光のなぞ 光や色のたのしい知識がいっぱい!

色と光

金星とは、どんな星?

太陽のまわりを8つの「わく星※1」が回る「太陽系(けい)」。そのなかで、地球のすぐ内側を回っている金星は、地球とにている点が多く、“地球のきょうだい星”ともよばれています。でも、気候も地球とはまったくちがい、わかっていないことも多い「なぞの星」です。「よい※2の明星(みょうじょう)」「明けの明星」ともいわれ、望遠鏡で見ると月のように満ち欠けもしている金星はどんな星なのか?なぜ、金星は「なぞの星」なのかをさぐってみましょう。 

  • ※1 太陽のように自分で光りかがやく星を「こう星」といい、その星のまわりを回っている星を「わく星」といいます
  • ※2 日がくれてからのしばらくの間
「夜明け」の時間にかがやく金星
「夜明け」の時間にかがやく金星

金星の地表のすがた 画像提供(がぞうていきょう):NASA
金星の地表のすがた
画像提供(がぞうていきょう):NASA

真夜中には決して見えない「明星(みょうじょう)」

金星は、夕方の「よい」の空にびっくりするほど明るくかがやく時期があります。また別の時期には、夜明け前の空に明るくかがやきます。このため、金星は「よいの明星」や「明けの明星」とよばれています。
しかし、真夜中にはけっして見ることはできません。金星は、つねに地球から見て太陽がある側の方向にしか見えないのです。

これは金星が太陽のまわりをまわる道すじ(=「き道」といいます)が、図のように地球の「き道」の内側にあるために、太陽から見て地球の後ろ側にまわりこまないので、いつも太陽のある側に見えるのです。

  • ※ 太陽系(けい)にある8つのわく星のうち、地球より内側を回る金星と水星を「内わく星」、地球より外側を回る火星、木星、土星、天王(てんのう)星、海王星を「外わく星」とよんでいます
太陽系(けい)を回るわく星のき道
太陽系(けい)を回るわく星のき道

太陽の前をつうかする金星 太陽を安全にかんさつできる方法でさつえいしています
太陽の前をつうかする金星
太陽を安全にかんさつできる方法でさつえいしています

気温は460°C、時速360kmの強れつな風・・・金星のなぞ

地球と「きょうだい星」ともいわれる金星の直径は地球の95%ほど、重さも80%で内部のしくみも地球とよくにていると考えられています。

約46億年前、ほぼ同時に生まれたばかりの金星と地球はどちらも高温で、二酸化炭素(にさんかたんそ)や水じょう気を中心とした大気※1におおわれているなど、よくにていました。しかしその後、地球では気温が下がって海ができ、二酸化炭素が海に取りこまれていまの大気※2に変化していきました。一方で、金星は地球よりわずかに太陽に近い※3ために気温が下がらず、海ができないために二酸化炭素が大部分をしめる大気ができました※4。そして、いま地球でももんだいになっているような二酸化炭素による「温室効果」が強くはたらき、表面は460℃という高温になっています。

金星の大きななぞのひとつは、太陽系のわく星の中でただひとつだけ「ぎゃく向き」に自転していることです。ほかの星は地球の北側から見て反時計回りに公転し、自転も同じ向きです※5。これは太陽系ができたときにガスやチリが同じ向きに回転していたためと考えられています。しかし金星の自転だけは時計回りで、1回転(=地球でいえば1日)には243日かかります。これは、金星が太陽のまわりを一周公転(=地球でいえば1年)する225日より長いのですが、理由はわかっていません。

さらに太陽系最大のなぞのひとつといわれるのが、金星の地上から高さ(=上空)70kmあたりでふいている時速360kmというの強れつな風です。約4日で金星を一周し、「自転をこえるスピードでふく」という意味で「スーパーローテーション」とよばれています。

  • ※1 わく星をおおっている気体のこと。地球では空気
  • ※2 いまの地球は、おもに、ちっそと酸素(さんそ)でできた大気におおわれています
  • ※3 金星から太陽までの距離は約1億820万kmで、約1億4960万kmの地球より太陽に30%ほど近くにあります
  • ※4 金星の大気は二酸化炭素97%、ちっそ3%で、気あつ(=空気がまわりからおされる力)は地球の90倍にもなると考えられています
  • ※5 公転とは、こう星(=太陽系でいうと太陽)のまわりを、わく星(=地球や金星など)が回ること。または、わく星のまわりを、えい星(=月など)が回ること。自転とはこう星、わく星、えい星などが、こまのように“じく”を中心に回転することをいいます
金星と地球の内部
金星と地球の内部

スーパーローテーション 画像提供:NASA
スーパーローテーション
画像提供:NASA

金星は満ち欠けする!

望遠鏡で金星をかんさつしてみると、約1年7カ月をかけて満ち欠けと見える大きさの変化をくり返すことがわかっています。大きく見えるときは三日月の形に大きく欠けて見えます。小さく見えるときはその約6分の1の大きさになりますが、満月のように丸く見えます。

この変化は人間の目では見わけられませんが、小さな望遠鏡で見ることができ、17世紀(せいき)の始めごろ、望遠鏡による天体かんそくを初めておこなったイタリアの天文・物理学者ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)によって発見されました。そのころは、世界では地球のまわりを太陽やわく星などの天体が回る「天動説」が世界の常識(じょうしき)でしたが、天動説ではこの金星の満ち欠けがおこるしくみの説明が、とてもふくざつになってしまいます。

  • ※ 地球の大気の外にあるすべてのもの
キーテクノロジーぐんま天文台でさつえいされた金星の満ち欠け キーテクノロジーぐんま天文台でさつえいされた金星の満ち欠け
キーテクノロジーぐんま天文台でさつえいされた金星の満ち欠け
さまざまな時期にとった写真を、金星の見え方の変化がわかるようにならべ直しています。
太陽の光が金星にあたる向きが時期によって変わるため、明るく見える部分の向きも変化します。ここではとった写真をそのまましょうかいします
画像提供:テクノロジーぐんま天文台

