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色と光

オーロラのしくみ

オーロラの美しい写真や動画を見たことがあると思います。そのしくみがわからなかった17世紀までは「天が裂(さ)けた」などと宇宙で起きる現象だと思われていました。でも実はオーロラは、地球をおおう空気(大気)の中で起こっている現象です。

オーロラ

オーロラ

オーロラは空気が光る

地球のまわりをふくめて宇宙には、太陽をはじめとした自分で光を出す星(恒星=こうせい)から出た「電気を帯びたつぶ※1」が飛びかっています。恒星はたいへん温度が高いので、星を作っているもの(物質)の一部が熱によって分解し、電気を帯びたつぶになるためです。このような「電気を帯びたつぶ」をプラズマといい、ガスのように薄く広がって宇宙の中を動いています。

わたしたちの太陽も光や熱だけでなく、毎秒100トンというたくさんのプラズマなどを宇宙空間にはき出し、その一部は地球にもとどきます。地球にちょうど風のように吹きつけるため、これを太陽風と呼んでいます。

太陽風が地球にとどくと、その一部のプラズマが地球の大気に飛び込みます。プラズマと大気を作っている酸素や窒素とがぶつかると光が出ます。それがオーロラの正体です。

※1 ここで「つぶ」としているのは、目に見えないほどのちいさなもので、おもに原子や分子1つ1つのことです。

オーロラが光るしくみ

オーロラが光るしくみ
電気を帯びたつぶ(プラズマ)が宇宙から飛び込んで空気を光らせています。

いろいろな色が見られるのは?

オーロラの光るしくみは花火が色を出すしくみと似ています。
花火では火薬にまぜたいろいろな物質が、火薬が燃えるときの熱エネルギーを受けとって色の光を出します。物質の種類や受けとる熱エネルギーの大きさによって、出る光の色のちがいがでます。

同じようにオーロラでは、宇宙から飛び込んでくるプラズマがぶつかることで、大気を作っている酸素や窒素などがエネルギーを受けとって光ります。プラズマが持っているエネルギーの大きさはさまざまで、そのちがいからオーロラの色のちがいが生まれます。

エネルギーの小さなプラズマは大気をつき抜ける力が弱く、上空のとても高いところ(高度400〜200km)で大気とぶつかります。この高さの大気は酸素の割合いが多く、また酸素は小さなエネルギーを受けとったときは赤く明るく光るので、高いところで光るオーロラは赤く見えます。

エネルギーの大きなプラズマは、高いところの大気をつき抜けて200km以下の高さまで届き、大気とぶつかります。酸素は大きなエネルギーを受けとると緑色の光を出すので、上空200〜100kmの高さで光るオーロラは緑色に見えます。

プラズマは大気を作っている窒素にもぶつかりますが、その光は100km以上の上空では酸素が出す光のために目立ちません。でも高さ100km以下まで届くような大きなエネルギーを持ったプラズマがあると、窒素とぶつかって青やピンク色の光を出します。このため低い高さに見られるオーロラは紫(青がかった赤)やピンク色になりますが、このような大きなエネルギーを持つプラズマが地球に届くことは少ないので、この色のオーロラはまれにしか見られません。

オーロラの色と高度

オーロラの色と高度
地上から200km以上の上空(じょうくう)では赤い光が、また200~100kmでは緑色の光が出ます。より低い100~80kmでは紫やピンクの光が出ます。

オーロラに見える色

オーロラに見える色
オーロラの規模が大きいとき、上の方が赤く、下の方が緑色に見えます。

北極や南極の近くで多く見える

地球は大きな磁石になっています。磁石のS極が北極の近くに、N極が南極の近くにあって、磁石の力は宇宙空間に広がっています。「磁石の力が広がる範囲」を磁場(じば)といいますが、地球の磁場はちょうど磁石に砂鉄をかけたときのようなかたちで、宇宙空間にも広がっています。

プラズマは電気を帯びているため、磁力の影響を受けます。太陽風として地球の近くに届いたプラズマは地球の磁場によって進む方向が変わり、磁力がはたらく向きにそって動きます。
磁力がはたらく向きを線にしてみると、線は赤道の上空では地球から遠くにあり、北極と南極では地球に近づいていきます。オーロラのもとになるプラズマも、赤道の上空では大気よりはるかに離れた宇宙空間を動き、北極と南極の近くでは地面に向かってやってきて、大気とぶつかるのです。

