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光を記録する

カメラのしくみって?

カメラに欠かせないもの

カメラの種類はさまざまで、現在、数百におよぶ機種があるといわれます。しかし、「写真を撮影(さつえい)する」という目的のカメラには、外側のボディ以外にかならず備わっている部品があります。それは以下の3つです。この3つ以外の部品や機能がなくても撮影(さつえい)できますが、この3つのうちひとつでも欠けると、写真になりません。

  • 光を集めて像をつくる部品=レンズ
  • 光を感じ取って記録する部品=感光材料(フィルムやセンサ)
  • 感光材料に光を当てる時に開く部品=シャッター

なお、先にしょうかいしたピンホールカメラには、レンズは使われていません。しかし、「像をつくる」というはたらきは、レンズのかわりに小さな穴(針穴)が受け持っています。また、ごく初期に作られたカメラには、現在のようなシャッターはなく、レンズのキャップを開け閉めしてシャッターにしていました。
また、デジタルカメラでは、シャッターに相当するはたらきを電子回路が担っています。電気の流れをコントロールすることによって、シャッターのように露出(ろしゅつ)時間を調節するのです。

一眼レフカメラのスケルトン図

一眼レフカメラのスケルトン図

レンズのしくみ

レンズとは、ガラスやプラスチックで作られた光をくっ折させるうすい部品のことです。ただし、カメラのしくみを考える場合、レンズそのものだけでなく、ピント調節や光の量を調節する部品も合わせた、レンズシステム全体を指すことがほとんどです。

現在のカメラ用レンズ(レンズシステム)には、多い場合には20枚以上ものレンズが組み合わされています。これは、1枚のレンズではどうしてもさけられないさまざまな収差と呼ばれる光のズレを、複数のレンズを組み合わせることで取りのぞくためです。収差があると、像のシャープさが失われたり、コントラストが悪くなってしまいます。カメラ用レンズでは光の通り方をコンピュータで計算して、最適な像ができるように設計しています。

カメラには、ピントを合わせる装置も必要です。ふつうの撮影(さつえい)では、レンズを前後させることでピントを合わせますが、コンパクトタイプのカメラでは、このための装置はボディ側にあります。しかし、一眼レフをはじめ多くの高性能カメラでは、ピント調節のしくみはレンズシステムに組みこまれています。

ピントが合った画像を撮影(さつえい)するためには、レンズの全体または一部を前後に移動 させてピント合わせを行う必要があります。
一眼レフ用カメラのレンズシステムの主なピント合わせのしくみには、ヘリコイドと呼ばれるネジを使うものと、カムと呼ばれる溝(みぞ)のある筒(つつ)を使うものがあります。特にカムによるピント合わせでは、撮影距離(さつえいきょり)に応じて複数のレンズを別々に動かすフローティング)や、ズームレンズでは焦点距離(しょうてんきょり)に応じてピントを合わせる量を変える複雑なしくみがあります。

なお、レンズにはフィルムやセンサーに届く光の量を調節するしくみも組み込まれています。これが「しぼり」です(後でくわしく説明します→しぼりとシャッター)。

ズームレンズ

ズームレンズ

単焦点(しょうてん)レンズ

単焦点(しょうてん)レンズ

いろいろなピント合わせ方法

いろいろなピント合わせ方法

オートフォーカス(ピント調節)

ピントの調節は前述したようにレンズを前後させて行いますが、現在、ふつうに使うカメラのほとんどが自動でピントを合わせるオートフォーカス機能を持っています。ただし、オートフォーカスといってもさまざまな方式があり、一長一短です。ここでは、距離(きょり)を測る基本的なしくみと、現在のコンパクトタイプのデジタルカメラで一般(いっぱん)的な「コントラスト検出方式」についてしょうかいしましょう。

巻き尺などを当てるのではなく、手の届かないところまでの距離(きょり)を測るには、三角測量という方法が使われます。これは「その1辺の長さと2つの頂点の角度がきまれば、その三角形が決まる」という原理に基づいています。

たとえば図のAからBまでの距離(きょり)を測るとします。まず、BからCまでの距離を測り、さらに角bと角cを測れば、三角形ABCが決まりますから、AとBの距離(きょり)は計算できることになります。
実際のカメラではB’(カメラのファインダー)からA’(被写体(ひしゃたい))をまっすぐにのぞき(角b’は直角になります)、カメラの中のC’にある小さな鏡をA’が映るように回転させます(この角度が角c’になります)。B’とC’の距離(きょり)はわかっていますから、三角形A’ B’ C’の大きさがわかり、A’とB’の距離(きょり)も計算できる…というしくみです。
なお、この原理で被写体(ひしゃたい)までの距離(きょり)を調べるには、少なくとも2つの窓が必要です。コンパクトカメラなどにファインダー以外の窓(測距窓(そっきょまど))があるのはこのためです。

