仕事と人

キヤノンプロダクションプリンティング IPチーム

キヤノンプロダクションプリンティング(Canon Production Printing Netherlands B.V., 以下CPP)は、商業印刷および産業印刷市場向けのハードウェアおよびソフトウェアソリューションを含む、先進的な高速印刷システムの開発を専門とするリーディングカンパニーです。CPPのポートフォリオには、連帳プリンター、カットシートプリンター、大判グラフィックプリンター、包括的なワークフローソリューションといった広範な製品が含まれます。

キヤノンプロダクションプリンティング本社(フェンロー、オランダ)

CPPの本社は、オランダのフェンローのマース川沿いの緑豊かな場所にあります。重要な開発拠点は、本社のあるフェンローに加え、ドイツのポイングおよびルーマニアのティミショアラにもあります。研究開発(R&D)活動はこれら全ての拠点で行われており、拠点間の連携が必要です。拠点間の連携は、複数の拠点にわたる知財部門の活動にも求められます。CPPのIPチームは、CPP内の知財活動に積極的に関与するだけでなく、日本にあるキヤノン(株)の知財部門と緊密に連携しています。

IPチームは、オランダ(CPPN)・ドイツ(CPPG)・ルーマニア(CPPR)のメンバーで構成されています。またIPチームは、特許事務管理、特許情報専門家、特許弁理士などのさまざまな役割を持つメンバーで構成されており、それぞれが独自のスキルと経験を持っています。IPチームのメンバーは、ソフトウェア、ハードウェア、イメージングサプライおよび消耗品など、さまざまな分野を専門としています。複雑な技術的課題が発生した場合には、最も適切な知識と経験を有するメンバーにその課題を割り当て、技術的課題を解決する際の効率性と有効性を最大化しています。

部門メンバーへの投資と継続的な学習の促進は、知財部門の優先事項です。
写真のVignesh Subramanianは、新しいチームメンバーとして特許情報コースを修了しました。

知財戦略

CPPの知財戦略は、CPPの事業戦略と研究開発戦略を支援することを目的としています。CPPの事業戦略を実現するための知財戦略および知財活動を策定するために、IPチームは事業部門(BU)およびR&D部門の双方と緊密に協力しています。たとえば、IPチームはCPPの知財運営委員会において、R&D部門との業務連携を図っています。知財運営委員会では、たとえば、R&Dの開発プログラムや知財ポートフォリオを踏まえて、年間の発明創出件数の目標を決定しています。また、知財戦略と事業戦略との整合については、BU、R&D部門、およびIPチームが参加する知財ポートフォリオ管理委員会で議論されます。知財ポートフォリオ管理委員会では、たとえば新規の事業開発に必要な知財ポートフォリオを決定したり、不要な技術の知財ポートフォリオの放棄を決定したりします。

CPPで約20年の経験を持つIPオペレーション担当DirectorのMark Jettenは、戦略の舵取り、意思決定に関与し、知財部門の貴重な一員です。

知財戦略では主に以下のような項目を扱います。
- 知的財産権の取得とメンテナンス
- 製品の知財クリアランス(権利調査)と競合他社の監視
- 外部関係者との協力に関する組織への助言

知財ポートフォリオマネジメント

知財ポートフォリオマネジメントには、特定のポートフォリオ分野における知的財産権取得の強化と舵取り (事業開発の支援)、および既存の知財ポートフォリオのメンテナンスが含まれます。

知的財産権の取得

知財部門の重要な仕事の一つは、R&Dから生まれた新しい発明を保護することです。IPチームは、通常、発明が記載されたIDFと呼ばれるフォームが提出される前に、発明の内容について発明者と事前協議を行います。発明者は、模型やモックアップを使用してIPチームのメンバーに発明を説明するので、IP チームのメンバーは実施される発明と同じものを見ることができるので、的確に発明を理解することができます。協議の結論として、発明者は、IDF を提出するか否かについて助言を受けます。
IDFを受領したIPチームは、特許出願の適否を調査します。特許性 (新規性・発明性)の評価はIPチームが行い、事業戦略に沿ってCPPの事業・技術に対する発明の価値はIPチームとR&D部門とで協議して決定します。最後に、IPチームは特許出願のための明細書を作成し、特許出願をします。
ビジネスの発展に応じて、IPチームは、R&D部門に対して特定の技術分野、たとえばグリーンテクノロジー(GX) や人工知能(AI) に関する知的財産の創出を強化するように助言します。さらに、IPチームは、R&D部門に対して知的財産に関する研修を行い、R&D部門のメンバーに、研究開発の成果が知的財産保護の対象となる発明になり得ることや、その発明がCPPを競合他社と差別化できるものになり得ることを認識させています。

知的財産権メンテナンス

CPPの知財ポートフォリオは、個々のパテントファミリーとビジネスとの関連性や価値を定期的に評価することによって、常に管理しています。知財ポートフォリオは知財レビュー委員会で議論され、維持に関する決定が下されます。CPPが、特定の知的財産権がもはや事業との関連性や価値がないと判断した場合には、キヤノン(株)に特許放棄提案書を提出し、キヤノン(株)においてもその知的財産権に事業との関連性や価値がないかを確認した上で放棄が実行されます。

IPクリアランス(権利調査)と競合他社の監視

知財部門のもう一つの重要な仕事は、製品の販売前に行われるIPクリアランスです。製品開発プロジェクトの実行中に、IPチームとR&D部門は、研究開発活動に沿ったIPクリアランスを定義するプロジェクト支援計画を決定します。

特許情報専門家がR&Dに共有する競合他社のベンチマークについて議論しています。

競合他社の監視も、IPチームに不可欠なタスクです。デジタル印刷の世界では、多くの新しい開発が行われており、それを追跡することが重要です。R&D部門やBU連携して技術のベンチマーク調査を実施し、競合他社の知財の状況に関する知見を、CPPの戦略の意思決定に役立てています。たとえば、IPチームはR&D部門と協力して、競合他社におけるある技術のベンチマーク調査を実施しています。これにより、R&D部門は、開発中のCPPの技術を競合他社の技術と比較し、研究開発を誘導し、知財権の取得を促進できる「ホワイトスポット」を特定するなどを行っています。このようなアプローチにより、比較的小規模なIPチームは、効果的かつ効率的な情報収集を行っています。

外部関係者との協力に関する組織への助言

非常に革新的で競争の激しいビジネスにおいて、情報管理は非常に重要です。IPチームは、情報管理について組織に助言します。
CPPは、製品・技術開発において外部の学術・商業パートナーとの連携を図っています。IPチームは、これらのパートナーとの情報交換、および機密保持と知的財産の所有権の取り決めに関するアドバイスを提供することによって、これらの活動をサポートします。
また、IPチームはCPPの従業員をトレーニングし、会社のどの部門にいる従業員も直面する可能性のある知財リスクや知財トピックを意識させています。

最後に

CPPの知財部門での仕事は多岐にわたり、IPチームはCPPにおけるあらゆる部門とさまざまな場面で仕事をするため、CPP内のさまざまなステークホルダー(BU、R&D部門、マーケティング部門、戦略部門)やキヤノン(株)との良好な連携を必要とします。各場面でIPチームが直面する課題には特定の専門知識が必要とされるため、そこにこの仕事の興味深さややりがいがあります。

(2025年1月現在)