センダイムシクイ
スズメ目ムシクイ科 全長約12.5㎝
九州以北で、主に低山帯の落葉広葉樹林に飛来して繁殖する夏鳥。高い茂みの中にいて、小さく、葉のような色をしているので姿を見るのはむずかしいが、春と秋の渡りの季節には身近な緑地を通過するものも少なくない。ムシクイ科の記録は日本だけで16種もあるが、センダイムシクイ以外は標高が高いところで繁殖するか、まれにしか見られない鳥が多い。
※鳴き声が再生されます。
青葉にまぎれる小鳥
決めては歌?
ムシクイ科はいずれもスズメより小さく、眉の部分が淡くウグイスによく似た地味な小鳥です。しかし、種が違うと暮らし方にも違いがあり、競合せずに共存できるのが原則です。それぞれ繁殖地や生息環境、オスのさえずりが違い、メスがオスを選ぶ際には同種を選ぶことで、種が維持されていると考えられます(姿が似た種ほどオスの鳴き方が異なる例はカッコウで解説しています)。
センダイムシクイは主に低山で繁殖し、オスのさえずりは「チヨチヨビー」。エゾムシクイは亜高山帯で繁殖し、さえずりは「チーツーチー」。メボソムシクイは高山帯で「ゼニトリ、ゼニトリ」。オオムシクイは知床以北で「ジジロ、ジジロ」といった具合です。

10g、5gでも渡る?ヒナはハトサイズ?
センダイムシクイの「チヨチヨビー」というさえずりは「焼酎一杯グィー」と聞きなされますが、「チカレタビー」が良いかもしれません。この鳥の名前は、「鶴千代君〜」と聞きなし、「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の「せんだい」を頂戴したという説や、「チヨチヨ」の千代をセンダイと読み替えて名前がついたという説もあります。
スズメサイズの鳥の体重はシジュウカラなど15g前後が普通ですが、ムシクイ科はセンダイムシクイを含めて10g前後です。ムシクイ科の中で最小とされるカラフトムシクイはわずか5gほどでロシアから中国南部まで渡っていると思われます。東南アジアから日本まで飛来して繁殖するセンダイムシクイですが、カッコウの仲間、ツツドリに托卵されることがあります。托卵についてはホトトギスやカッコウで解説しましたが、センダイムシクイのペアが托卵を受け入れた場合、ハトサイズまで育つツツドリのヒナを養うことになります。

さえずりは細い声で「チーツーチー」。地鳴きはセンダイムシクイの「フィ」より強めで「ピッ」。