内製化とは
社外にお願いしていた作業や業務を、自分たちで行うことを「内製化」といいます。
社外に委託するケースとしては、一般的にコストが安い場合や自社では人員や設備、技術、ノウハウといった「経営資源」が足りない場合などがあげられます。
一方キヤノンでは、内製化を、技術によって差別化された付加価値の高い独創的な製品やサービスを生み出すために必要な要素として捉え、グループ全社をあげて推進しています。内製化は、技術力やノウハウを積み上げることができ、製品開発期間の短縮、コストダウン、品質の確保・向上、そして企業機密の防衛にもつながります。しかし、全てを内製化すればいいというわけではありません。「差別化」「コストダウン」「品質」などの観点から内製すべき範囲を見極め、内製化を進めています。
ものづくりの進化が止まれば、モノの進化も止まる
キヤノンでは、製品の性能を左右する「キーパーツ」の加工プロセス技術を独自に開発し、その生産にいたるまでを内製化しています。
独創的なキーパーツの代表のひとつがレンズです。カメラの超望遠レンズや業務用放送レンズ、さらに半導体露光装置の中に使われる高精度な非球面レンズを生み出すのは、ガラス材料を削り、磨いて狙った精度を出す研削・研磨技術です。表面の凹凸はナノオーダーレベルという圧倒的な高精度を実現しています。高い精度のレンズ加工には、キヤノンが求めるレベルの生産装置が世の中にないため、加工・計測装置を自社で作っています。また、その高い技術力が評価され、国立天文台のすばる望遠鏡のレンズ加工にも採用されています。経験とノウハウが必要なレンズ作りを技術へと進化させ独創的で競争力のあるレンズ製品を生み出し続けています。
宇都宮光機工場で作られたすばる望遠鏡の主焦点カメラ用補正光学系のレンズ
誰も作ってないから、自社で作る
オフィス向け複合機やレーザープリンターで核となる「電子写真技術」も技術とノウハウのかたまりです。トナーと呼ばれる粉状インクを紙に転写したり、紙を一枚ずつ高速で正確なプリント位置に送り込んだりするために、複合機やプリンター内部では、帯電ローラー、現像ローラー、転写ローラー、クリーニングブレード、転写ベルト、定着ベルトなど、さまざまなキーパーツが高速・高精度に作動することで、はじめて印刷が可能になります。キヤノンでは、プリンターのしくみに精通したプロセスエンジニアたちが、製品が作動する各プロセスでどのような物理現象が生じているかを詳細に解析し、キーパーツに必要とされる特性を徹底的に見極めた上で、材料から独自開発し、内製化を行っています。
樹脂、ゴムなどの原材料を、化学反応、変性、ブレンドなどのさまざまな手法を使って各キーパーツに最適な素材へと加工し、さらにローラー、ブレード、ベルトの形状に仕上げる成形プロセスを工夫して、唯一無二の高性能コンポーネントとして完成させています。レンズ加工技術や電子写真のプロセス技術などは、一朝一夕で作り出せるものではありません。このような差別化技術への拘りがキヤノンの内製化の原点となっています。
レーザープリンター主な内製キーパーツ