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光の“正体”は?

火球ってなんだろう?

火球(かきゅう)の後で隕石(いんせき)が見つかった!

2020年7月2日の午前2時半ごろ、関東地方の空に満月よりも明るい「火球」が出現しました。また11月29日の未明にも、とても明るい火球が西日本でもくげきされました。特に7月2日の火球出現の直後には、千葉県習志野市内で隕石がみつかっています。これまでに国内で見つかった隕石は53個ですが、火球といっしょに観測(かんそく)されたのははじめてのことです。火球とはどのような現象(げんしょう)で、その観測から何がわかるのでしょうか。

明るく光る火球

明るく光る火球

流星と火球と隕石

宇宙空間には、たいへん小さなチリゴミや小石のような物体が無数にただよっています。これが地球に向かってきて毎秒10kmをこえるもうスピードで大気に飛び込み、空気などの分子としょうとつして光を出す現象が流れ星(流星)1です。そして火球は、流星の中でも特に明るいものをさします。
厳密(げんみつ)なきまりはありませんが、地上で観測された明るさが-3~-4等級より明るくなるものを火球と呼んでいます2。ふつうの流星では飛び込んでくるチリの大きさは約1mmから数cmほどですが、それより大きなものだと火球になります。
ときには大気中で燃えつきずに地上にとどく場合があり、これが隕石です。

宇宙空間のチリは、彗星(すいせい)や小惑星(しょうわくせい)がもたらしたものと考えられています。宇宙では、地球などの惑星ばかりでなく、彗星や小惑星も太陽のまわりを公転していて、とちゅうでチリを出しているのです。

※1 流星はしばしば「燃(も)えている」と言われますが、厳密には燃える(=酸素(さんそ)と結びつく)のではありません。大気の分子と衝突することで運動エネルギーが熱エネルギーに変わり、この熱でガス化した流星本体や大気の分子が光を出します。
※2 火球は、国際天文学連合(IAU)では「100kmはなれて見た場合にかんさんして-4等星よりも明るいもの」、国際流星機構(IMO)では「真上に見えたとかんさんして-3等星よりも明るいもの」とされています。

流星や火球の経路

流星や火球の経路(けいろ)

火球は音がする?

明るい流星、特に火球では、発生したときに音が聞こえたという報告があります。空気とのしょうとつで発生した衝撃波(しょうげきは)3が、音に変化して伝わるのではないかと言われています。この場合、観測している場所と流星は数10km以上はなれているので、音が発生してから聞こえるまで、数分間以上かかります。この音が観測された例もありますが、発光したときの音が火球と同時に聞こえることはありません。また、火球によってでんじ波(電波)が発生して光の速さで伝わり、そのえいきょうによって音のように感じられるという説もあります。まだくわしくはわかっていませんが、火球からは目に見える光以外にも何かがとどいているかもしれません。

※3 物体が音速より速い速度で空気中を移動すると、ぶつかる空気の圧力が異常(いじょう)に高くなり、衝撃波というエネルギーの波が発生します。衝撃波はまわりに広がるうちに普通の音に変化します。

原始太陽系からのおくりもの

光や音以外にも、火球はさまざまな情報を私たちに伝えてくれます。そのひとつは、大気の上層(じょうそう)がどんな様子か…ということです。流星が通ったあとに淡い光を出すけむりのようなものが数分間にわたって残ることがあります。これを「流星痕(りゅうせいこん)」といいますが、明るい火球ではときどき見られる現象です。流星痕が変化していくようすから、高度数10kmの大気の動きを考えることができるのです。

火球が隕石になって落ちてきた場合、隕石はとても重要な研究材料になります。なぜなら隕石のもととなった宇宙空間のチリや小石は、彗星や小惑星が残したものだからです。彗星や小惑星は、約46億年前に太陽系が誕生(たんじょう)したとき、惑星にならずに取り残された物質です。そのかけらである隕石は、宇宙空間に残されている、約46億年前を考える重要な手がかりです。流星や火球、そして隕石は、原始太陽系からの時を超えたおくりものなのです。

流星痕とその変化 画像提供:愛知県立一宮高校地学部

流星痕とその変化
画像提供:愛知県立一宮高校地学部

人工流星雨ってなに?

天然のチリや小石ではなく、人工的な物質が宇宙から飛び込んできても流星や火球になります。古い人工衛星が地球に落下するときに見られますが、その他に、衛星軌道(えいせいきどう)上から流星のもとになる物質をまいて、人工的にたくさんの流星を作る試みも検討(けんとう)されています。いつの日か、雨のようにふり注ぐ人工流星が見られるかもしれません。

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