現在天体望遠鏡に使われる反射鏡は、ガラスでできています1。 板状のガラスのまん中をへこませればおう面鏡が、逆に周囲をうすくすればとつ面鏡になります。この、ガラスの形をへこませる作業が、反射鏡作りの第一段階です。
学校などで使われている小型の望遠鏡では(口径10~50cmぐらい)、平らなガラス表面をけずって作った反射鏡が使われています。ただし、口径が数mにもなるような大きな望遠鏡では、けずる作業が大変なので、最初からまん中のへこんだガラス材を作って、けずる作業を簡単にしています2。
ここでは、小型望遠鏡用の反射鏡を作るプロセスをしょうかいします。
最初は「砂ズリ」と呼ばれる作業です。鏡になるガラス材と、ほぼ同じ大きさの別のガラス材=盤材(ばんざい)3 の間に、たいへんかたくて細かな砂状の研磨剤(けんまざい)4 と水を混ぜて入れ、こすり合わせて表面をけずります。このとき、ガラスと盤(ばん)との重なり具合やこする動作の距離(きょり)を調節すると、次第にガラス材がおう面に、盤(ばん)がとつ面に変形していきます。きれいなおう面になるように、ガラス、盤(ばん)、こする方向などを均等に回転させます。反射鏡の焦点距離(しょうてんきょり)はへこみ具合によって決まるので、ときどき調べながら目的のへこみ具合になるまでけずっていきます。
※1 温度の変化によるのび縮みの少ない特殊(とくしゅ)なガラスです。温度が変化することで表面のカーブが変わってしまうと、精度が保てないためです。
※2 ガラスをとかしておう面鏡型の型に流し込んだり、とけた状態のガラスを容器ごと回転させて成形します。また、小さな鏡をつないで作る方法もあります。
※3 小さな盤材(ばんざい)ではガラスですが、直径が50cmを超えるものの多くは金属製です。
※4 研磨剤(けんまざい)はまるで砂のように見えますので、研磨砂(けんますな あるいは けんまさ)と呼ぶことがあります。ガラスをけずってへこませる作業を砂ズリというのはこのためです。