ときどき夜空にあらわれニュースにもなる彗星。世界では紀元前からの目撃記録もあり、世界中の人々の関心を集めてきた天体です。
長く尾を引いた姿から日本では「ほうき星」とも呼ばれる彗星とはどのような星で、どこからやってくるのでしょうか?
光の“正体”は?
ときどき夜空にあらわれニュースにもなる彗星。世界では紀元前からの目撃記録もあり、世界中の人々の関心を集めてきた天体です。
長く尾を引いた姿から日本では「ほうき星」とも呼ばれる彗星とはどのような星で、どこからやってくるのでしょうか?
彗星はこれまでに4000個近くが発見され、未発見を含めると数千万を超える数があるとされています。
いずれも太陽の周囲をまわる、太陽系の一員です。ただしまわる道のり(軌道)を1周する時間はさまざまで、数年という短いものから数万数百万年という長いもの、さらに一度太陽に近づいてそのまま戻ってこないと考えられる彗星もあります。
大きさは火星や地球などの惑星にくらべてはるかに小さく、多くの彗星の本体は直径が数kmほど。
小さいために太陽から離れているときはたいへん暗く、大望遠鏡でも見えないものがほとんどです。
彗星の軌道
彗星の本体は「核」と呼ばれ、水(氷)や岩石などの塊です。以前は「汚れた雪玉」のようだとされていましたが、最近の研究では岩石の比率がかなり多く、「凍った泥団子」のようであるとされています。
彗星の核は、遠くにあるときは凍りついていますが、太陽に近づくと活発に活動しはじめます。太陽からの熱などで核を作る物質が蒸発し、ガス状になって噴き出します。これが核のまわりに「コマ」と呼ばれるガスやダストからなる大気をつくります。光を反射する面積が増えるため、急に明るさを増します。
なお、彗星の周囲がぼやけて見えるのは、コマがあるためです。
コマが大きく見えた2007年のホームズ彗星
さらに太陽に近づくと、彗星の核から蒸発したガスなどが、太陽からの電磁波やプラズマ流で押されて、太陽と反対方向に尾ができます。太陽と地球の距離よりも長くなることもあり、観測史上で最も長かった百武彗星(1996年)の尾は太陽-地球間距離の約3.8倍もありました。巨大な尾はたいへん美しく見えますが、彗星本体は太陽に近づくたびに蒸発し、しだいに小さくなってやがて消滅すると考えられています。
彗星の尾のしくみ
彗星にまつわる最大のなぞのひとつが、そのふるさとです。彗星にはさまざまなタイプがあり、それぞれがどこから来たかは完全にはわかっていません。でも、多くの彗星が誕生する場所は、太陽系のはての2つの空間であると考えられています。
ひとつは、「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれている空間です。海王星の軌道(軌道の半径は太陽-地球間距離の約30倍)より外側から、太陽-地球間距離の約50倍離れた場所までに、ドーナツ型に広がっています。
冥王星を含むいくつかの準惑星や小惑星、細かなチリやガスの氷が漂っていると考えられていて、公転周期(軌道を一周する時間)が比較的短い(200年以内)彗星はここから来ると考えられています。
もうひとつは、さらに遠くにある「オールトの雲」です。こちらはまだ理論上の存在ですが、太陽から、太陽-地球間距離の1万倍~10万倍も遠くの宇宙空間に、太陽系を球のように取りまいていると考えられています。やはりチリやガスの氷などがあり、公転周期が200年より長い彗星のふるさとと見られています。
これらの空間でガスの氷やチリが衝突合体して大きくなり、太陽や惑星の引力の影響で変化して太陽をまわる軌道を描くようになったものが、彗星なのです。
エッジワース・カイパーベルト
20世紀の終わりごろから、日本の「すいせい」「さきがけ」をはじめ、さまざまな彗星探査機が打ち上げられました。中でも2005年のアメリカの「ディープ・インパクト」探査機は彗星の核に物体を衝突させ、彗星のしくみについてのさまざまな情報を得ています。
このような彗星の研究は、太陽系の研究にとても重要です。太陽系が誕生した約46億年前、宇宙空間にある物質が集まって太陽や惑星をつくりました。このとき惑星などに集まらなかった…つまり宇宙空間に取り残された物質が今もただよっているのが、彗星のふるさとであるエッジワース・カイパーベルトやオールトの雲です。彗星は、太陽系ができた時の大きな手がかりをたずさえて、太陽系のさいはてからやってくる使者なのです。
光の“正体”は?
レンズと反射鏡
色と光