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光の“正体”は?

星の一生

夜空で星座を作る星の一つひとつは恒星(こうせい)と呼ばれます。“恒”は「変わらない」という意味で、恒星は見える場所が星空の中で変わらないのでこう呼ばれています※1。その代表が私たちの太陽です。夜空にかがやく星のひとつひとつは、どのようにして生まれ、どうなっていくのでしょうか。恒星の一生を見てみましょう。

※1 恒星に対して、星座の中を動いている星が惑星です。“惑”は「まどう」つまり「うろうろする」という意味です。

恒星の姿(可視光線で見た太陽)

恒星の姿(可視光線で見た太陽)
恒星のひとつ「太陽」の直径は地球の約109倍で、表面温度は5800度。ところどころにやや温度の低い黒点があります。

水素が集まって恒星が誕生する

宇宙空間は何もない真空の世界なのではと思いがちですが、地球上では作り出せないほど真空に近い薄さで(密度の低さで)さまざまな物質がちらばっていて、その物質のほとんどが水素です。そして、宇宙のところどころには「分子雲」と呼ぶやや濃い(密度が高い)部分があり、恒星はここで誕生します。

水素は風船に入れると空に飛んでいってしまうほど、たいへん軽い物質ですが、それでも重さがあるので重力がはたらきます。分子雲の中でも、密度が濃い部分はさらに少し重いので、まわりの物質(水素)を引き寄せます。物質が集まるときの「運動のエネルギー」が熱にかわり一カ所に集まることで、その場所の温度が上がっていきます。

そして数100万年という長い年月をかけて大量の物質が集まると、内部が熱い巨大な水素のかたまりができあがります。これが恒星の「卵」で、原始星と呼びます。原始星にさらに物質が集まって温度が上がり、光を出すようになる(核融合反応が起こる)と一人前の「恒星」が誕生します。

なお、原始星のときにじゅうぶんに物質が集まらないときは、恒星にならずにそのまま冷えて褐色矮星(かっしょくわいせい)という暗い天体になります。

分子雲(ワシ星雲)

分子雲(ワシ星雲)
ハッブル宇宙望遠鏡でとらえたへび座のワシ星雲。普通の宇宙空間よりはるかに濃く水素が集まっています。後ろにある恒星からの光を反射してこのように見えていますが、この中で恒星が誕生しつつあると考えられています。

分子雲から恒星誕生まで

宇宙空間にただよう分子雲(水素がやや濃くなっている場所)

分子雲のとくに濃い部分が重力で周囲の物質を引き寄せ、多くの物質が集まってより重くなる(原始星)

中心部の温度が1000万度ほどになると核融合反応がはじまり、周囲に光や熱を放つようになる(恒星の誕生)

星は水素の“核融合”で光る

恒星が光を出すようになるのは、中で「核融合反応」が起きるためです。核融合とは、軽い物質が組み合わさってより重い物質をつくる反応のことで、非常に高い温度や圧力(押しつける力)があるところで起きます。そして核融合反応が起きると巨大なエネルギーが発生し、光や熱が出ます。太陽をはじめとしたすべての恒星では、内部で核融合反応が起き続けているのです。

たとえば太陽は重さが1kgの2000兆倍のさらに1000兆倍(地球の重さの33.3万倍)もあり、その大部分が水素です。想像もできないほど大量の水素が重力で引きあって押しあうと、恒星の中心は1000数百万度という高温になります。この高い温度によって、水素からヘリウムが作られる核融合が起き、発生した膨大なエネルギーは、光や熱などとして飛び出していきます。これが太陽をはじめとした恒星が放つ光や熱です。

核融合反応

核融合反応
水素などの軽い物質の原子(正しくは原子核)が合わさって、より重い物質の原子(原子核)を作る反応が核融合で、水素からヘリウムができる反応がその代表です。

安定して光り続けるしくみ

恒星が光を出しているとき、その内部では2つの力がせめぎ合っています。

ひとつは物質が重力で押しつけあう力で、内向きにはたらいて恒星を縮めようとします。もうひとつは核融合のエネルギーで、物質を外向きに押し返して恒星をふくらませようとする力です。この“縮む力”と“ふくらむ力”とがつり合うことで、恒星は安定して光り続けることができるのです。

多くの恒星はこのつり合いの状態で一生のほとんどを過ごします。およそ46億年前に誕生した私たちの太陽も、現在はこの段階にあります。

水素の核融合でできたヘリウムは、しだいに恒星の中でたまっていきます。さらに時間が経つと、つまり恒星が年をとっていくと、ヘリウムのかたまりはしだいに大きくなっていきます。

恒星で起きている力のつり合い

恒星で起きている力のつり合い
重力で物質が引き寄せられる力と、放出される核融合エネルギーがつり合って、恒星は安定して光り続けます。

一般的な恒星の内部のしくみ(太陽も同じです。)

一般的な恒星の内部のしくみ(太陽も同じです。)
まわりには大量の水素があり、核融合反応によってエネルギーを出し、中心には核融合で水素からできたヘリウムのかたまり(中心核)があります。

老化すると赤く巨大になっていく

ヘリウムの量が多くなってくると、恒星の輝きにも老化が見えはじめます。

ヘリウムは水素より重く、押しつける力が大きいために恒星の中心部分は縮んで温度が上がります。するとその熱でまわりにある水素がふくらんで、恒星全体が安定していた時の数100倍以上もの大きさになります。

