることのできない、卓越した技能を持ち、指導力や人格においても模範となる人材が「キヤノンの名匠」に認定されます。
技能分野名称 | 内容 |
---|---|
フライス盤 | フライスやエンドミドルと呼ばれる工具(刃物)を回し、平面や溝などの加工を行う工作機械「フライス盤」による、角材など四角形状の工作物の加工を精密に行う技能 |
旋盤 | バイトと呼ばれる工具を回転している工作物に当て、バイトを移動させることで丸物の外形や穴あけなどの加工を行う工作機「旋盤」による、円筒状の工作物の加工を精密に行う技能 |
研削盤 | 高速回転する砥石を押しあて、工作物の表面を削る工作機械「研削盤」による、金属などの材料の表面を精密に削る技能 |
レンズ研磨 | 研磨皿を回転・摺動させながら、レンズの表面を所定の形状・制度に磨き上げる技能 |
塗装 | さまざまな材質の塗料を調合し、金属・プラスチックなどさまざまな工作物に、むらなく塗る技能 |
溶接 | 金属製品などのつなぎ部分に高熱を加えることで、複数の工作物を1つにする技能 |
キヤノンで継承されている技能分野の例
キヤノンの名匠とは、次のように定義しています。
卓越した技能とは、五感を使ったり、機械の性能を十二分に発揮させ、高精度・短手番(高効率)で加工できる技能のことをいいます。
例えば、金属加工の分野の名匠は、金属の塊をミクロン(1,000分の1ミリ)、サブミクロン(10,000分の1ミリ)単位の精度で、複雑な形状加工を行うことが求められます。さらに、キヤノンの名匠には、国家技能検定1級相当以上の認定・取得や各都道府県の卓越技能者に認定されてはじめて、選考の候補になることができるなど、厳しい基準が設けられています。
キヤノンの名匠は、国からも高い評価を受けることが多く、厚生労働省から表彰される「卓越した技能者(現代の名工)」や、業務に精励し模範となるような技術を持つ人に授与される「黄綬褒章」の受章者も多く誕生しています。
キヤノンの名匠、技能者の等級
高い技能と模範となる人格・指導力をもつ名匠には、
という大きく3つの役割があります。
重要な役割である後進への技能の伝承を行うためにも、継承者を育成できる指導力は名匠における大事な素質です。技能をもっているだけでなく、教育・指導ができなければキヤノンの名匠にはなることができません。
A級技能者に技能を伝承するキヤノンの名匠(宇都宮光機工場)
キヤノンの名匠は、社内評価でA級技能者に認定されている人の中から継承者を指名し、技能を伝承していきます。
交換レンズの生産を行うS級マイスター(宇都宮工場)
キヤノンの製品の多くは、いくつもの複雑な工程を経て、作り出されています。
キヤノンは、多くの工程を担う「多能工」で、生産性を向上する力を持つ優秀な人材を、ドイツの制度から名前を取って、「マイスター」として認定しています。
マイスターは、一人でこなすことのできる工程の数、専門知識、作業速度、およびその技能と知識を活かしてものづくりの進化に貢献した実績などが評価され、認定されます。
マイスターの認定は、キヤノングループ全体として認定される全社S級と1級のマイスターと、生産拠点ごとに認定される地区マイスターがあります。
マイスターは、地区マイスターからスタートし、全社マイスター1級、そして全社マイスターS級へとステップアップしていきます。
キヤノンのマイスター認定等級
1級とS級の全社マイスターは、全社マイスター表彰委員会と呼ばれる社内の専門機関による審査で認定されます。
例えば、最高位のS級に認定された組立のマイスターには、3000点以上の複写機の部品を記憶して、1人で全ての組立ができる人材もいます。
また、装置で組立を行う自動組立のS級のマイスターには、60工程以上の作業や装置の調整を行うだけでなく、装置を改良できる人材もいます。
S級の認定は、1年のうち1~2人ととても少なく、職場で頼りにされるだけでなく、後進技能者の憧れの存在にもなっています。
自動組立のS級マイスター(福島キヤノン)
マイスターには、生産活動に加えて、ものづくりの進化への貢献が求められます。
トラブルの原因の究明や最適な生産プロセスの提案、作業をより簡単にする方法などを考えるのもマイスターの役割です。
トラブルが発生した時の原因をこれまでの知識や経験から特定し、2度目が起こらないような対策づくりを手助けしたり、設計や開発にさかのぼってフィードバックをするなど、ものづくりの工程全体を良くする取り組みを行っています。
また、マイスターにおいても、後進技能者の育成は重要な任務です。教育の計画や進捗の管理をマイスターが担い、次の多能工人材を育てていきます。
組立の職場でアドバイスするS級マイスター(宇都宮工場)