オーロラが北極地方や南極地方でよく見られるのはこのためです。宇宙から地球を見ると北極や南極には、プラズマが飛び込む“磁場の窓”がある…と考えると分かりやすいでしょう。
なお、この“窓”がある場所は地図で見ると楕円の形になっていて、中心は北極や南極ではなく、少しずれています。これは地球の磁石のS極N極の向きが、実際の北極や南極の向きとは少しずれている(傾いている)からです。

磁石と地球の磁場のようす

磁石と地球の磁場のようす

地球の北側の磁場の窓

地球の北側の磁場の窓
中心は北極とはずれています。

オーロラのもとは宇宙空間にたまっている

ふつう、磁石の磁場は、上下左右に同じかたちで広がっていますが、地球の磁場は遠くはなれた場所から見ると、大きくゆがんでいます。太陽がある側(地球の昼側)がつぶれ、夜側は長くのびて広がっています。これは、太陽風が磁場を押しつけているためです。

地球近くに届いたプラズマは、一部は昼側の“窓”から降り注いでオーロラを発生させます。しかしプラズマの多くは地球磁場の外側にそって地球の夜側に移動したあとに内側に入りこみ、地球から数万kmから数百万kmも離れた宇宙空間にたまると考えられています。この場所をプラズマシートと呼び、プラズマシートにたまったプラズマがなんらかの原因で地球に向けていっぺんに流れ込んでくると、大規模なオーロラが発生します。

地球周辺の磁場

地球周辺の磁場

活発なオーロラは磁場の“パチンコ”が原因?

大規模なオーロラが発生するしくみとして最近わかってきたのが、「地球磁場のつなぎかわり」です。

ふだん、地球の磁場は、地球の夜側で細長く重(かさ)ならずに“しっぽ”のようにのびています。でもときどき、“しっぽ”の途中がねじれて切れるように閉じて※2、ちょうど伸ばされていたゴムがちぎれて縮むような現象が起きます。このとき、“しっぽ”の中にあったプラズマシートがちょうどゴムのパチンコではじき飛ばされる玉のように地球の方向に移動します。すると、たくさんのプラズマが大気にいっぺんに降り注ぐので、とても活発なオーロラが見られるのです。

※2 このような現象を「磁場のつなぎかわり」といいます。

地球の夜側に長くのびる磁場の中でプラズマシートが細くなる部分があらわれる

地球の夜側に長くのびる磁場の中でプラズマシートが細くなる部分があらわれる

ねじれるように磁場がきれて、ゴムのパチンコのようにプラズマシートが地球の方向に移動

オーロラにはまだまだ謎がいっぱい

オーロラという名前をつけたのは、17世紀のガリレオ・ガリレイとされています。このころから科学的な研究が進み、現在ではそのメカニズムがかなりわかってきています。しかし、オーロラにはまだまだ多くの謎もあります。

「磁場のつなぎかわり」がなぜ、どのようなきっかけで起きるかもくわしくわかっていませんし、地球の磁場が発生するしくみにも謎があります。さらに最近では惑星探査機やハッブル宇宙望遠鏡などの観測で、火星、木星、土星、天王星、海王星でもオーロラが観測され、科学者の関心を集めています。いま、地球とどう違うかなどの研究が進められているところです。

このほかにもオーロラから太陽の活動を調べる研究も重要になってきました。私たちの生活ではカーナビなどの位置情報やさまざまな電波通信が欠かせませんが、これらは太陽の表面で起きる「コロナ質量放出」や「太陽フレア」などの爆発的な活動によって、故障したりこわれたりする心配があるのです。この爆発的な現象があるとオーロラが激しく活動するので、逆にオーロラの観測を通じて太陽の活動をとらえ、被害を食いとめる方法が調べられています。

まだまだ多くの謎をもつオーロラは、美しい現象としてはもちろん、研究の対象としてこれからも注目を集めていくでしょう。

太陽観測衛星がとらえたコロナ質量放出(NASA提供)

太陽観測衛星がとらえたコロナ質量放出(NASA提供)
このような太陽の爆発的な現象があると、オーロラの活動がきわめて活発になります。

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