メディカルが実現する社会
立ったままでのCT検査
健康長寿がさらに進む時代へ
原因がわからなかった痛みの診断が期待される立位CT
脳や心臓をはじめとした全身のさまざまな部位の精密検査で、体内のわずかな変化をとらえ、病気の早期発見に貢献するX線CT(コンピューター断層撮影)装置。ドーナツ形になっている「ガントリ」のなかのX線管と検出器が対になって患者さんの周囲をジェットコースターの8倍にもなるすさまじい重力で回転し、体の断面画像を高精細に撮影します。
そんなCT装置が、いま、さらなる進化を遂げようとしています。それは、患者さんが横たわった状態(臥位)で撮影するという常識をくつがえし、立ったままで撮れる「立位CT」。先端医療をリードする慶應義塾大学病院とCTの歴史を塗り替え続けてきたグループ会社キヤノンメディカルシステムズ(以下、キヤノンメディカル)が共同で開発しました。嚥下(えんげ)※・排尿・歩行など立ったり座ったりして行う活動の異常や、立っている時だけ現れる腰や膝の痛みの原因など、これまで難しかった診断での活用が期待されています。
- ※ 嚥下:食べ物などを飲み込み、口から胃へと運ぶ一連の動作
薬の到達具合もわかるようになる可能性
立位での検査は姿勢が安定せず、長時間撮影では画像がぶれてしまいます。世界で初めて※0.35秒で16cm幅320列を撮影する高速・高精細CTを実現したキヤノンメディカルの技術力に、立位CTの可能性を感じた慶應義塾大学が注目して共同開発が始まりました。すさまじい遠心力がかかっているガントリを上下に移動させながら撮影するという難題もこれまで培った技術の粋を尽くし、解決。立位CTなら靴を脱いで横になる必要がないため、検査時間が短縮できるだけでなく、完全非接触なので感染症リスクの回避にもつながります。
高齢化が進み、健康寿命が重視されるなか、慶應義塾大学病院では、健康に影響する機能の衰えや病気の早期発見、また、臥位との画像比較により、骨盤底筋の緩みや心不全の重症度の判定にも有効とみて臨床研究を進めています。
立位CTの歴史はまだまだ始まったばかりです。健康長寿をめざす社会の期待に応えられるよう、キヤノンは立位CTの可能性を追求し続けます。
- ※ 2018年1月時点(キヤノン調べ)