光のなぞ 光や色のたのしい知識がいっぱい!

光の“正体”は?

テレビはどうしてうつるの?

4K放送、さらに8K放送もはじまり、テレビはしんかを続けています。でも、そもそもテレビでどうして映像を見ることができるのでしょうか?

テレビ映像は赤、青、緑のてんめつでうつっている

テレビの画面を虫メガネで拡大して見てみると、赤、緑、青の光が1組になって並んでいます。また、色のちがうところを見てみると赤、緑、青の色の明るさが少しずつ変わって見えます。明るさを変えることでほとんどすべての色を作り出すことができる、この「光の三原色」をワンセットにした光の点の集まりをたくさん並べることで、テレビは画像をうつし出しています。

さらにテレビでは動きを見せるため、うつした画面をすばやく入れかえています。人間の目は短い時間の変化をくわしくとらえられないので、ちょうどぱらぱらマンガのように動いて見えるのです。

画面を入れかえるとき、テレビは3色ワンセットの点の光りかたを、上の行から1行ずつ順番に書きかえています。この1行1行は走査線(そうさせん)と呼ばれ、日本のハイビジョン放送では1080行ある走査線を、約1/60秒という高速で画面の下まで上から順番に、1行おきに書きかえます。1行おきですから、1/60秒で書きかわるのは1、3、5、7…といった奇数の行だけです。次の1/60秒で残りの2、4、6、8…の偶数の行を書きかえることで、人間の目には1つの画像になって見えます。つまり、1/60秒+1/60秒の合計1/30秒ごとに、つぎつぎに画像を書きかえることで動く映像にして見せているのです※1

※1 1行とばしで書きかえるこの方式を「インターレース方式」といい、いちどに送る情報の量がなるべく少なくてすむように考えられました。これに対して画面全体をいっぺんに書きかえる方式もあり、こちらは「プログレッシブ方式」と呼ばれています。

テレビは赤、緑、青の組み合わせで色を作っています。

テレビは赤、緑、青の組み合わせで色を作っています。

RGBの関係(RGBそれぞれ255の強さの場合)

RGBの関係(RGBそれぞれ255の強さの場合)

R=180;G=200;B=80の色、R=100;G=20;B=120の色

R=180;G=200;B=80の色

R=100;G=20;B=120の色

赤(R)、緑(G)、青(B)の光の三原色の明るさを変えてまぜるといろいろな色が自由に作れます。実際には、RGBそれぞれ256段階(0から255まで)の強さの光をまぜ合わせて作ります。

走査線の書き換えイメージ

走査線の書き換えイメージ
テレビでは1行の走査線を左から右に描き、右のはじまでいくと1行あけた下の段にうつります。これを画面の右下までくりかえして1つの画像にしています(A→B、E→F、I→J)。次に画像を書きかえるときは2行め左上のCにもどり、同じように1行おきに書きかえていきます(C→D、G→H)。

テレビの映像は放送局からどうやってとどくの?

テレビ放送局では映像を、走査線として描くことができるように分解した電気信号に変えて送り出します。
信号を送る方法にはいくつかあります。地上波(ちじょうは)放送と呼ばれる方法は信号を電波に変えて、放送局の電波塔からちょくせつ家庭のアンテナへ、または電波塔からの電波を受け取って家庭へと送る中継局(ちゅうけいきょく)という施設から家庭のアンテナへと送信します。
衛星放送と呼ばれる方法では、信号をいったん約36,000km上空にある、放送専用の人工衛星(放送衛星)に向けて送信し、放送衛星から電波がちょくせつ家庭のアンテナに送信されます(BS放送)。このほかに通信衛星と呼ばれる人工衛星を使って電波を送っているのがCS放送で、日本では2つの通信衛星がこのために使われています。
また、有線放送(ケーブルテレビ)はその名のとおり、放送局などからの信号を光ケーブルなど実際の線を使って家庭に送ります。

家庭では、アンテナやケーブルテレビ回線などから届いた信号を、テレビやコンピューターなどが走査線を書くための信号にもどし、これを映像にして画面にうつし出します。
なお、インターネット放送は番組を見たいと思う人がインターネットを通じて映像がある場所(サーバー)にアクセスし、映像データをコンピューターやスマホなどで受信することで番組を見ることができるしくみです。

電波塔や衛星から信号が送られ、それぞれの家でテレビ信号にもどして映像が映し出されます。

電波塔や衛星から信号が送られ、それぞれの家でテレビ信号にもどして映像が映し出されます。

ハイビジョンを超える4K・8Kが登場し、さらに画質は細かく、きれいに

テレビは、走査線の数が多ければ多いほど映像はより細かくきれいになります。テレビが白黒からカラーになった1960年代からずっとテレビの走査線は525本でしたが、1989年に映像をもっと細かくきれいにするために走査線を約2倍の1,125本※2に増やした「ハイビジョン方式」の放送が始まりました。
さらに、このころから技術の進歩によってより大画面のテレビが作られるようになります。画面が大きくなると、それまでのように走査線の本数が525本のままでは映像の荒さなどがめだちます。大きなスポーツイベントなどのハイビジョン放送などもきっかけになって、1995年ころからハイビジョンテレビを利用する家はどんどん多くなっていきました。

