日本は世界ナンバーワンのおんせん(温泉)大国です。27,000以上*ともいわれる温泉はそれぞれ特ちょうがあって、お湯の色もさまざま。なぜ温泉はできるのか?色もいろいろちがうのか?そのひみつをしくみから考えます。
*…かんきょう(環境)省自然環境局などの調べによる。
色と光
日本は世界ナンバーワンのおんせん(温泉)大国です。27,000以上*ともいわれる温泉はそれぞれ特ちょうがあって、お湯の色もさまざま。なぜ温泉はできるのか?色もいろいろちがうのか?そのひみつをしくみから考えます。
*…かんきょう(環境)省自然環境局などの調べによる。
日本に温泉が多いのは、日本が火山国であることに理由があります。火山に関係がない温泉*もありますが、ほとんどの温泉は火山の近くにあります。火山をつくっている地下のエネルギーが地下水を温めると、それが温泉になるためで、日本の温泉の大部分は火山活動の熱がもとになっている「火山性温泉」です。
日本列島には、ふん火をしたり、ふん火しなくても活動している「活火山(=かつかざんと読みます)」が111個あり、その活火山の大部分には地下数km〜10数kmのところに「マグマだまり」があります。マグマとは高い温度とまわりからおされる力(=あつりょく(圧力))で岩石がとけたもので、その温度は約800〜1200℃。マグマの一部は、高温で高い圧力がかかった熱水**や火山性ガスとなり、岩ばんのわれ目やだんそう(=岩ばんがくずれている部分)などを伝わって地上にむかいます。
一方、地下にはさまざまなところに水があります。だんそうや岩ばんのわれ目のほか、雨水などがしみ込んでたまりやすい「帯水そう」という地そうもあります。これらの地下水がマグマだまりからの熱で温められたり、熱水や高温のガスから熱が伝わって温かくなったものが温泉水で、それが地表にわき出したり(=自ふん泉といいます)、地面からあな(穴)をほる、ボーリングというぎじゅつ(技術)をつかってくみ上げたのが温泉です。
火山と温泉
*…火山と直接関係ないと思われる「ひ(非)火山性温泉」もあります。岩ばんの運動などによる圧力で熱が生まれると考えられています。
・つるまき(鶴巻)温泉/神奈川県、ありま(有馬)温泉/兵庫県、ゆや(湯屋)温泉/岐阜県など
**…地下にある水は周囲の岩ばんからとても大きな力を受けているため、数100℃という高温になってもふっとうしません。高温になると岩石の成分は水にとけるようになり、また、圧力が高いと気体(ガス)も水の中にとけこみます。この「マグマのいろいろな成分がとけこんだ、圧力と温度がとても高い水」を熱水とよび、多くのマグマだまりでは上のほうに集まっています。熱水に金が多く入っているところでは、長時間かけて金が岩ばんの割れ目にたまって金のこうせき(鉱石)になる場合もあります。
温泉水ができるとちゅうで、熱水や火山性ガスに直接ふれた場合、その成分が温泉水にとけこみます。さらに、岩ばんのわれ目などを長い時間かけて通っていくとちゅうでも、通り道にある地下の岩石の成分がとけ込みます。
熱水や火山性ガスの成分は火山ごとにちがいがあります。また、地下にある岩石も場所によって種類がちがいます。このため、それぞれの温泉で、温泉水にふくまれる成分がちがい、その温泉の特ちょうになっています。
温泉水にとけ込んでいる成分には、体によいとされるものが多くあります。温泉に入る(=つかる)のは体を温めるだけでなく、とけ込んでいる体によい成分をとりこむためでもあるのです。
温泉の特ちょうをあらわすためによく使われている言葉が「せんしつ(泉質)」で、いくつもの種類があります。そのうち、よく知られているいくつかをしょうかいします。
単じゅん(純)温泉 | 日本でもっともよくある温泉です。さまざまな成分が少しずつ入っている場合が多く、しげきは少ない温泉です。成分の種類が多いため、こうのう(効能=ききめ)もはば広くなっています。 |
えんかぶつせん(塩化物泉) →食塩泉ともいう |
食塩などナトリウム塩とよばれる成分が多く入っています。日本では単純温泉の次に多く、ほ(保)温効果が高いとされます。 |
りゅうさんえんせん (りゅう酸塩泉) |
りゅう酸のもとになる成分が多くとけこんでいます。血の中に酸素をとりこみやすくするはたらきがあり、キズを治すのに良いとされています。また、保温効果も高い泉質です。 |
