光のなぞ 光や色のたのしいちしきがいっぱい!

光の“正体”は?

ホタルはなぜ光る?

ホタルは、1000年以上も昔から、光っては消え、消えては光りながら飛びかい、私たちを楽しませてきた、なじみの深い生き物です。ホタルはなぜ光るのか、光るしくみはどうなっているのか、また、ホタル以外の光る生き物についてもしょうかいします。

ゲンジボタル発光

発光するゲンジホタル 写真提供(ていきょう):岡崎市

ゲンジボタル乱舞

「鳥川(とっかわ)ホタルの里」を飛びかうゲンジホタル(長時間ろ光による撮影(さつえい))写真提供:岡崎市

ホタルは光り方がちがう?

夏になるときれいな小川の近くでおしりを光らせるホタル。ホタルはおしりを発光させることによって、仲間に自分のいる場所を知らせるなどのコミュニケーションをとっています。

すべてのホタルが発光するわけではなく、発光するホタルはゲンジホタルとヘイケボタルなどです。一番大きく明るい光を出すのがゲンジホタルです。ホタルは卵(たまご)から、幼虫(ようちゅう)、成虫と一生を通して光ります。

夜、光りながら飛んでいるゲンジホタルはほとんどがオスです。メスは草や木の葉にじっととまって、小さな光を出しています。光り方には、プロポーズのための光、しげきがあった時の光、てきをおどろかせるための光の3種類あるといわれています。

ホタルが近くにいて光らないときは、軽く息をふきかけてみてください、息がしげきになって光ります。

ゲンジホタル

明るい光を出すゲンジホタル

撮影(さつえい)協力:板橋区ホタル生態環境(せいたいかんきょう)館


ゲンジホタル


ヘイケボタル

光り方のちがいをムービーで見てみよう

撮影協力:板橋区ホタル生態環境館

ホタルはどうして光る?

ホタルのおしりに近い部分には、黄色に"発光器"というものがあります。その中には"ルシフェリン"という発光する物質(ぶっしつ)と、発光するのを助ける"ルシフェラーゼ"という「こう素(そ)※」があります。この2つの物質とホタルが体の中にとりこんだ酸素(さんそ)が反応をおこして光を出します。

この"ルシフェラーゼ"はホタルによってちがいがあります。そのため、よく知られている黄緑色の光以外にも黄色やオレンジ色などに光るホタルもいます。

また、ホタルの光は熱くありません。"ルシフェラーゼ"は生き物が体内で作り出すタンパク質で、光を出す反応を効率(こうりつ)よく進めるため、電球のように光にならなかったエネルギーで熱くなることはないのです。

※そのもの自体は変化せずに、あるものをほかのものへと変化させるはたらきをもつタンパク質

ゲンジホタルオスメスのちがい

ゲンジホタルの成虫

ほかにも発光する生き物がいる

生き物の中で光るのは、ホタルだけではありません。ホタルと同じように発光する生き物には、クラゲやホタルイカ、ウミホタル、ヒカリゴケなどがあります。

オワンクラゲ

オワンクラゲは、成長すると「かさ」の直径が20cmくらいになり、おわんをひっくり返したように見えるため、こうよばれています。春から夏にかけて、日本各地で見られます。

オワンクラゲの「かさ」のふちでは、GFP(緑色蛍光(りょくしょくけいこう)タンパク質)とイクオリンとよばれる青白く光る発光タンパク質がいっしょになっています。興奮(こうふん)するとイクオリンと細胞の中にあるカルシウムが反応していっしゅん青色に発光します。そして、その光によって、GFPが緑色に発光するのです。

海洋生物学者の下村脩(しもむらおさむ、1928-2018)博士は、イクオリンとGFPを発見し分けて取りだす(=分離(ぶんり)する)ことに成功し、オワンクラゲが緑色に光るしくみを明らかにしました。
さらに、GFPは、体や細ぼうの中で活動しているほかのタンパク質にくっついて光を出す特ちょうをいかして、がん細ぼうがふえたかどうかなどを調べるために使われるなど医学の世界で広く活やくするようになりました。これが評価(ひょうか)されて、2008年、下村さんはノーベル化学賞を受賞し、オワンクラゲは一気に有名になりました。今では日本各地の水族館でも見ることができます。

オワンクラゲ

オワンクラゲ

写真提供:加茂(かも)水族館

ホタルイカ

ホタルイカは日本海側の海に住んで(=生息して)います。特に有名なのが富山湾(わん)で、毎年3月から6月にかけて卵をうむ(=産卵(さんらん)する)ためにやってきます。

ホタルイカの発光は青白く、暗い海中でてきにおそわれた時に相手をおどろかせたり、目くらましをする行動のひとつといわれています。ホタルと同じで発光物質のルシフェリンに発光こう素のルシフェラーゼが作用することによって光を出します。しかし、ホタルとは発光物質や発光こう素の構造(こうぞう)はいくぶんちがっているようです。

ホタルイカ

ホタルイカ

写真提供:魚津(うおづ)水族館

ウミホタル

ウミホタルは北海道と東北地方以外の太平洋側の海で見ることができます。

夜の海岸に行くと波打ちぎわに青白い光が見えることがあります。これがウミホタルで、大きさは小さく3mmくらいしかありません。
ウミホタルはしげきを受けると青色に発光します。発光は、ルシフェリンとルシフェラーゼによって行われます。しかし、これらは名前は同じでもホタルとはちがう物質なので"ウミホタルルシフェリン"と"ウミホタルルシフェラーゼ"と呼ばれています。

ウミホタル

ウミホタル

写真提供:白浜フラワーパーク

ヒカリゴケ

ヒカリゴケは中部地方から北海道にかけて、高地のほら穴、たおれた木のかげなどに生えています。環境(かんきょう)の変化に弱く現在では数がとても少なくなっていますので、見つけてもとらないようにしましょう。

ヒカリゴケは自分で発光しているわけではありません。ヒカリゴケの細ぼうが球の形をしたレンズのように光をとりこみ、その光が細ぼうの奥に集まっている緑色の葉緑体で反しゃすることで、エメラルドグリーンに光っているように見えるのです。

ヒカリゴケ

ヒカリゴケ

写真提供:はままつフラワーパーク

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