光のなぞ 光や色のたのしい知識がいっぱい!

色と光

深海生物ってどんな色?

海の水深200m以上の部分を深海といいます。じつは世界の海洋の98%は深海で、平均水深は約3800mです。深海はほとんど光のないまっ暗な世界。はたして深海にすむ生き物は、どのような色をしているのでしょう?彼らにとって色とはどんな意味があるのでしょうか?

ミドリフサアンコウ

ミドリフサアンコウ

深海魚は意外にカラフル?

太陽の光が届く海洋の浅い場所では光合成ができるので植物プランクトンがたくさん生まれ、これをエサにする動物プランクトンや小動物、それらを食べる小型の魚、より大きな魚…というような、「食物連鎖」による豊かな生態系があります。しかし、水深200m以上の深さでは太陽光はほとんど届かないため、植物プランクトンの繁殖はわずかでエサが少なく、水温も低くなります。このような暮らしにくい環境でも、実はたくさんの深海魚(深海生物)がいます。

彼らの多くは、黒っぽい灰色や褐色など、暗い色をしています。でも中には海洋の浅い場所にいる魚のような銀色や、透明、青、さらには真っ赤な色をした魚や生物がたくさんいるのです。例えば、深海魚としておなじみのチョウチンアンコウや深海ザメの仲間(オロシザメ=下に写真あり)など、トリカジカなど、海底近くにすむ深海魚の多くは黒色や暗褐色です。でも最近、“おいしい深海魚”として知られるアオメエソ(メヒカリ=下に写真あり)などは銀色、有名なデメニギスやクラゲの仲間などは体の一部または大部分が透明です。2016年に発見され新種であることが分かったヨコヅナイワシは一部が青色ですし、ミドリフサアンコウ、アカカサゴ(下に写真あり) 、アカムツ(下に写真あり)などは鮮やかなオレンジや赤色をしています。深海生物は、私たちが想像するよりずっとカラフルです。

オロシザメ

オロシザメ

トリカジカ

トリカジカ

アオメエソ

アオメエソ(メヒカリ)

アカカサゴ

アカカサゴ

アカムツ

アカムツ

深海では赤も黒く見える?

色は、ものに光が当たっている時にしか見えません。ですから太陽光の届かない深海では、色を見ることができないのです。また200mより浅い海でも、深くなるにつれて光の届く量が減っていきます。じつは、このとき光にふくまれるすべての色が同じ割合で減っていくわけではないのです。

もとの光に含まれるさまざまな色のうち、赤が反射すると赤く見える(もとの光に赤が含まれていなければ、赤く見えない)

もとの光に含まれるさまざまな色のうち、赤が反射すると赤く見える
(もとの光に赤が含まれていなければ、赤く見えない)

水はほとんど透明であっても、ごくわずかに赤い光を吸収します。光から赤い成分が減ると残りは青っぽくなります。光が通り抜ける距離が長くなると、その影響は大きくなります。コップの水が透明でもプールの水が青く見えるのはこのためです。数10m、数100mという水深になるとこの影響はさらに大きくなります。海の深いところに届くのは、青い色の光だけになっていくのです。

海の深いところには青い光しか届かない

海の深いところには青い光しか届かない

ものに青い光しか当たっていないとき、色の区別はできなくなります。さらに、光の量がごくわずかになれば、赤も青も同じように暗く見えます。つまり深海では、赤い深海魚は他の色の魚と同様にほぼ真っ黒で見えにくいのです。見えにくければ敵に見つかりにくいので、生き残る確率が高まります。暗色とくらべると目立ちやすく感じる派手な赤も、深海では生き残る妨げにならないのです。

深海魚には生物の進化の初期から深海にいたもの(一次深海魚)のほか、浅い海域で誕生し深海に移り住んだもの(二次深海魚)もいます。移り住んだ深海魚は浅い海域で発達させた体の色を変える必要がないために、変わらずにそのまま残っている可能性があると考えられています。

さまざまな色の魚をふつうの光で見たとき さまざまな色の魚を青い光で見たとき

さまざまな色の魚をふつうの光で見たとき(上)と青い光で見たとき(下)

発光する生き物もいる

有名なチョウチンアンコウのほか、深海魚には光を出すものもいます。彼らは体内に発光バクテリアを共生させたり、エサから発光物質を集めたりすることで、自分で光を出しています。目的は、敵を驚かせて逃げる、エサをおびき寄せる、異性の目をひく…などですが、なかには隠れるために発光しているものもいます。サンゴイワシなどはお腹の部分にある発光器(光を出す器官)を光らせることで敵の目をあざむきます。見上げたときに海面からの光にまぎれて自分の影ができないので、下から見つかりにくくなるのです。

エサなどのエネルギー源が乏しい深海では、水温も低いので活発に動いて敵から逃げたり、逆にエサをつかまえたりすることは簡単ではありません。すばやく動くより、エネルギーを節約して見つからずに密かに活動するしくみが発達したといえるでしょう。

一方で深海魚の中には、暗くても良く見える眼や、エサにかみついたら離れないような牙を発達させたものも少なくありません。深海でも地上と同じように「食うか食われるか」という生存競争が、いや地上よりむしろ厳しい競争があります。深海生物はその競争を生き残るために、さまざまなからだのしくみや習性を発達させてきました。深海魚の奇妙で美しい色は、深海の生活で身を守るしくみのひとつ…ということなのです。

製作協力:猿渡敏郎(東京大学大気海洋研究所/成蹊学園サステナビリティ教育研究センター)

サンゴイワシ:腹の部分に点のような複数の発光器が並んでいる

サンゴイワシ:腹の部分に点のような複数の発光器が並んでいる

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