試作仮想化技術

キヤノンでは、製品開発において問題となる現象のメカニズムを解明し、シミュレーションモデルや設計ルールに置き換えています。これらをもとにComputer Aided Engineering(CAE)やComputer Aided Design(CAD)のツールを独自に開発し、高度に活用するノウハウを蓄積してきました。それがキヤノン内で「試作仮想化技術」として体系化され、設計現場で有効に利用されて手戻り時間やコストを大幅に削減しつつ、ブランドを支える高い品質の製品を生み続けることを可能にしています。

たとえば、プリンターの開発においては、紙の搬送時に起こるさまざまな問題を解決しなければなりません。キヤノンでは、紙詰まりや紙しわ、斜行などの問題を計算機上で確認し解決策の検討まで行える独自のシミュレーターを開発し、試作機に頼らない設計が可能となっています。また、従来は落下や衝突時の部品破損は試作機が完成してから試験を行うため、一旦問題が起こると設計終盤での見直しが必要となり、開発期間遅延の原因となっていました。

紙搬送シミュレーション:
紙にかかる力と紙しわ発生の有無を確認可能

そこでキヤノンでは、落下時に起こる変形や破損、外れなどの問題が発生するかをシミュレーションすることで、設計の早い段階での検証を可能にし、開発期間の短縮に役立てています。一方、これらの高機能シミュレーションを実現するには超大規模な計算が必要となり、従来の計算機環境では計算が不可能でした。キヤノンは、これを解消するため2021年に世界最速のスーパーコンピューター「富岳」の商用機を一般企業としていち早く導入。大規模なシミュレーション計算をより速く、より多く実行できる環境が整い、試作仮想化技術の活用が各事業で加速しています。

落下衝撃シミュレーション:
複合機落下時の各部に働く力や破損の有無を確認可能