光のなぞ 光や色のたのしい知識がいっぱい!

光の“正体”は?

かつやくする“見えない光”

私たちの目に見えている光は、じつは光のなかまのごく一部分です。
身のまわりには、目には見えない光がたくさんあり、いろいろなところで役立っています。
それはどのようなもので、どんなかつやくをしているのでしょうか。

「見えない光」とは?

光は波の性質をもっています。光の波は水面におきる波のような波形の線で表わすことができ、波の山と山(あるいは谷と谷)のかんかくを波長といいます。そして光は、波長が長いか短いかによってちがった性質になります。

たとえば私たちの目に見える光の波長は、おおよそ380~780ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリメートル!)ほどというかなりかぎられたはんいで、私たちはそのかぎられているなかでも、波長が短い光は青に、長ければ赤に、中間は緑というように光の「色」を感じとっています。

そのほかの波長の光は目には見えませんが、私たちは見える光、見えない光もあわせて、光のなかまを「電磁波(でんじは)」と呼んでいます。電磁波には、青い光よりはるかに短い波長をもつもの、赤い光よりはるかに長い波長をもつものがあり、これらはもちろん私たちには見えません。つまり電磁波のほとんどは、目に見えない光なのです。

たとえば、波長が380ナノメートルより短い光には、紫外(しがい)線、X(エックス)線、ガンマ線などがあります。逆に波長が780ナノメートルより長い光には、赤外線、電波(マイクロ波、短波、中波、長波など、波長によって分けられています)などがあります。どこかで聞いたことがある名前も多いと思いますが、これらはすべて光のなかまでちがいは波長だけ。宇宙はもちろん身のまわりにもたくさん飛びかっています。

※ 光には波の性質だけでなく、つぶ(粒)の性質もあります。

波長とそのちがい

波長とそのちがい

電磁波のひろがり

電磁波のひろがり

見えない光のとくちょう

電磁波は目に見える見えないのちがいはあってもすべて同じ波です。ですが、波長がちがうと性質にも大きなちがいがあります。

たとえば、波長の短い紫外線やX線などの光は大きなエネルギーを持っていて、ものをつくっている小さな粒(分子や原子)にえいきょうをあたえます。紫外線(UVともよばれています)で人間が日焼けをおこすのは、このはたらきによって体をつくっているさいぼうがダメージを受けるためです。

波長の短い光があたったものがエネルギーを受け取り、目に見える光を出すこともあります。紫外線をあてると光る「けい光物質(ぶっしつ)」にUVライトをあてると人間にも見える光を出します。このしくみはゆうびん配達に使われています。ゆうびん物に人間には見えないインクであて先がわかるバーコードを印刷して、機械が波長の短い光(=紫外線)を当ててバーコードを光らせて読み取り、自動で仕分けをします。また、私たちが使っているお札にも見えないインクでもようが印刷されています。波長の短い光(=紫外線)を当てることで、本物かどうかを調べるのです。

逆に波長の長い赤外線や電波は、通り道にさえぎるものがあってもえいきょうを受けにくく、遠くまでつき抜けます。けいたい電話をはじめとした通信に電波が使われるのはこのためです。

赤外線には熱をはこぶはたらきもあります。赤外線ストーブは赤く光っていますが、同時に赤より波長の長い光(赤外線)をたくさん出してまわりをあたためます。また、熱されたフライパンは少しはなれたところからでも熱さを感じますが、これは熱したフライパンから波長の長い見えない光、つまり赤外線が出ているためです。

郵便にUVライトをあててみるとバーコードが出現

郵便にUVライトをあててみるとバーコードが見える

発熱体のサーモグラフ写真

発熱体のサーモグラフ写真

かつやくする見えない光

目に見えない光は、ふだんは感じることはありませんが、私たちの生活から最先端(さいせんたん)の研究まで、さまざまなところで大かつやくしています。

赤外線や紫外線は身近なところでおおいに利用されています。テレビなどのリモコンは波長の長い光の赤外線を使っています。赤外線は電波にくらべてとどく向きをちょうせつしやすく、また遠くに飛びすぎないうえ、人間には見えないのでよけいな光としてじゃまに感じないことから、近いきょりで信号を伝えるリモコンなどにはつごうがよいのです。

