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ムービーのさまざまな技術

フィルムサイズのいろいろ

フィルム式ムービーに使われるフィルムの規格を決めたのは、エジソンだったと言われています。それは、幅(はば)35mmのフィルムの両側にパーフォレーションという穴をもつタイプので、「35mmシネ」と呼ばれるサイズです。1コマのサイズは24mm×18mmで、撮影(さつえい)や映写ではフィルムを上下方向に動かしました。
(ちなみに、後にオスカー・バルナックという人がこの映画フィルムをふつうの写真に応用し、2コマ分の36mm×24mmを1コマにした「ライカサイズ(別名35mmフルサイズ)」のカメラを開発しました)

この35mmシネサイズは、現在でもほとんどの映画で採用されている規格です。しかし、カメラがたいへん大きく重くなり、また使用するフィルムもかさばるため、約半分の16mmシネというより、小さなサイズのフィルムが開発されています。

さらに家庭用としては、この半分の幅(はば)の8mmシネも作られています。デジタルビデオカメラが普及(ふきゅう)する以前、一般家庭で楽しむムービーといえばこの8mmでした。

一方、映画により迫力と臨場感を持たせるため、フィルム幅(はば)65~70mmの大きなサイズのフィルムを使うカメラや映写機も開発されています。また、35mmのカメラを3台同時に使って横長の映像を撮影(さつえい)するシネラマ方式や、撮影(さつえい)時に左右方向を特しゅなレンズで圧縮し、映写するときに逆に広げて写すウルトラ・パナビジョンという撮影(さつえい)技術など、左右方向に大きく広がったスクリーンも開発されています。
これらは、映像の迫力(はくりょく)という点ではたいへん優れていましたが、撮影(さつえい)にも大きなコストがかかる上、上映するにも特しゅな施設(しせつ)が必要になります。このため、大型エンターテイメント作品などの大きな収益が見こめる映画で使われています。なお、近年、非常に鮮明(せんめい)かつ迫力(はくりょく)のある特しゅ映像として、記録映画の分野でも使われ出した技術に、70mmのフィルムをヨコに使うアイマックスシアターがあり、専用のシアターで上映されています。

各種サイズのフィルム

各種サイズのフィルム

ムービーならではの映像表現

撮影(さつえい)技術の発達によって、これまでは見ることのできなかったような新しい映像表現も可能になってきました。そのひとつが、撮影(さつえい)速度と映写速度を変える、「高速度撮影(さつえい)」や「微速度撮影(さつえい)」です(図)。

高速度撮影(さつえい)は文字通り、撮影(さつえい)のスピードを上げるもので、いわゆるスローモーションの技術です。ふつう、1秒間に24コマのところを、48コマ撮影(さつえい)すれば2倍の、96コマなら4倍の高速度撮影(さつえい)ということになります。これを標準の毎秒24コマで映写すれば、それぞれ時間が2倍、4倍に引きのばされたことになり、対象の動きがゆっくりとなって、動きの細かいようすをはっきりと見ることができます。

さらに、撮影(さつえい)速度が数倍までの高速度撮影(さつえい)に対して、毎秒数千~数万という膨大(ぼうだい)な拡大率を持つ超高速度撮影(さつえい)の技術もあります。これは撮影(さつえい)装置も通常のカメラとはまったく異なるもので、瞬間(しゅんかん)的な出来事を調べるために開発された研究用の技術と言えます。

一方、微速度撮影(びそくどさつえい)は撮影(さつえい)のスピードを下げる技術です。高速度撮影(さつえい)とは逆に、長時間の変化を時間を圧縮して見ることができるため、動きのおそい対象のようすを観察するために用いられます。私たちになじみが深いのは、記録映画などで花が開くようすや、太陽や星々が動いていくところを撮影(さつえい)したものでしょう。ふだんは感じることのできない、たいへんゆっくりした変化を知ることができるため、これも研究用の技術としても多く用いられています。

高速度撮影(さつえい)と微速度撮影(さつえい)

高速度撮影(さつえい)と微速度撮影(さつえい)

高速度撮影(さつえい)でとらえた水てきの落下のようす

高速度撮影(さつえい)でとらえた水てきの落下のようす

新しい時代のムービー技術

現代のムービーでは、さまざまな新しい試みが行われています。特に、コンピュータがムービーの世界に大きな影響(えいきょう)をもたらしています。
その代表的なひとつが、CG(コンピュータ・グラフィックス)を使ったアニメーションでしょう。SF映画の世界では、CGによるキャラクターを実写フィルムに合成する技術が、当たり前のように使われています。また、実写を一切使わないフルCG映画も、年々、質を上げてきています。

また、平面的な映像から立体感を感じられる「3Dムービー」も、今後、さらに発達する技術です。この3Dムービーにはいくつかの方法があり、それぞれ特ちょうがあります。方式によって撮影(さつえい)方法や観賞するときの設備、装置にもちがいがあり、中にはたいへん手間のかかる方法もあります。しかし、ふつうの平面的な画像では得られない迫力(はくりょく)や表現が可能になるため、テーマパークなどのアトラクション映像として使われている他、新しい映画のスタイルとしても注目されています。

※3Dムービーの種類

3Dムービーでは、左右の目に別々の画像を送って立体感を発生させます。このため、ひとつのスクリーンに2種類の画像を映し出す方法や、その画像を左右の目に分ける方法でさまざまな技術があります。

もっともシンプルなものは、赤と青の色メガネを使う方式です。左右それぞれの目から見た映像を、それぞれ赤と青の1色の映像にしてスクリーンに映し、見る側は左右に赤と青の色のついたメガネをかけるというものです。この方式は比較(ひかく)的簡単ですが、カラーでの表現ができないモノトーンの映像になってしまうという欠点があります。

近年、テーマパークのアトラクション映像に多く使われているのが、偏光(へんこう)メガネを用いる方式です。これは、光の振動(しんどう)方向が1方向になった光(このような現象を偏光(へんこう)といいます)を使います。左右2種類の映像を、それぞれタテとヨコに偏光(へんこう)した光で投影(とうえい)し、観客側は左右それぞれの映像の光だけを通すメガネをかけます。カラーが表現できる点が優れています。

この他、左右の映像を1コマずつ交互(こうご)に投影(とうえい)し、そのタイミングに合わせて開閉する液しょうシャッターの付いたメガネで観賞する技術もあります。
また、「視差バリア」と呼ばれる垂直なスリットをディスプレイに組み込み、左右の目に別々の画像を送り込む技術や、回転するスクリーンに異なる映像を映す技術など、さまざまな3D画像技術がすでに生まれています。これらの3D映像技術を利用した新しいタイプのムービーが、これから続々と登場するでしょう。

CG合成

CG合成

赤と青の色メガネと偏光(へんこう)メガネ

赤と青の色メガネと偏光(へんこう)メガネ

偏光(へんこう)メガネで見る映像

偏光(へんこう)メガネで見る映像

偏光(へんこう)メガネを使う3D映画は右用と左用の2台の映写機を使います。

偏光(へんこう)メガネを使う3D映画は右用と左用の2台の映写機を使います。

液しょうシャッター方式

液しょうシャッター方式

視差バリア方式

視差バリア方式

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