まぶしく輝くダイヤモンド、海のような深い色のエメラルド…宝石には誰もがとりこになる美しさがあります。宝石は普通の石とはどこが違うのでしょうか?その輝きのひみつはどこにあるのでしょうか。
色と光
まぶしく輝くダイヤモンド、海のような深い色のエメラルド…宝石には誰もがとりこになる美しさがあります。宝石は普通の石とはどこが違うのでしょうか?その輝きのひみつはどこにあるのでしょうか。
宝石は石(岩石)の仲間です。詳しくいうと、岩石を作っているさまざまな種類の粒=鉱物の一種なのです。でも宝石は科学で決まった言葉ではなく、鉱物の中で色や輝きが美しくまた貴重なものを、人間が選んで「宝石」と呼んでいます。このため人間が作った基準によって、種類も外見もさまざまな宝石があります。
宝石は、地下深くで誕生します。地下のところどころは、高い温度と圧力によって岩石がどろどろにとけて「マグマ」(マグマの集まった場所が「マグマだまり」)になっています。マグマは冷えて固まると岩石になりますが、固まるときに特定の成分がにじみ出て集まったものが、冷えて宝石になるのです。マグマの成分や温度と圧力の条件などによって、できる宝石の種類が違い、一般にダイヤモンドなどの特にかたい宝石は、地下の非常に深いところでできるとされています。
宝石が生まれる場所
宝石の中には、光を通さないけれど光沢などが美しいものもありますが、多くは「光をよく通し内部で反射して輝く」あるいは「色合いが独特で美しい」という特徴があります。硬くて丈夫で変化しにくく長時間にわたって価値が変わらないという特徴もありますが、やはり宝石の魅力はなんといっても輝きでしょう。
輝きのひみつのひとつは、「屈折率」です。水やガラスなど透明なもの(物質)に光が射し込むと、道すじが折れ曲がる屈折という現象が起きます。このときに、光を屈折させる強さを示したのが屈折率です。光が物質に対して斜めにさし込んだとき、空気と水など2つの物質の屈折率の差が大きいほど、より大きく曲がるのです。例えば水の屈折率は約1.3、ガラスは1.4~2.1ですが、ダイヤモンドは約2.4。天然の物質の中では圧倒的に高い屈折率を持っています。つまりダイヤモンドに周囲から光がさし込むと、他の物質より大きく曲がる…ということです。
屈折率が高い物質(左)と低い物質(右)の内部での反射のようす
また屈折率が高いと、物質の内部で反射が起きやすくなります。夕日や遠くの景色が水面で反射して私たちに見えるように、光は浅い角度で物質に射し込むと反射します。屈折率が高い物質は、低い物質にくらべ大きな角度で差し込んだ光も反射するため、宝石の内部に射し込んだ光の多くが、屈折や反射をくり返してはね返り、眼にとどくのです。
もうひとつのひみつが光の「分散」です。光が屈折する角度は色ごとに差があります。青い光は大きく、赤い光は小さな角度で曲がります。そのため光が色の成分に分かれて見えるのが分散という現象です。それぞれの色の光が屈折する角度の差(分散の大きさ)は物質によって異なりますが、宝石の多くはこの分散が大きいため、反射して目に入る光が虹色に見えて色鮮やかな輝きになります。
宝石そのものの色は、宝石の分子構造(分子の結びつきかた)の違いや、含まれている成分のちがいなどによって生まれます。どの成分が含まれると何色…と厳密には言えませんが、酸化鉄やマンガンが含まれると赤、クロムやバナジウムは緑、鉄は青や紫などになる場合が多いとされています(同じ物質でも宝石の種類によって別の色になる場合があります)。
分散
アクセサリーなどに使われている宝石は、いずれも多面体の美しい形をしています。でも、地中からとれる宝石の原石(加工前の石のこと)の形は、あまり整っていません。美しい宝石の形は自然にできたのではなく、人類が長い時間をかけて宝石の性質を研究して、屈折や反射、分散などの効果がうまく重なり合い、より美しく見えるような形を精密に計算した結果なのです。その代表がダイヤモンドのブリリアントカットと呼ばれる58面体です。そして、美しく見せるには面の角度を正確にけずったり磨き上げる技術が重要です。光学レンズの研磨などと同じように、宝石の研磨は光を操る高度技術なのです。
トパーズの原石
水晶
ブリリアントカット
宝石のもうひとつの特徴は、粒が大きいということです。宝石として価値を持つものは、岩石をつくる鉱物としては大きな粒です。逆にいえば、ごく小さな粒は宝石としての価値はなくても、どこにでもある岩石の中に含まれているかもしれないのです。
身近にある岩石や砂浜の砂粒をルーペで観察してみましょう。さまざまな色や形の鉱物の粒が見えます。普通の岩石や砂には宝石と呼べるほど大きな粒はありませんが、宝石と同じ成分をもつ粒が見つかることもあります。
宝石も、そして鉱物も岩石も、ぜんぶ大地の一部で地球の贈りものです。もし探して宝石が見つからなくても、岩石を観察して地球の46億年の活動を想像してみるのも楽しいですね。
砂粒の拡大写真
偏光顕微鏡で見た鉱物
光の“正体”は?
レンズと反射鏡
色と光