紫外線の大きなエネルギーを使って、ばいきんを殺すそうちもあります。ものや食品についたばいきんの細胞をこわして消どくするのです。また、ジュエリーなどを作るときに使う紫外線硬化樹脂(しがいせんこうかじゅし:UVこうかジェルなどともよばれます)は、短い波長の紫外線をあてるとかたまる化学物質で、ものをくっつけるせっちゃくざいです。

見えない光を最先端の研究に使う例として、遠くの宇宙からたくさんの銀河などをつき抜けて届く電波をかんそくする電波天文学があります。とくに赤外線を使ったかんそくでは、銀河系の中心にあるブラックホールのかんそくなどでせいかがあがっています。また、星がその一生の最後に出すエックス線をとらえるかんそくで、星の一生や宇宙のしくみにせまる研究が行われています。

※ このほかにも、赤外線リモコンにはねだんが安く作れることや、電池が長くもつなどのちょうしょがあります。

赤外線カメラで見たテレビリモコンの赤外線発光

赤外線カメラで見たテレビリモコンの赤外線発光

赤外線天文衛星(えいせい)AKARIのデータで作られた新しい遠赤外線全天マップ © ISAS/JAXA

赤外線天文衛星(えいせい)AKARIのデータで作られた新しい遠赤外線全天マップ
銀河系の宇宙のまん中がこのマップの中心になっていて、中央で水平にのびているのが「天の川」です。
© ISAS/JAXA

注目があつまるテラヘルツ波

波長の長い電波は、テレビなどの放送や長きょりの通信、けいたい電話などでもさまざまに使われています。この電波のなかまで最近とくに注目されているのがテラヘルツ波※1です。

テラヘルツ波は波長が0.03〜3mmほどの赤外線と電波の中間の電磁波です。より波長が長い電波ほどのつき抜けるはたらきがないことなどから、これまであまり利用されてきませんでした。しかしふつうの物質をつき抜け、金属などかぎられた物質でははね返る性質を利用して、さまざまな応用が考えられるようになってきました。

X線とはちがって、被ばく※2をおこさずに体をとうか(透過)できるため、ゆうえんち(=アミューズメントしせつ)やイベントなど人が多い場所で人の流れをさえぎらないセキュリティチェックのじつげん、また、体の中のある特定の物質を調べて体内のようす※3を知ることなどが期待されています。

さらに、未来の通信方式「6G(シックスジー)」の情報のやりとりに使うことも考えられています。ふつうの光よりも多くの情報を送ることができるため、いまよりはるかに速く、はるかに多い情報の通信ができるのではと注目されています。

※1 テラヘルツ波は目に見える光にも近いため「テラヘルツ光」と呼ぶばあいもあります。
※2 電磁波がさいぼうなどにえいきょうをあたえること
※3 小さながんのそしきを見つけることなどが期待されています。

ふつうの撮影

ふつうの撮影

テラヘルツ波を使った撮影

テラヘルツ波を使った撮影

実は…テラヘルツ波をあてると、金属やセラミックなどを隠していても見ることができます。

実は…テラヘルツ波をあてると、金属やセラミックなどを隠していても見ることができます。

テラヘルツ光による撮影動画(32秒) ※音声なし

見えない光を感じとる生物も

人間の目に見えない光を、見ることができる生物もいます。

たとえばヘビのなかまには、えものの体温を感じとってつかまえるために人間には見えない赤外線をとらえるものがいます。さらに、昆虫の多くは紫外線をとらえることができるようです。紫外線を写せる特しゅなカメラで写真をとると、人間にはちがいが感じられないチョウなどのはねが、オスとメスで大きくちがうもようであることがわかります。花には昆虫だけが見ることができるもようがあり、みつや花粉に昆虫をさそうしくみがあります。

また、植物が光合成をするために持っている葉緑素(ようりょくそ)は、紫外線があたると赤い光を出します。これは、植物が光を利用するときにあまった光のエネルギーをはきだすためです。

人間以外の生き物がどのような光をとらえ、まわりをどのように見ているかのけんきゅうは世界中で進められています。これからも大きな発見があるかもしれません。

※ 植物が光を使って水とにさんかたんそ(二酸化炭素)からさんそ(酸素)とようぶんを作り出すというはたらき

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