「満ち欠けのしくみ」が地動説の有力なしょうこに

しかし、16世紀にコペルニクス(1473-1543)らがとなえた地動説が正しいと考えると、とてもかんたんに説明でき、このことから金星の満ち欠けは、地動説を後押しする強力なしょうこになりました。

天動説では金星は、太陽より地球に近いところを動いていくと考えられました。そのため、太陽より向こう側に行くことはなく、金星には太陽の光がつねに後ろ側からあたるので必ずかげができ、つねに大きく欠けて見えるはずでした。

ところが望遠鏡のかんそくでは、金星は三日月の形だけでなく半月、さらに丸に近く見えるときがあります。これは、天動説では説明できません。しかし、金星も地球も太陽のまわりを回るとした地動説では、

  • 1:金星が地球から見て太陽の手前にあるときは、きょりが近いために大きく見え、太陽の光があたらない部分が広いので半月から三日月の形になる。
  • 2:ぎゃくに太陽の向こう側にあるときは、きょりが遠いので小さく見え、半月から円に近い形になる。

とかんたんに説明できたのです。

金星のき道と地球からの見え方
金星のき道と地球からの見え方

金星は地球より太陽に近い側を回っています。
地球からは金星が太陽にてらされているようすを、ま横のむきから見ることになり、丸に近く見えたり、半月や三日月の形に見えます。
また、金星が地球から見て、太陽の向こう側にある(=丸に近く見える)ときと地球の近くにある(=三日月に見える)ときとでは大きさが6倍もちがいます

なぜこんなに明るいの?

金星は、太陽と月に続いて空で3番目に明るく見える天体です。金星はもっとも明るいときには、太陽以外の「こう星」の中でいちばん明るく見える「シリウス」という星の約17倍もの明るさになります。これほど明るく見えるのは、金星をとりまく空気(=大気)がとてもこく、その大気の中にとてもあつくて、ひじょうにこい雲があるためです。この雲はつねに金星の表面のほぼすべてをすきまなくおおっていて、あたった太陽光の大部分をはね返します。つまり金星はかがみのように光をよくはね返すので明るく見えるのです。

そして、このあつい雲は、金ぞくをとかすような強いはたらきがある、こい「りゅうさん」でできています。人類が金星のようすを調べるために金星に近づいたり、着陸したり、かんそくしたデータを送ったりするときに、460度以上という気温、空にふくきょうれつな風などと合わせ、やっかいなハードルとなって立ちはだかります。

明るくかがやく金星
明るくかがやく金星

金星はあつい雲におおわれています 画像提供:NASA
金星はあつい雲におおわれています
画像提供:NASA

日本の探査(たんさ)機「あかつき」がなぞのひとつをつきとめる

金星の科学的なかんそくはガリレオ・ガリレイ以来、ずっと続けられてきました。しかし表面をおおうあつい雲など金星のきびしい気しょう条件(じょうけん)のために地表のようすをなかなか知ることはできませんでした。そこで20世紀後半から金星探査機の計画が始まり、1962年にはアメリカのマリナー2号が初めて金星まで3万kmあまりまでに近づき、1970年にはソ連(=いまのロシア)のベネラ7号が着陸に成功するなど、少しずつ金星のようすが明らかになりました。

さらに、2010年には日本の金星探査機「あかつき」が打ち上げられ、メインエンジンのこしょうなどのトラブルにあいながらも6年後の2016年に金星のまわりを回る「き道」に乗り、2024年まで金星の大気などをかんそくしました。そして、スーパーローテーションを加速するしくみが、金星の昼と夜の温度差や熱の移動によっておきることをつきとめました。

探査機「あかつき」©ISAS/JAXA
金星探査機「あかつき」
©ISAS/JAXA

「あかつき」がとらえた金星©ISAS/JAXA
「あかつき」がとらえた金星
©ISAS/JAXA

金星を見てみよう!

金星は明るいので、太陽に近づいているときでなければ望遠鏡などを使わなくてもよく見えます。つねに見え方が変わっていくため、何月ころにこう見えるということはできないのですが、たとえば2025年の後半は「明けの明星」としてかがやいているのを見ることができます。早起きして日の出30分前ごろに東の空をながめてみると、一番明るく見える星が金星です。そののち、11月をすぎると低くて見えにくくなります。その後2026年に入ると今度は「よいの明星」となって、夕方の空にかがやくようになります。2026年より先の見え方は、次のウェブページで、見たい時間の日付や時こくなどを入力すると、金星をはじめとした星空の見え方がわかりますので、参考にするとよいでしょう。

参考コンテンツ 国立天文台「今日のほしぞら」
https://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/skymap.cgi

2025年の日の出の時に金星が見える位置
2025年の日の出の時に金星が見える位置

日の出の時こくに金星が空のどこにどう見えるかがわかる図です。図の左右まん中の「90度」と書かれたところがま東の方向で、図の上下は地上0度からだいたい45度ななめ上までの空になっています。線でつながった丸が2025年3月下旬から1週間ごとに、「望遠鏡で見たときの金星」で、おおよその形と大きさです。残念ながら、人間の目では形はわからず、つねに明るい点に見えます。7月末から9月初めまでは、約30度という高さにありますが、その先は年末にむけて低く下がったところに見えることがわかります

金星を見つけるのはわりとかんたんですが、そうがん鏡や望遠鏡でかんさつするときは、太陽が目に入らないように注意しましょう(望遠鏡などで太陽を直せつ見ると失明するきけんがあります)。


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