産業機器が実現する社会
ナノインプリントが開く、
近未来デジタル社会のとびら
半導体メモリーの最先端を走るキオクシア四日市工場では、キヤノンの「ナノインプリント」技術を応用した半導体デバイスの量産化に向けた検証が進められています。半導体メモリーは回路パターンの線幅を微細化することで、その性能や記憶容量を飛躍的に高めてきましたが近年では、これまでの光による回路パターンの製造プロセスは限界に達したといわれています。
キヤノンはさらなる微細化の壁を乗り越えるために、ナノインプリントと呼ばれる革新的な技術を応用した半導体製造装置を開発。コンパクトかつ半導体製造コストを大幅に低減できる装置として、開発の行方に注目が集まっています。
ナノインプリント技術で、次世代フラッシュメモリーを生産
あらゆるモノがインターネットにつながるIoT 時代の到来により、さまざまなものに搭載されるセンサーや通信デバイス、データを保存するメモリー、ビッグデータを解析するAI(人工知能)のプロセッサなど、半導体デバイスはこれまで以上に社会にとって不可欠となり、その需要はますます増加しています。
半導体デバイスの進化は、回路の線幅を細くすることで回路パターンの密度を高める「微細化」によって支えられ、半導体露光装置の技術革新が、この微細化や製造コスト削減の鍵をにぎってきました。従来はできるだけ短い波長の光を使う「露光」によって回路パターンの微細化が実現されてきましたが、今後、光のさらなる短波長化は難しく、大きな岐路に立たされています。
キヤノンは、光とレンズで回路パターンを縮小投影する従来の方式に代わり、回路パターンの原版(マスク)をスタンプの要領でウエハー上の樹脂に押しつけ硬化させることで、回路パターンを形成するナノインプリント技術をキヤノンナノテクノロジーズと開発。半導体露光装置の開発で培ってきた制御や計測技術を生かし、高い解像度の回路パターンを忠実に形成することを可能にしました。また、シンプルな原理により、装置自体の小型化も達成しました。
ナノレベルでの欠陥制御技術、重ねあわせ精度の向上、異物の除去技術などを確立したことで、量産化の課題を解決。最新の露光技術EUV(極端紫外線)リソグラフィに比べても、半導体の製造コストを大幅に下げられることから、次世代フラッシュメモリーなどの製造現場での活躍に期待が高まっています。