自然の中から色を探してきた人類は、最初は黄色い土(黄土:おうど)を絵の具やとりょうにしていました。やがて、あざやかな黄色がとれる石を発見。それが「雄黄(ゆうおう)」「雌黄(しおう)」で、大事に使っていました。ところが、その石は、少量でも口に入れるととても危険な、もう毒の「ヒ素」をふくんでいたのです。危険性が広く知られるようになる中世ころまで、石は貿易にも使われていました。もちろんいまは使われていなくて、「雄黄(ゆうおう)色」「雌黄(しおう)色」という名前だけが残っています。
日本の色いろいろ
自然の中から色を探してきた人類は、最初は黄色い土(黄土:おうど)を絵の具やとりょうにしていました。やがて、あざやかな黄色がとれる石を発見。それが「雄黄(ゆうおう)」「雌黄(しおう)」で、大事に使っていました。ところが、その石は、少量でも口に入れるととても危険な、もう毒の「ヒ素」をふくんでいたのです。危険性が広く知られるようになる中世ころまで、石は貿易にも使われていました。もちろんいまは使われていなくて、「雄黄(ゆうおう)色」「雌黄(しおう)色」という名前だけが残っています。
布や紙を黄色にそめるためには、植物が使われてきました。カリヤスやウコンという草、キハダという木などが、その原料になりました。ウコンは「ターメリック」のことです。ターメリックはカレーの材料で、カレーの黄色のもとになっています。
奈良時代まで、日本語で色をあらわす言葉は、白、黒、赤、青の4つしかなかったといわれています。黄色の色そのものがなかったわけではありません。黄色は、赤色やオレンジ色の仲間の色として「アカ」あるいは「アカシ」とよばれていたのです。平安時代になって、黄、緑、むらさきの言葉が使われるようになりました。自然の風物を色の名前にして表現する風習もうまれてきました。なお、黄色の「き」の日本語が何に由来しているかは、よくわかっていないということです。
ほかにも、たんぽぽ色、ひまわり色など、たくさんの色があります。英語でも「マリーゴールド」「サフラン・イエロー」「ミモザ」…と、花の名前の黄色がたくさんあります。
飛鳥時代に聖徳太子(しょうとくたいし)が作った制度に『冠位十二階(かんいじゅうにかい)』があります。これは貴族の身分によって着てもよい衣服の色を決めたものです。制度は時代によって変わっていって色の種類もかわっていきました。『冠位十二階(かんいじゅうにかい)』は中国(随:ずい)から取り入れた制度だったため、最初は黄色が入っていましたが、すぐ次の改正でなくなってしまいました。日本では黄色が高貴な色としてなじまなかったのかもしれません。ただし、特別な黄色があって、「黄丹(おうに)」は皇太子だけ、「黄櫨染(おうろぜん)」は天皇だけしか来てはいけない「禁色(きんじき)」として残りました。これは、しょ民はもちろん、貴族でさえも絶対に着てはいけなかった色だったのです。
現在でも皇室では即位のときなど、大切なぎしきではこの黄色の礼服を着るそうです。(福岡市博物館所蔵「黄櫨染袍」)
冠位等級 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
冠位名称 | 大徳 | 小徳 | 大仁 | 小仁 | 大礼 | 小礼 | 大信 | 小信 | 大義 | 小義 | 大智 | 小智 |
色彩 | ||||||||||||
色彩名称 | 濃紫 | 薄紫 | 濃青 | 薄青 | 濃赤 | 薄赤 | 濃黄 | 薄黄 | 濃白 | 薄白 | 濃黒 | 薄黒 |
冠位等級 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
冠位名称 | 大織 | 小織 | 大繍 | 小繍 | 大紫 | 小紫 | 大錦 | 小錦 | 大青 | 小青 | 大黒 | 小黒 | 建武 |
色彩 | |||||||||||||
色彩名称 | 濃紫 | 濃紫 | 濃紫 | 濃紫 | 浅紫 | 浅紫 | 真緋 | 真緋 | 深縹 | 深縹 | 緑 | 緑 | 黒 |
冠位では、自分の身分の色(位階:いかい)より下の色は自由に着ることができます。上の色は絶対に着てはいけません。
監修者(かんしゅうしゃ)吉岡 幸雄(よしおか・ゆきお)先生について
1946年京都生まれ。早稲田大学卒業後、美術図書出版社「紫紅社(しこうしゃ)」を設立。日本の伝統色や染織史(せんしょくし)の研究を行ってきた。88年生家「染司よしおか(※)」5代目を継承(けいしょう)。最近では、海外で展示会や講演をする機会も多く、日本の伝統色のすばらしさを世界に広めている。
※ 江戸時代から続く京都の染屋。昔ながらの「植物染」を伝える工房(こうぼう)で、製品は東大寺、薬師寺などの伝統行事にも役立てられている。
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