いおう泉・りゅうかすいそ(りゅうか化水素)泉 | 火薬やさっ虫ざいにも使われる「いおう」がまざった成分がとけこんでいます。しげきが強いですがさっ(殺)きん作用があるので、皮ふの病気によいといわれています。 |
がんてつせん(含鉄泉)、 てっせん(鉄泉) |
「鉄」の成分がとけこんでいます。しげきが強く、つかれをとるのによいといわれています。 |
たんさんすいそえんせん(炭酸水素塩泉) →じゅうそうせん(重そう泉)ともいう |
アルカリ性の温泉で、血管をひろげる効果があり、皮ふをきれいにするといわれています。 |
温泉水は、とけこんでいる成分のちがいだけでなく、そのわり合いや組み合わせ、光のあたりぐあいなどでも色が変わります。そのため「〇〇がとけていると〇色…」のようにひとくちでは言えません。ただし、いくつかいえることはあります。たとえば、日本に多い単純温泉にはいろいろな成分がとけこんでいますが、その量は少しずつなので無色とう明(=色がなくすきとおっている)が多いといえます。また色はなくても、コロイドとよんでいる水とちがう成分の細かいつぶが浮かんでいる温泉は、にごって「にゅうはく(乳白)色」に見えます。
色がついている場合は、同じ成分でもちがう色になる場合があります。いおうという火山に多い成分は、いおうだけだと淡い黄色に見えますが、温泉水では、ほかの成分と結びつくなどして緑などいくつかの色を見せます。鉄が多くとけている場合は赤~茶色、ガラスや半どう(導)体の材料にもなるケイ素が多くとけていると青色、植物がもとになってできるフミン酸という成分が多いと茶色になるなどといわれています。よく知られているいくつかをしょうかいします。
中性から酸性の「いおう泉」に多い色です。わき出してすぐはとう明でも、酸素にふれると細かいつぶができてにごる場合もあります。
・きりしまあらゆ(霧島新湯)温泉/鹿児島県、しらほね(白骨)温泉/長野県、にゅうとう(乳頭)温泉/秋田県、鶴の湯温泉/秋田県、など
乳頭温泉/秋田県
地そうの中にある昔の植物が分解されてできたフミン酸やフルボ酸という成分がとけこんでいるためといわれています。また、温泉水の中にとけこんだりゅう化水素が鉄と結びついてりゅう化鉄というものになり、黒く見える場合もあります。
・西はるべつ(春別)温泉/北海道)、しおばらもとゆ(塩原元湯)温泉/栃木県、かまた(蒲田)温泉/東京都、王子温泉/大分県、ふきあげ(吹上)温泉/鹿児島県、など
王子温泉/大分県 写真提供:大分市観光協会
鉄分の多い湯がわき出したあとに空気にふれて鉄と酸素がむすびつき、赤や茶になることがあります。中性、アルカリ性の温泉で多いとされ、こんぶやひじきの中にふくまれ、うがい薬などにも使われるヨウ素という成分が入っているとうす茶色になる場合があります。
・とかちだけ(十勝岳)温泉/北海道、有馬温泉/兵庫県、げいまい(芸舞)温泉/大分県、など
十勝岳温泉/北海道 写真提供:かみふらの十勝岳観光協会
すんだ青や水色はシリカの多い温泉で、にごりがある青色はイオウ化合物をふくむ温泉で見られます。わき出してからしばらくすると青くなるものは水中に小さなつぶができるためともいわれています。
・べっぷ(別府)いちのいで温泉/大分県、ゆふいん(由布院)温泉/大分県、たけのゆ(岳の湯)温泉/熊本県、など
岳の湯温泉/熊本県
いおう泉、アルミニウムや鉄分が入っている温泉などで見られますが、緑色になるしくみはくわしくわかっていません。
・熊の湯温泉/長野県、くにみ(国見)温泉/岩手県、月岡温泉/新潟県、かわたび(川渡)温泉/宮城県、など
熊の湯温泉/長野県
わき出してからの時間や時間帯、光の状態などで色が変化して見える温泉です。無色→緑→白くにごるや、白くにごる→はいいろ→青、緑→とう明できれいな深い青など、さまざまな変化のパターンがあります。
・なるこ(鳴子)温泉/宮城県、ごしき(五色)温泉/長野県、ゆのみね(湯の峰)温泉/和歌山県、黒川温泉/熊本県、など
湯の峰温泉/和歌山県
温泉にはさまざまな色がありますが、その色はいつも同じとは限りません。上にも書いてあるように、地下からくみ上げてすぐのときと、おふろにためてしばらくすると色が変わったり、季節、朝や夜といった時間帯、晴れとくもりなど気しょうじょうけんで色がちがう温泉もあります。温泉に行ったらその時にどんな色だったか、くわしく記録しておくのも楽しいですね。
光の“正体”は?
レンズと反射鏡
色と光