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色と光

有機ELのしくみと特徴

ディスプレイで活躍する有機EL技術

いま、「有機EL」が注目されています。スマートフォンやカメラのディスプレイなど、さまざまな分野で使われはじめている最新技術のひとつです。有機ELとはどのようなもので、これまでなじみの深かった「液晶」とはどう違うのでしょうか?

電気を使った有機物の発光現象

「有機EL」とは、英語の「オルガニック・エレクトロ・ルミネッセンス(organic electro-luminescence)」の略語です。オルガニックは有機物(有機化合物)で、生物の体を作っている炭素が入った化合物のことです。またルミネッセンスとは、ホタルやヒカリゴケなどの生物発光や夜光塗料のように、熱を出さずに光を出す現象です1。つまり有機ELは「電気を使った有機物の発光」という意味で、現象を指す言葉です。いま注目されているのは、この有機物の発光のしくみを利用した部品(素子)やディスプレイで、日本ではこれらをまとめて「有機EL」あるいは「有機ELデバイス」と呼んでいます2

※1 ルミネッセンスは「冷光」ともいい、炎の明かりや電球のように熱ではなく、化学反応や原子内部の変化によって光を出す現象です。ホタルなどのルミネッセンスについては、「光のなぞ ホタルはなぜ光る?」を見て下さい。
※2 世界では有機ELの素子などは、「OLED(Organic Light Emitting Diode)」と呼ばれています。「有機物を使ったLED素子」という意味です。

ヒカリゴケ 写真提供:はままつフラワーパーク

ヒカリゴケ
写真提供:はままつフラワーパーク

ゲンジホタル 撮影協力:板橋区ホタル生態環境館

ゲンジホタル
撮影協力:板橋区ホタル生態環境館

有機ELはLEDとよく似ている

ルミネッセンスを電気のエネルギーで起こすのがエレクトロ・ルミネッセンス、つまりELです。身のまわりでたくさん使われているLED(発光ダイオード)にも同じ技術が使われています。LEDは、性質がことなる2種類の半導体を使用して発光させます。電子をよぶんに持った状態(n型)の半導体、もうひとつは電子が足りない(正孔3が多い)状態(p型)の半導体です。電流が流れると半導体のさかい目部分で、電子(マイナス)とプラスを持つ「正孔」が合わさり、このときに光を出すしくみになっていします。

いっぽう有機ELは、電極や輸送層(電極や電子などを効率良く運ぶ物質の層)、発光層(電気で発光する有機物質の層)が、透明な基板(ガラスやプラスチックなどの薄い板)の上に積み重なっています。

プラスとマイナスの電極に電源をつなぐと、LEDの半導体のさかい目と同じように発光層で電子と正孔が合わさって光を出します。いくつかの物質を重ねた構造であることや、電気エネルギーで熱を出さずに光を出すという点で、LEDと有機ELはとてもよく似ています。

※3 「正孔」とは電子の抜け穴のようなもので、電子はマイナス電気を持つため、その抜け穴はプラス電気を持つものと考え、正孔と呼んでいます。

LEDのしくみ

LEDのしくみ

有機EL素子のしくみ

有機EL素子のしくみ

有機ELの特徴

有機ELがLEDと大きくことなるのは、発光する部分などの材料に有機物を使っている点です。有機ELの積み重なった層のうち、輸送層や発光層に有機化合物が使われます。有機化合物には無数の種類があり、物質の種類や組み合わさりかたなどで性質が大きく変化します。さらに、発光層に使う有機物質の種類やまぜる物質を変化させると、さまざまな色の光を出すことができます。光の三原色である赤・緑・青(RGB)に発光する有機EL素子をテレビの画面のように配置したのが有機ELディスプレイです。

有機ELディスプレイと液晶ディスプレイ

これまでテレビやパソコンの画面は液晶ディスプレイが主流でした。液晶ディスプレイは液晶という物質の分子が電流によって向きをかえることで、光を通したり通さなかったりする性質を利用したディスプレイです。液晶の後ろに光源(バックライト)を置いて照らすと、部分ごとに通す光の量が調節できます。液晶の前にRGBの各色のフィルタを置いて、それぞれの色の明るさを調節しフルカラーで画像を表示します。これに対して有機ELディスプレイは、RGBの光を出す有機EL素子をならべています。有機EL素子のそれぞれが自分で光り、バックライトの必要がないため、消費電力が少なく、しくみもシンプルにできます。

液晶では素子全部を暗くしてもバックライトの光が少し漏れてまっ暗にはできませんが、有機ELは素子をOFFにするとまっ暗になります。しっかりとした黒があらわせ「コントラストの良い」映像が作れます。

液晶ディスプレイでは、見ているのはバックライトの光にRGBのフィルタを重ねた色ということになります。そのため画像の発色はバックライトの色や明るさに大きな影響を受け、自然な色合いを出すには高価で性能の良いバックライトが必要です。一方、自分で発光する有機ELを使ったディスプレイは、バックライトがないためにその影響を受けず、RGBを適切にコントロールすることで自然な色合いを自由に出すことができます。

液晶ディスプレイと有機ELディスプレイ

液晶ディスプレイと有機ELディスプレイ

ここがすごい、有機EL

その他にも、有機ELには優れた点がたくさんあります。そのひとつはバックライトや色フィルタがいらないので液晶などにくらべてディスプレイをずっと薄くできること。基板や保護ガラスなどをのぞいた厚さは1万分の数mmほどです。基板などをプラスチックなどで作れば、曲げられるディスプレイも可能です。テレビやスマートフォンばかりでなく、駅やお店などで使うデジタルサイネージ(電子画像広告板)や、折りたためる携帯ディスプレイなどへの応用が期待されています。さらに電極を透明な物質(たとえば酸化インジウムスズ、酸化チタン、酸化亜鉛、炭素の単分子膜など)で作ればシースルーのディスプレイも可能で、まさに未来のディスプレイ。今後、有機ELは身のまわりにどんどん増えていくでしょう。

シースルーのディスプレイ(イメージ)

シースルーのディスプレイ(イメージ)

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