一方、多くのデジタルカメラなどでは、コントラスト検出方式というピント合わせ技術が用いられています。これは、実際に撮像(さつぞう)センサに写る像を調べながらレンズを前後に動かし、いちばんコントラストが高くなる位置=ピントが合う位置でレンズを止めるしくみです。ただし、この方式では模様のない壁(かべ)を撮影(さつえい)する場合や、暗くてコントラストがはっきりしないときなど、うまくピント合わせできない場合があります。このため、多くのデジタルカメラでは、ピントを調べる場所をいくつも用意して、それぞれのピントの合い方を比較(ひかく)しながら計算して調節する機能が搭載(とうさい)されています。

この他に、一眼レフデジタルカメラでは、像を調べてピントが合う面の位置を検出する位相差検出式(いそうさけんしゅつしき)のオートフォーカスを持つものが一般(いっぱん)的です。また、以前はカメラから超音波(ちょうおんぱ)を出し、被写体(ひしゃたい)ではね返ってくるのをとらえて、コウモリのように距離(きょり)を計算する方式もありました。最先たん技術としては、画面の中にある「顔」を検出してそこにピントを合わせるタイプのオートフォーカスも実現しています。

三角測量の図

三角測量の図

距離計(きょりけい)のしくみ

距離計(きょりけい)のしくみ

コンパクトカメラの測距窓(そっきょまど)写真

コンパクトカメラの測距窓(そっきょまど)写真

コントラスト検出のしくみ

コントラスト検出のしくみ

しぼりとシャッター

フィルムや撮像(さつぞう)センサなどが正確に「光を感じ取って記録する」には、そのフィルムや撮像(さつぞう)センサなどにとって「ちょうど良い」量の光を当てる必要があります。なぜなら、光の量が少なすぎれば(暗すぎれば)、フィルムでは化学反応が起きず撮像(さつぞう)センサでは電気信号が発生しないからです。逆に、光の量が多すぎれば(明るすぎれば)、フィルムにぬってある光を感じる薬品が、ほとんどすべて反応してしまいます。また、デジタルカメラの撮像(さつぞう)センサでは計算できないレベルの電気信号が発生してしまいます。
そして、この光の量の調節を行っているのが、「シャッター」と「しぼり」です。

※ シャッターには、不必要なときにフィルムに光を当てない…という役割も持っています。

シャッターにはさまざまな形式がありますが、現在の銀塩カメラでもっとも多く用いられているのは、レンズシャッターとフォーカルプレーンシャッターです。レンズシャッターでは小さな仕切り板がレンズの中に置かれていて、バネの力で猛(もう)スピードで開閉するようになっています。完全に開いてから完全に閉じるまでが露出(ろしゅつ)時間(シャッタースピード)になります。レンズシャッターはコンパクトで比較(ひかく)的シンプルなため、コンパクトカメラに多く用いられています。

なお、よく「シャッタースピードは250分の1」などといわれますが、この「何分の1」は秒で、シャッターが開いている時間(=露出(ろしゅつ)時間)を示しています。当然、露出(ろしゅつ)時間が長くなればなるほど、たくさんの光がフィルムに当たります。

レンズシャッターはレンズの途中(とちゅう)にあるため、閉じているときは光が通りません。ですから、レンズを通った光をピントグラスで見る一眼レフでは、レンズシャッターを用いることができません(※注)。そこで、多くの一眼レフカメラでは、フィルム(感光材料)の直前にシャッターが置かれています。これがフォーカルプレーンシャッターです。
フォーカルプレーンシャッターは2枚の幕で構成されており、それぞれが別々に動きます。先幕(さきまく)が開いて露出(ろしゅつ)が始まり、露出(ろしゅつ)を終えるときは後幕(あとまく)が閉じます。レンズシャッターに比べて動かす幕が大きいので、動き自体はややおそくなります。このため、先幕が開ききらない間に後幕をスタートさせることで、フィルムの1点に光が当たる時間を短くしています。

※注
特別なしくみを用いてレンズシャッターを使用する一眼レフもあります。このような機種では、フィルムの前にフォーカルプレーンシャッターに似た遮光板(しゃこうばん)があり、ミラーやシャッターの動きと連動させる複雑なしくみが用いられています。

しぼりは、感光材料に「一度に」当たる光の量を調節するしくみです。多くのしぼりは、複数のうすい金属板を組み合わせた複雑な構造をしており、入ってくる光の束の直径を連続的に変化させています。このようなしぼりができる以前は、レンズのところに丸い穴のあいた板を差しこんで、しぼりにしていました。しぼりを変えるときは、大きさのちがう穴があいた板に差しかえるしくみでした。
なお、ふつう、しぼりの開き加減は口径比(こうけいひ)(焦点距離(しょうてんきょり)を口径で割った値)で表され、数字が小さいほどしぼりが開かれ、多くの光が入ります(数字が大きくなるとこの逆)。

フォーカルプレーンシャッター

フォーカルプレーンシャッター

しぼりの原理図

しぼりの原理図

しぼりの写真:開いたところ・しぼったところ

しぼりの写真:開いたところ・しぼったところ

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