そして、21世紀になるとアナログ放送に代わるデジタル放送も開始されました(デジタルについては次で説明します)。デジタル技術によって、ハイビジョンよりさらに細かい画像が見られる4K・8K放送が可能になり、2018年から衛星放送やケーブルTVなどで始まっています。4Kではハイビジョンの約4倍、8Kでは16倍の細かさの映像をうつすことができます※3

※2 1,125本のうちテレビ画面の表示には1,080本の走査線が使われます。
※3 画像の細かさは以前は走査線の数であらわされていましたが、デジタル放送以降は画面に表示される点の数で示されます。テレビの画像をつくる三原色ワンセットの1個を「画素」といい(「ドット」「ピクセル」とも呼ばれます)、アナログ時代のテレビでは左右が約640、上下が約480の約30万画素、ハイビジョン(フルハイビジョン=2K)では左右が1920、上下が1080の約200万画素になり、横と縦の比率も4:3から16:9に変わりました。さらに、4Kは左右3840、上下2160で約800万画素、8Kは左右7680、上下4320で約3,300万画素というぼう大な数の画素で映像をうつしだしています。

これまでのテレビと4K・8Kの画面の比較

これまでのテレビと4K・8Kの画面の比較
画面の細かさを同じにすると、4Kテレビは約4倍、8Kテレビは約16倍もの面積になります。画面の大きさが同じであれば、そのぶん画像が細かく精密になります。
「K」は1000を表す単位で、画面の左右(水平)にならぶ点の数が4Kでは約4,000個(3,840個)、8Kでは約8,000個(7,680個)であることからこう呼ばれます。

4K・8Kの高画質放送も可能にしたデジタル技術

1995年ころから大きな広がりを見せたハイビジョンテレビでしたが、実は大きな問題がありました。
そのころ、ハイビジョン放送はアナログ方式で、画面が細かくなるぶん、それまでの約5倍もの情報を電波にのせて送る必要がありました。しかも、ちょうどこの時期にはけいたい電話をはじめ、電波を使った通信が急に増えたため、使える電波が足りなくなってしまっていました。
そこで21世紀になって登場したのがデジタル放送です。

アナログとデジタルの違いのわかりやすい例として時計があります。アナログ時計の秒針はずっと小刻みに動き続けていますが、デジタル時計は1秒の次は2秒と数字で表示され、その間はありません。

つまりアナログでは、信号の変化のようすをまるごと送るのですが、デジタルでは決まった時間ごとの変化を数値にして送ります。その途中の変化ははぶいて送られるので、送る情報を減らすことができます。
たとえば画像で0の明るさが次に10に変化するとき、アナログでは0から10までの間の1、2、3…といった情報も送る必要がありますが、デジタルでは0の次に10という数を送ることで明るさの変化を伝えることができます。
さらにデジタル方式では同じ数字をまとめて送る圧縮※4という方法が簡単に使えるので、さらに信号の量が減って電波を節約できます。
また、波のようなかたちで信号を送るより、数値で信号を送るので、誤った情報が送られにくいという特ちょうもあります。
このような理由から2011年11月に、テレビ放送はすべてデジタル方式に切り替えられました。節約できた電波は爆発的に広がった携帯電話やスマートフォンなど通信サービスのために利用できるようになりました。ハイビジョンの4倍の情報をもつ4Kや16倍の情報をもつ8Kの放送も、デジタル技術がなければ実現できなかったことは間違いありません。

※4 たとえば「777733333399999」という信号は、「7×4、3×6、9×5」とまとめることができます。デジタルではこの他にもさまざまな圧縮の技術が使われています。

アナログは、連続した値を示すのに対して、デジタルの場合は、値の境目をはっきり示します。

アナログは、連続した値を示すのに対して、デジタルの場合は、値の境目をはっきり示します。

アナログとデジタル

アナログとデジタル
アナログは、電気信号を電波の強弱で伝えるのに対して、デジタルは電気信号を数値に変換して伝えます。

テレビ画面そのものも進化

テレビでは、画面そのものの進化も進んでいます。カラーテレビが登場してからはずっと、画面は重くて大きく、大きな電力が必要な「ブラウン管」が使われてきました。しかし、21世紀になるとわずかな電流で明るさの変化を表示できる液晶の技術が発達して薄型の液晶テレビが登場し、夢だと思われていた壁掛けのテレビも実現されました。
最近では、4K・8Kのテレビ時代に合わせるかのように、さらに新しい技術をつかったテレビがいくつも登場しています。たとえばLEDテレビは、液晶に必要なバックライト(画面のうしろ側から光を照らすしくみ)をLEDにかえることで、ふつうの液晶テレビより薄型で、明るくて明暗のくっきりした映像がうつせます。また有機ELテレビは、光の三原色にあたる赤、緑、青の3色の光を自分で出す有機ELという材料を画面に使っています。バックライトが必要なくなるので省電力になり、さらに黒い部分は、光で照らされることもないために、よりしっかりと黒くうつる鮮やかな映像を実現しています。また、光の三原色の極小LEDを並べたテレビなども開発されています。
4K・8K放送では、映画やスポーツ中継などでこれまでにない迫力の映像が楽しめるうえ、鮮明に見えるので目がつかれにくくなるともいわれています。画面だけでなく音響の質も高く、新しい時代のテレビとして、今後世界中で、見られるようになっていくことでしょう。

ほかの光のなぞ

日本の色いろいろ