仕事と人

キヤノンメディカルシステムズ 知財部門

キヤノンが掲げる「戦略的大転換」の一翼を担うメディカル事業。キヤノンメディカルシステムズ株式会社(以下、キヤノンメディカル)は、その中心的役割を果たしています。
尊い命を守る医療に貢献したいという想いを込めた「Made for Life(患者さんのために、あなたのために、そして、ともに歩むために。)」を経営スローガンに、より質の高い医療の実現のために事業を推進しています。キヤノンメディカルにおいて、知財部門は、グループ全体の技術資産を増やし、活用することによって事業の成長に貢献することをミッションに、研究開発部門や事業部門と日々連携しながら知財活動を行っています。なお、キヤノンメディカル知財部門が取り扱う技術資産は、特許に限らず、意匠、商標、著作物、ノウハウ、データなどを幅広く含みますが、以下では、主に特許に関連した活動を紹介します。

幅広く奥深い技術を日々勉強

キヤノンメディカルが注力する3つの領域は、CT、MRI、超音波診断装置、X線診断装置などの「画像診断」、患者さんの健康・診療情報など、臨床で収集された医用データを対象とする「ヘルスケアIT」、血液の分析や新型コロナウイルスの検出などの「バイオサイエンス」です。
年間500件を超える発明を国内外の研究開発拠点から新たに創出し、日本、米国、欧州、中国を中心とする各国に出願し、ワールドワイドで1万件を超える特許ポートフォリオを形成しています(2023年調べ、審査中を含む)。

キヤノンメディカルの3つの事業領域
キヤノンメディカルの3つの事業領域

また、これらの発明技術が有する優れた臨床価値は社外でも高く評価されており、たとえば直近では、公益社団法人発明協会が主催する全国発明表彰において3年連続で高位の賞(恩賜発明賞、経済産業大臣賞、発明協会会長賞)を受賞しています。
知財部門が取り扱う発明は、技術の幅が極めて広く、原理や仕組みがそれぞれ異なるだけでなく、いずれも一つひとつの技術の奥が深く、非常に難解なものもあります。さらに、次々と論文や特許が発表されて進化のスピードも速い分野です。このため、知財部門の担当者には、日々勉強を積み重ねていくことが求められます。

恩賜発明賞受賞の証として贈られた盾

勉強の方法はさまざまです。ホワイトボードに図を描きながら発明者に質問を投げかけ、回答を引き出すこともあれば、時には実験室に行き、実際の装置を動かしてもらったり、また時には同じ敷地内の製造現場を訪れ、遠目ながらも実物を見て、その大きさや動き、材質などを感じ取ったりすることで、発明の理解に努めます。そして自席に戻れば、発明者から紹介してもらったインターネットのサイトや専門書籍を読み漁り、自分なりに理解した内容を同僚や上司、特許事務所の先生方と議論し、確認し合うことで、少しずつ、難解な技術を紐解き、自分のものにしていきます。理解が進み、発明をさらに発展させる議論ができるようになると、発明者から頼りにしてもらえるようになり、また、素晴らしい技術の権利化に携わることにやりがいを感じます。
キヤノンメディカルが扱う先端技術は多種多様であり、かつその技術分野は次々と広がっていきます。知財部門の担当者にとって、技術分野の広がりはやりがいの広がり。皆で協力しながら日々勉強を積み重ねています。

多様なパートナーとのグローバルな活動

キヤノンメディカルでは、国内に加え海外の研究開発拠点においても、製品のコア技術につながる研究開発や製造技術に関する開発を行っており、主要な研究開発拠点は、米国、英国、中国にあります。
このように海外の研究開発拠点の重要性が非常に高いため、知財部門の担当者には、各海外拠点との連携を深め、知財活動に関して手厚いサポートを行うことが求められます。担当者は、日常的に、海外拠点の技術者とメールやオンライン会議によるコミュニケーションを英語で行いながら、知財活動の目標管理、発明の評価やブラッシュアップ、出願手続きの支援や特許教育などを行います。

海外拠点とのオンライン会議の様子

米国のCanon Medical Research USA, INC.(以下、CMRU)で研究開発を行った最新の画像処理技術の発明の場合、CMRUの技術者、キヤノンメディカルの技術者、知財部門の担当者の3者が合同で多面的な検討を繰り返し行い、さまざまな観点から発明のブラッシュアップや新たな発明の創出を行いました。
各研究開発拠点はそれぞれ背景も異なるため、とてもフレンドリーであったり、逆に礼儀正しく真摯であったり、ハングリーで前向きであったりと、国内よりも多様なコミュニケーションとなりますが、多様なパートナーと共通目標のもとで相互理解し一体的な活動を行うことができた時に、グローバルな活動を行う楽しさを実感します。
近年、キヤノンメディカルは、海外企業とのM&Aや協業を積極的に行っています。新規パートナーを知財の観点からも牽引すべく、今後も世界規模での知財活動を展開・加速していきます。

医療従事者の方々へのリスペクトとともに発明を預かる

キヤノンメディカルでは、国内外の多くの医療機関や大学との間で共同の研究開発を進めています。キヤノンメディカルの技術力と、医療従事者の方々の知見との相乗効果が、価値ある医療機器の開発を加速させるからです。この共同研究開発において知財部門が果たすべき役割は少なくありません。
研究開発が始まる前には、創出される知的財産をどのように取り扱うべきか、医療機関や大学側と相談しながら知財関連の契約条項を定めます。大学との意見が異なる時は、研究や発明の内容に基づき、どのように社会実装していくことが相互にとって、また社会にとって好ましいかを議論します。両者が納得できる条件を導き出し合意できた時には、研究、そして医療の発展に貢献できたという達成感を得ます。

医療現場で実際に使用されるキヤノンメディカル製CT装置

また、研究開発が始まり、技術者と先生方との間で活発な議論がなされるようになれば、議論の中で創出されたアイデアを発明として漏らさず捉えつつ、特許出願を行います。時には、知財部門の担当者も技術者とともに先生方とのディスカッションに参加し、知財の専門家としての見解を述べながら、発明を一緒に創り上げます。
知財部門の担当者は、日々医療の現場に立つ先生方と直接お話しする際に、技術や発明の後ろにある医療ニーズを肌で感じることを心掛けています。この技術や発明が社会実装されることで、患者さんや医療従事者の方々にはどのような素晴らしい効果がもたらされるのか、その結果、この技術や発明は医療にどのように貢献できるのかなど、インターネットや書籍からでは得られない生の情報を先生方から教えていただきます。
これらの経験を通して、医療従事者の方々へのリスペクトを改めて深めるとともに、当社の技術に誇りを感じ、大切な発明を預かった者として、責任ある権利化を進めています。

「Made for Life」を胸に刻む

尊い命を守る医療に貢献したいという想いは、知財部門の担当者一人ひとりの胸に刻まれています。知財の専門家ならではの知見と長期的視点に基づく行動を起こし、キヤノンメディカルのブレーンとして広く頼られる存在になること。これが、いま、知財部門がめざしているビジョンです。

(2024年2月現在)