産業機器が実現する社会
半導体そのものが進化する
半導体生産も大きく進化する
半導体デバイス生産のゲームチェンジャー「ナノインプリント」
いまの便利な生活に欠かせない半導体デバイス。自動運転、メタバース、生成系AIなど、これからの社会を変える技術も半導体デバイスの進化なしには実現できません。半導体ウエハー※1の上に細かな電気回路をくり返し形づくる半導体デバイスの生産においては、ウエハーに塗られた樹脂材料(=レジスト)に回路パターンを描くプロセスが重要です。いまは光をレンズで制御して焼き付ける「露光装置」が主流ですが、デバイスの高性能化のために回路線幅を細くすればするほど、大規模な光源装置などが必要になり、電力消費も莫大になっています。
この半導体生産の考え方そのものを大きく変えると期待されるのがキヤノンのナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術です。超高精細な型(=マスク)をスタンプのようにレジストに押し当てて回路を形づくるシンプルな方式のため、装置は小型化。消費電力も大幅に削減します。
- ※1 薄板状にスライスした半導体
ナノインプリントリソグラフィのプロセス
最先端半導体デバイスだけでなく、ナノレベル3D構造物の作製にも期待
いま、最先端のロジック半導体デバイス※2の製造レベルは5ナノノード※3。最小で14nm(ナノメートル)という回路線幅が求められます。1mmの10億分の1というナノの世界では、微粒子の混入や重ね合わせ精度、マスクをレジストからはがす技術がネックでしたが、キヤノンは半導体製造装置で培った位置合わせ制御技術や計測技術、微粒子の発生や混入を抑制する新技術によって解決。ついに2023年、5ナノノードに対応するナノインプリント半導体製造装置を発売し、従来比10分の1の電力での量産を可能にしました。そして次世代2ナノノードの実現も期待されています。
また、ナノインプリントなら半導体デバイスだけでなく微細で複雑な3D形状も低コストで実現。たとえば、可視光の波長以下の3D構造によって光を制御するフラットレンズも夢ではなく、さまざまな産業で起こるナノインプリントによるブレイクスルーも今後の大きな楽しみです。
- ※2 CPU(中央演算処理装置)など、電子機器の「頭脳」として、データ処理、機器の制御などを行う半導体デバイス
- ※3 半導体製造プロセスの技術世代の呼び名