このとき、中心部は高温ですが広がった表面は中心から遠くなり温度は下がります。温度が下がると出る光は赤っぽくなるため※2、このような年をとった恒星を「赤色巨星(せきしょくきょせい)」と呼んでいます。

なお、私たちの太陽が赤色巨星になるのは、少なくとも数10億年以上も先の遠い未来と考えられています。人類がさらに科学を発展させていけば、子孫たちは、太陽から離れた別の惑星などに移住していることでしょう。

※2 光の色は、光を出している物体の温度と深く関係しています。恒星は表面温度が高いほど青く、低くなるほど赤く見えます。

老化して赤色巨星に変化する

水素の核融合でできたヘリウムが恒星の中心にたまって大きくなる

ヘリウムの核が縮んで温度が上がり、その熱で周辺の水素が膨張。恒星が大きくなり表面温度が下がって赤くなる

生まれたばかりの若い星「プレアデス星団」(左)と、年老いた赤色巨星「ベテルギウス」(右)

生まれたばかりの若い星「プレアデス星団」(左)と、年老いた赤色巨星「ベテルギウス」(右)

恒星の最後はどうなる?

赤色巨星になったあと、恒星は一生の最後の段階に入ります。ただしどのような最後になるかは、恒星の重さ、つまり恒星に集まっている物質の量によって変わります。

恒星の重さが太陽の半分以下の場合は赤色巨星にならず、水素の核融合でできたヘリウムだけのかたまりになり、「白色矮星(はくしょくわいせい)」と呼ばれる天体になります。その後は時間とともにしだいに暗くなっていくと考えられています。

太陽の半分から4倍くらいまでの平均的な重さの恒星では、赤色巨星になったあとに中心部の温度が上がり、水素からヘリウムへの核融合にかわってヘリウムが炭素になる核融合が起きます。ヘリウムがなくなると炭素の核融合が、さらに窒素や酸素の核融合が…というように、より重い元素をつくる核融合が起きますが、とちゅうで外側にある物質が核融合しないで宇宙空間に流れ出し、「惑星状星雲」を作ります。

その後、中心に残った物質は小さな「白色矮星」となり、ゆっくりと冷えて暗くなっていきます。

核融合が弱まった恒星は縮み白色矮星になります。まわりに流れ出た物質が惑星状星雲を作ります。

核融合が弱まった恒星は縮み「白色矮星」になります。まわりに流れ出た物質が「惑星状星雲」を作ります。

惑星状星雲(こと座のリング星雲M57)

惑星状星雲(こと座のリング星雲M57)
リング星雲と呼ばれること座の惑星状星雲は恒星から流れ出た物質が宇宙空間に広がったもので、地球から約2300光年の距離にあります。中心には恒星の残骸の白色矮星が見えます。

重い恒星は超新星爆発を起す

より重い恒星では、一生の最後に大きなドラマが待っています。

太陽の8倍を超える恒星では、酸素をつくる核融合の後にもっと重い物質をつくる核融合がつぎつぎに起こり、最後に鉄をつくる核融合が起きます。核融合が続いている間は“ふくらむ力”がはたらきますが、鉄が増えていくと核融合はとまります。鉄は安定した元素なのでそれ以上の反応が起きないのです。

“ふくらむ力”がなくなると重力の“縮む力”に大きくバランスがかたむき、恒星は押しつぶされ、温度がさらに上がります。そして、中心温度が約100億度を超えると鉄が分解し、恒星全体がいっぺんにつぶれて反動で大爆発を起すのです。これが「超新星爆発」で、それまでの1億倍も明るい光を出す激しい現象です。このとき、発生するけた違いに大きなエネルギーによって鉄よりも重い物質が生まれますが、他の物質といっしょに宇宙空間に飛び散って「超新星残骸」と呼ばれる天体を作ります。

超新星爆発では内向きにも力がはたらいて、恒星の中心部分を極端に小さく押しちぢめ、非常に大きな重力を持つ天体(中性子星=ちゅうせいしせい)が生まれます。特に太陽の30倍を超えるような重い恒星の超新星爆発が起こると、重力が大きくて光さえも飛び出せない「ブラックホール」ができると考えられています。

超新星残骸(おうし座のかに星雲)

超新星残骸(おうし座のかに星雲)
中国の古い文献などに1054年におうし座で超新星爆発と思われる現象が起きた記録があります。その位置には現在はカニ星雲とも呼ばれる超新星残骸があります。

ブラックホール

ブラックホール
天の川銀河の中心にある巨大ブラックホール。地球上の8台の電波望遠鏡を組み合わせて天体を観測する「イベント・ホライズン・テレスコープ」計画により画像として初めてとらえられました。

私たちのからだは恒星のかけらでできている

このように大部分の恒星は分子雲から生まれ、数1000万~数10億年※3という一生の間に水素からさまざまな物質を作って最後にそれを宇宙空間に放出します。飛び散ったさまざまな物質がふたたび分子雲となり、集まって新しい恒星や惑星になるのです。

私たち生物の体には、鉄や、それより重い銅や亜鉛などが含まれています。また身のまわりでは金銀をはじめさまざまな重い元素も利用されています。これらは過去に一生を終えた恒星がつくった物質です。私たちや地球が、別の恒星の“かけら”でできている証拠なのです。

※3 恒星は重いほど核融合が激しく進むので、一生の長さは短くなります。おおよそ太陽の10倍の重さだと数1000万年ほどで、半分の重さ(質量)では数100億年になると考えられています。

恒星の一生と物質の循環

恒星の一生と物質の循環

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